看護師逮捕の精神科病院 新たに7人の患者の家族から相談

入院患者に対する暴行の疑いで看護師が逮捕された東京 八王子市の精神科病院をめぐり、適切な医療やケアが行われていなかった可能性があるなどとして、新たに7人の患者の家族から弁護士のもとに相談が寄せられていることが分かりました。東京都は暴行を含め不適切な行為がなかったか調査を進めています。

東京 八王子市にある精神科の病院「滝山病院」は、看護師ら4人が患者に暴行を加えた疑いがあるとして警視庁の捜索を受け、このうち50代の看護師が入院患者の頭を殴ったとして暴行の疑いで逮捕されました。

これを受け、患者を支援している弁護士のもとには、現在入院中の患者や過去に入院していた患者、合わせて7人の家族から入院中に暴行を受けたのではないかとか、適切な医療やケアが行われていなかった可能性があるのではないかなどと新たな相談が寄せられているということです。
ほかにも、去年1月に入院中に亡くなった男性の家族がカルテの開示請求をしたところ、寝たきりの人にできることがある「じょくそう」が腰に10センチ四方まで広がり、皮膚などがえ死して重症化していたことが開示された写真から確認されたということです。

男性のカルテや写真、看護記録を検証した日本褥瘡学会元理事長の大浦武彦 北海道大学名誉教授は「体位変換などが完全ではなかったと言え、医療やケアが適切にされていないおそれがある」と指摘しています。

この病院をめぐっては、患者を支援している弁護士が、日常的な虐待や違法な身体拘束の可能性があるとして都に調査を要請しているほか、患者が死亡して退院する割合、「死亡退院率」が高いことも指摘されています。
東京都は24日に病院に2度目の立ち入り検査を行っていて、暴行を含め不適切な行為がなかったか調べています。

こうした指摘について滝山病院は「警察の捜査や都の調査にはこれまでどおり、全面的に協力いたします」とコメントしています。

父親が入院中に死亡の男性「実態を知りたい」

父親が滝山病院に入院し、およそ3年半後に77歳で亡くなったという男性は、適切な医療が行われていたのか実態を知りたいと話しています。

男性によりますと、都内で暮らしていた父親は自宅で介護を受けながら透析の治療を行っていましたが、認知症の症状が進行したことをきっかけに、通院していた地域の病院から滝山病院を勧められ、2018年6月に入院しました。

その後、コロナ禍でほとんど面会ができなかったということですが、定期的に病院に電話をかけて様子を確認する中で適切な治療を受けていると認識していたといいます。

ところが、去年1月に病院から父親が亡くなったと連絡を受けて駆けつけると、遺体は病棟の外にある建物に移されていて、葬儀業者から「遺体の損傷がひどいので整えるのに時間がかかる」と言われ、しばらく待たされたということです。

死因は多臓器不全で、当時は状況がよく分からなかったということですが、不審に思ってカルテの開示請求をしたところ、添付された写真で腰に10センチ四方の重度のじょくそうができていたことを初めて知ったということです。
男性は「床ずれがあったという説明は受けていたが、こんなにひどいじょくそうとは知らなかった。適切な医療が行われていなかったのではないかと思わざるを得ず、病院で何が起きていたのか実態を知りたい」と話しています。

元職員「じょくそうのケア 適切にされなかったことがある」

滝山病院で働いていた元職員は、じょくそうのケアが適切にされていなかったことがあると証言します。

数年前まで働いていた元職員は「じょくそうができている患者はいて、他の病院だったらじょくそうの傷に汚いものが当たらないよう透明の保護シートを貼ったりするが、滝山病院では、上司が『それは高いからそんなに使うんじゃない』と注意するなど、処置をする物自体が十分に備えられていなかった」と話しています。

また別の病院関係者は「滝山病院ではじょくそうが悪化する患者が多く、適切に体位変換がされなかったり、かなり急速に悪化したりして、相当ひどい状況の患者を見たことがある」と話していました。

専門家「医療やケアが適切でなかったおそれがある」

男性患者のカルテと写真、それに看護記録を検証した日本褥瘡学会元理事長の大浦武彦北海道大学名誉教授は「患部の写真からは、組織全体がえ死しているうえに、周辺が赤くなっていて感染を起こしていて、相当進行し重症であったと分かる。状態が悪化するまで気がつかないのは看護がおろそかになっていて、体位変換など体への圧の除去が完全ではなかったと言える」と分析しています。

そのうえで「カルテに記載がある処置は雑で、じょくそうの医療やケアが適切にされていないおそれがある」と指摘しています。