ウクライナ侵攻1年 国連安保理 閣僚級会合 ロシアを厳しく非難

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから1年となる24日、国連の安全保障理事会では閣僚級の会合が開かれ、欧米各国や日本などが軍事侵攻は国連憲章と国際法の違反だとして改めてロシアを厳しく非難しました。
これに対してロシアは、欧米からウクライナへの武器の供与が事態を悪化させていると主張し、非難の応酬となりました。

国連安保理の閣僚級会合は、15の理事国のうち8か国の外相が出席して、開かれました。

冒頭、グテーレス事務総長が「軍事侵攻は国連憲章と国際法のあからさまな違反だ」とロシアを非難したうえで「外交と説明責任が持続的な平和への道だ。流血を終わらせ和平に向けたあらゆる努力を促す必要がある」と述べ、事態の打開に向けた対話を呼びかけました。

このあと、欧米などから軍事侵攻を非難する意見が相次ぎ、このうちアメリカのブリンケン国務長官は「プーチン大統領は、ウクライナ軍を撃破できないとわかると、今度はウクライナの人たちの精神を破壊しようと躍起になった」と述べ、ロシア軍が電力施設などウクライナの人々の生活を支えるインフラを標的にしていると、非難しました。

また、日本の林外務大臣は、1年前、安保理会合が開催されている最中にロシアが軍事侵攻に踏み切ったことに触れ「国連全体への侮辱で、いかに国連を軽視しているかを示している。日本は可能なかぎり最も強いことばで非難する」と述べました。

これに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は、軍事作戦を改めて正当化したうえで「西側が戦場に武器を送り込み続けていることが事態を悪化させている。ウクライナの領土からロシアへの脅威を軍事的に排除する以外に選択肢はない」と主張し、双方の激しい非難の応酬となりました。

ウクライナとロシアが応酬 犠牲者への黙とうめぐり

ウクライナ情勢をめぐる国連安保理の閣僚級会合では、犠牲者への黙とうをめぐってウクライナとロシアが応酬する場面がありました。

会合に出席したウクライナのクレバ外相は、演説の最後に「この悲劇的な日に、ロシアによって奪われた命を悼み、犠牲者に黙とうをささげてほしい」と呼びかけ、出席者のほとんどが立ち上がって黙とうしました。

これに対して、ロシアのネベンジャ国連大使が発言を求め「ウクライナでのすべての犠牲者のために黙とうをささげるべきだ」と述べ、ロシア側の犠牲者も追悼すべきだと主張し、起立を促された議場の全員が再び立ち上がり、およそ1分間、黙とうをささげました。

林外相 “法の支配の原則 守り抜こう”

ニューヨークを訪れている林外務大臣は、日本時間の25日未明、国連安保理の閣僚級討論に出席しました。ロシアによるウクライナ侵攻は国連全体に対する侮蔑だと強く非難し、法の支配の原則を守り抜こうと呼びかけました。

国連では、ロシアによるウクライナ侵攻から1年になるのに合わせて、安保理の閣僚級討論が開かれ、林外務大臣も出席しました。

林大臣は、ロシアの侵攻が安保理の緊急会合の開催中に始まったことに触れ「安保理と国連全体への侮蔑でいかに国連を軽視しているかを示している。日本は可能なかぎり最も強いことばで非難する」と述べました。

そのうえで、世界の平和と安全の維持に最も重い責任を持つ常任理事国による明白な国際法違反だと指摘しました。

そして、ロシアに対し直ちに侵攻を停止して軍を撤退させ、ウクライナの独立と主権を尊重するよう求めました。

さらに、何の罪もない市民や重要なインフラ施設に対する攻撃を非難し、国際法にのっとって責任を追及する必要があると訴えました。

そして「世界のどこであっても力や威圧によって領土を変更しようとする試みは断固として拒否しなければならない」と述べ、法の支配の原則を守り抜こうと呼びかけました。

ウクライナめぐる中国の立場を示す文書 各国がけん制も

国連安保理の閣僚級会合では、中国が24日に発表したウクライナ情勢をめぐる中国の立場を示す文書について、各国がけん制し合う場面もありました。

会合で中国の戴兵 国連次席大使は「長期的な外交交渉が現在の危機を解決する唯一の正しい方法で、中国はロシアとウクライナがいかなる前提条件もなく交渉を再開するよう促している」としたうえで「われわれはウクライナ情勢に関して、常に客観的かつ公平な立場で建設的な役割を果たし続ける用意がある」と述べ、文書で表明した中国の立場を強調しました。

これについて、ロシアのネベンジャ国連大使は、欧米が訴える和平への取り組みは信用できないと主張したうえで「中国の和平に向けた提案のような真の努力は歓迎する」と述べ、評価する姿勢を示しました。

一方、アメリカのブリンケン国務長官は「われわれは、公正かつ持続的な和平を後押ししなければならない。安保理のメンバーは、暫定的な停戦や無条件の停戦の呼びかけにだまされるべきではない」と述べ、中国の動きをけん制しました。

林外相「丁寧に働きかけを行い 理解を得ていく」

林外務大臣は訪問先のニューヨークで国連での一連の日程を終えたあと記者団に対し「『グローバル・サウス』の国々を含めた国際社会が結束して声を上げていくことが重要だ。法の支配に基づく国際秩序の維持・強化の重要性を訴えつつ、丁寧に働きかけを行い、理解を得ていく」と述べました。

そして「こうした国々は地域紛争やテロ、食料・エネルギー危機などさまざまな問題に直面しており、先進国がしっかり支援の手を差し伸べて対応していくことが重要だ。G7=主要7か国の議長国として国際的な議論を積極的に主導していきたい」と述べました。