【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(23日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

イギリス国防省“バフムトでこの2日間激しい戦闘”

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア側は、東部のドネツク州などで支配地域を拡大しようと攻撃を強め、ウクライナ側の徹底抗戦が続いています。

戦況を分析するイギリス国防省は23日、ウクライナ側がドネツク州の拠点とするバフムトで、この2日間、激しい戦闘が行われていると指摘しました。
また、州都ドネツクの南西に位置するブフレダルでも、ロシア側からの激しい砲撃を受けているとした上で「ロシア側はさらに別の攻撃を準備している可能性がある」という見方を示しました。

アメリカ前国防長官“軍事支援の増強とスピードアップ必要”

ロシアによるウクライナ侵攻から1年を前に、アメリカのマーク・エスパー前国防長官がNHKのインタビューに答えました。

エスパー氏は、アメリカの陸軍士官学校を卒業し、国防総省などで重要ポストを歴任したあと、前のトランプ政権では国防長官を務めた、安全保障のエキスパートです。

このなかでエスパー氏は、ウクライナでのこの1年の戦いについて、「西側諸国は、ロシア軍を押し返し、ウクライナを支援するという点において、うまくやってきたと言える。ただ、私はもっとうまくやることができたと考えている。ウクライナに提供した主要な武器システムが届くのが遅すぎた」と振り返りました。

そう主張する理由について、エスパー氏は「いまロシアは制約なしに戦っている。彼らは戦車、戦闘用車両、弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機、すべてを利用しているのだ。ところがわれわれは、ウクライナに同等の兵器を渡しておらず、これは事実上、ロシアに『聖域』を与えているのと同じだ」と説明しました。

そして「ウクライナに少しずつ武器システムや兵器を提供するというやり方は、ウクライナが負けないようにするには十分であっても、ウクライナが勝利するには速さが足りない」と指摘し、軍事支援の増強とスピードアップが必要だと強調しました。

また、現在のウクライナの戦況については、「第1次世界大戦と酷似している。4、5か所のざんごうを掘って歩兵がにらみ合い、砲兵隊が対決するという戦場だ」と表現しました。

その上で「こうした手詰まりのような状況は、第2次世界大戦になって、装甲した戦闘部隊が航空機などの支援を受けて俊敏に動き、それに伝統的な火力を組み合わせることで克服された。ドンバス地域や、最終的にはクリミア半島にそうした部隊を投入できれば、ロシア軍の攻勢に対して反撃し、短期間のうちにロシア軍を押し返すことができるだろう」という見方を示しました。

そして「ウクライナはF16戦闘機を含む、西側の先端的な戦闘機を必要としている。アメリカがこうした戦闘機を提供すれば、ウクライナ軍は領空からロシア軍の航空機を追い出すとともに、装甲した部隊が進む先にいる標的をたたくこともできる」と述べて、事態打開には西側の戦闘機の供与が不可欠だと訴えました。

また、戦闘がことし中に終結する可能性を尋ねると、「戦争は何が起きるかわからない。意志と意志のぶつかり合いだ。プーチン氏は西側の政治的、物質的支援がどこかの時点で弱まると踏んで賭けに出ている。これは21世紀に入って初めての、ロシアや中国のような専制主義国家と、アメリカ、NATO、日本、韓国などの民主主義国家が対じした戦いなのだ。ことしの終わりまで、まだ10か月あまりある。いま重要なのは、西側諸国がウクライナへの支援を弱めないことであり、その決意をクレムリンに示すことだ。私たちは結束し続けなければならない」と訴えました。

一方、プーチン氏が核兵器を使用する可能性については「私はプーチン氏が核兵器を使用するとは思わない。彼は、国家としてのロシアが脅威にさらされれば、核兵器を使う可能性があると述べたが、ロシアの人々にも政府にも誰も脅威を与えていない。過剰な懸念を抱いたり、自制したりするべきではない」と述べました。

“アメリカが役割果たす必要”75% AP通信とシカゴ大の世論調査

ロシア軍によるウクライナ侵攻から1年となるのを前に、AP通信とシカゴ大学は共同で、先月下旬に全米の1000人余りを対象に世論調査を行いました。

それによりますと、アメリカがウクライナで続く軍事侵攻をめぐって「何らかの役割を果たすべきだ」と答えた人は75%にのぼり、去年5月に行われた同様の調査の81%からやや減少したものの、依然、4人に3人はアメリカが役割を果たす必要があると回答しています。

一方、ウクライナへの兵器の供与について「支持する」と答えた人は、去年5月の60%から48%に減少しました。

これに対し、「反対」と答えた人は去年5月は19%だったのに対し、先月は10ポイント増加して29%でした。

また、支持政党別に見ますと、民主党支持層の60%は兵器の供与を「支持する」と答えた一方で、共和党支持層で「支持する」と答えた人は39%にとどまりました。

このほか、ロシアに対する経済制裁をめぐっては「アメリカ経済に打撃はあっても経済制裁を優先すべきだ」と答えた人は36%で、軍事侵攻が始まった直後の去年3月の55%から19ポイント低下しました。

逆に「制裁の効果は減ってもアメリカ経済への打撃を限定的なものにするべきだ」と答えた人は59%と、去年3月の42%から17ポイント増加していて、ロシアへの経済制裁よりも自国経済を優先して考えるという人の割合が増えています。

フランシスコ教皇 “停戦と和平交渉の開始を”訴え

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから1年となるのを前にローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は22日一般謁見の中で「不条理で残酷な戦争の開始から24日で1年となる。悲しい記念日だ」と述べました。その上で「私たちはこの戦争を止めるためにできることをすべて行ったかとみずからに問おう」と述べ、一刻も早い停戦と和平交渉の開始を実現するよう呼びかけました。

米国務省“中国がロシアに軍事支援すれば米中関係に深刻な影響”

中国で外交を統括する王毅政治局委員は22日、訪問先のロシアでプーチン大統領やラブロフ外相と相次いで会談しました。

こうした中、アメリカ国務省でアジア政策を統括するクリテンブリンク国務次官補は22日、オンラインで記者会見し「われわれは、中国がウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに軍事支援を検討していることを深く懸念している」と述べました。

そして、中国がウクライナ情勢の政治的な解決に向けた文書を発表する考えを示していることを念頭に「中国は公の場では平和の支持者としてふるまおうとしている。しかし、陰ではロシアの残虐な軍事侵攻を支え続け、いまや軍事支援を行うかもしれないというところまで少しずつ近づいている」と述べ、強く批判しました。

その上で「われわれは、中国がロシアにウクライナで使用する殺傷能力がある兵器を供与したり、いわゆる“制裁逃れ”を支援したりすれば、米中関係に深刻な影響を及ぼすと明確に伝えた」と述べ、改めて警告しました。

「バイデン政権 中国の武器供与検討示す情報 公開を検討」米紙

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは22日、アメリカ政府当局者の話として「バイデン政権が、中国がロシアへの武器の供与について検討していることを示す分析情報の公開を検討している」と報じました。

ただ「バイデン政権は、機密解除に向けた作業を行っているものの、情報公開の時期などについて最終的な決定はしていない」と伝えています。

また、欧米の政府当局者の話として「中国は必ずしも最新の武器を供与するわけではなく、ロシア軍が戦場で消耗した弾薬や欧米の制裁で生産できなくなった電子機器などを補給する可能性がある」と伝えています。

プーチン大統領 核戦力の増強を宣言

ロシア大統領府は23日、「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて、プーチン大統領の動画のメッセージを公開しました。

プーチン大統領は「国家の安全と主権を守るカギは近代的で効率的な陸軍や海軍だ」と述べ、軍備の近代化や増強を進める考えを強調しました。

そのうえで「ことし、大陸間弾道ミサイル『サルマト』の実戦配備を行う。また極超音速ミサイル『キンジャール』の大量製造を継続していく。そして、海上発射型の極超音速ミサイル『ツィルコン』の大量供給を始める」と述べ、ロシア軍が保有する陸や海そして空軍の核戦力を増強していくと宣言しました。

プーチン大統領は21日に行った年次教書演説でも、ロシア軍の核戦力を誇示するとともにアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を表明したばかりで、ウクライナへの軍事支援を強めるアメリカなどをけん制するねらいとみられます。

国連総会 緊急特別会合始まる

193すべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合は22日午後、日本時間の23日午前5時すぎからニューヨークの国連本部で始まりました。

冒頭、国連のグテーレス事務総長はロシアによる軍事侵攻について「国連憲章と国際法の違反だ。人道的にも人権的にも重大な結果をもたらした」と改めて非難したうえで「戦争は解決策ではない。真の平和は国連憲章と国際法に基づくものでなければならない」と訴えました。

欧米各国や日本などが共同提案した決議案は「武力による威嚇や武力行使による領土の獲得は合法と認められない」としたうえで「ウクライナにおける永続的な平和が可能な限り早期に実現される必要がある」と強調しています。

そして、ロシア軍に対し、即時かつ無条件の撤退を改めて求め、ウクライナの重要インフラ、学校や病院など民間施設への攻撃停止などを求めています。

緊急特別会合は2日間にわたって開かれ、あわせておよそ80か国が演説した後、日本時間のあす午前、決議案の採決が行われる予定で、欧米各国としては賛成多数で採択し、ロシアに圧力をかけたい考えです。

ウクライナ外相「国連憲章や国際法の側に立って」

国連総会の緊急特別会合で22日、ウクライナのクレバ外相が演説し「世界は、非武装の市民の殺害や拷問、無差別の砲撃などロシアによる残虐行為を目の当たりにしてきた」と述べ、改めてロシアを強く非難しました。

その上で、過去の採決でロシアに配慮し棄権にまわった国々を念頭に「さまざまな事情でウクライナ側に立てない国があることは理解している。それならば、国連憲章や国際法の側に立ってほしい。国連憲章を支持していることを言葉と行動で証明する時だ」と述べ、今回の決議案に賛成するよう呼びかけると、議場からは拍手が沸き起こりました。

また、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使も「われわれは歴史的な決議について話し合うために集まった。平和のため、国連憲章を支持するための採決だ」と訴えました。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は、軍事作戦を改めて正当化した上で「西側は新しい武器を供給することでウクライナ危機をあおっている。決議案は平和的な解決に貢献しない。『ロシアが世界で孤立している』と主張できるよう設計されている」と述べ、決議案には反対すべきだと主張しました。

ゼレンスキー大統領 士官学校の卒業生に「勝利 必ず訪れる」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、22日に公開した動画で軍の士官学校の卒業生を激励し「ウクライナで今このとき、軍事教育を受けることは特別な使命だ。軍の将校になり、みずからの人生をもってウクライナに勝利をもたらそうとする者たちが尽きないことをうれしく思う」と述べました。

そのうえで「こうした者たちに勝利が必ず訪れると確信している」と述べ、ロシアの軍事侵攻に屈しない姿勢を改めて強調しました。

ロシア ラブロフ外相 来月のG20外相会合 出席へ

ロシア外務省の報道官は、22日、ラブロフ外相が来月1日と2日にインドの首都ニューデリーで開かれるG20=主要20か国の外相会合に出席する予定だと明らかにしました。

また、滞在中は議長国のインドのほか中国やブラジルなど友好国との外相会談を調整しているということです。

ウクライナ情勢をめぐり欧米各国とロシアとの対立が一段と深まる中、ロシアとしては友好国との関係を強化することが一層重要となっていて、一連の会合でのラブロフ外相の発言も注目されます。

ロシア軍とワグネル 確執深まる

ウクライナに戦闘員を送っているロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表をつとめるプリゴジン氏は21日、ロシア軍の指導部を非難する音声メッセージをSNSに投稿しました。

この中でプリゴジン氏は「ロシアの参謀総長と国防相が、ワグネルに弾薬を供給しないよう指示を出している」と述べたうえで「まさにワグネルを破壊しようとする試みだ。ワグネルがバフムトのために戦い、毎日、何百人もの戦闘員を失っている今、祖国への反逆にも等しい」と軍を非難しました。

これに対しロシア国防省は「弾薬の不足に関する発言は、まったく事実と異なる。こうした発言は敵を有利にするだけだ」とSNSで反論しました。

これに先立ちワグネルは、刑務所にいた受刑者を戦闘員として採用し、最前線に送り込んで存在感を誇示してきましたが、プリゴジン氏はこれを中止したと今月上旬、発表していて、ワグネルの影響力が低下しているという見方も出ています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は今月9日の分析で「ロシア軍の指導部はワグネルへの依存から脱却しようとしている」としていて、ロシア軍とワグネルの確執が深まっているものとみられます。

ゼレンスキー大統領 改めて徹底抗戦する構え

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、ドネツク州でウクライナ側が拠点とするバフムトやリマンなどが激しい攻撃にさらされているとしたうえで「強い圧力がかかっているにもかかわらずわれわれは前線を維持している」と述べ、徹底抗戦する構えを改めて示しました。

また南部のへルソン州でも連日、ロシア側の砲撃が続き、地元の知事によりますと22日には市民2人が死亡したということです。