米大統領 ウクライナ予告なし訪問 ゼレンスキー大統領と会談

アメリカのバイデン大統領はロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの首都キーウを事前の予告なく訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。
侵攻開始から1年となるのを前に、アメリカの支援は揺るぎないという姿勢を強調した形です。

アメリカのバイデン大統領は20日、去年2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、ウクライナの首都キーウを初めて訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。

バイデン大統領は会談で、「ウクライナの独立と主権、領土の一体性に対する揺るぎない支持を示すためにここに来た」と述べたうえで、砲弾などおよそ5億ドル、日本円にしておよそ670億円相当の追加の軍事支援を伝えたほか、新たな制裁を近く発表することも明らかにしました。

アメリカ政府は事前の発表で、バイデン大統領が20日にワシントン郊外の空軍基地を出発し、ポーランドを訪問するとしていましたが、実際は前日の19日に秘密裏に出発し、予告なくウクライナに入りました。

バイデン政権の高官によりますと、政権内のごく一部の関係者が数か月かけて周到に準備したうえで、側近や医療チームなど最小限の人員だけが随行したということです。

ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領は19日夜にポーランド南東部の街に大統領専用機で到着したあと、列車に乗り換えてウクライナに入り、およそ10時間かけて首都キーウまで移動しました。

そして、キーウにおよそ5時間滞在したあと、20日昼すぎに再び列車でキーウを出発し、20日夜、日本時間の21日の朝早く、国境に近いポーランドの街に戻ったということです。

バイデン大統領は、侵攻開始から今月24日で1年になるのを前に戦闘が続くウクライナを訪問することで結束を確認し、アメリカの支援は揺るぎないという姿勢を内外に強調した形です。

キーウ市民 バイデン大統領の訪問歓迎とさらなる支援に期待

アメリカのバイデン大統領が、ウクライナの首都キーウを事前の予告なしに訪問したことについて、キーウの市民からは、訪問を歓迎する声やアメリカからのさらなる支援を期待する声が聞かれました。

このうち、18歳の男性は「アメリカ大統領のウクライナに対する支持は私たちにとって重要です。戦争が始まった当初から、彼の訪問を待ち望んでいました。今後重要になるのが武器の供与で、今回の訪問はそれを確実にするものだと思います」と話していました。

50代の女性は、「大統領の訪問は、アメリカがウクライナを見捨てないということの証明です。私たちは戦闘機が供与されることを期待しています」と話していました。

また20代の女性は、「アメリカの支援は、ウクライナがこの戦争を勝ち抜くための保証です。この訪問は前線に大きな影響を与えるでしょう。きょうは記念すべき日です」と話していました。

EU 米大統領のウクライナ訪問を歓迎

EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は20日、ベルギーで行われたEU外相会議のあと記者会見し、アメリカのバイデン大統領がウクライナを訪れたことについて、「ヨーロッパとアメリカの結束と、ともにウクライナを支援し続けるという、われわれの決意を明確に示すものだ」と述べ歓迎しました。

またEUとしても、ウクライナへの軍事支援として、すみやかに弾薬を供与できるよう来月行われる国防相会議で、具体的な方策を話し合う考えを示しました。

さらに総額110億ユーロ、日本円で1兆5000億円を超える規模の輸出禁止措置などを盛り込んだロシアに対する追加制裁について、軍事侵攻から1年にあたる今月24日までに各国が合意するとの見通しを示しました。

松野官房長官「アメリカが連帯示す動き 敬意表す」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「侵略から1年を前に、アメリカがウクライナへの連帯を示す動きとして敬意を表す」と述べました。

また「今週24日にはG7=主要7か国首脳が引き続き結束して対応するべく、ゼレンスキー大統領も招いてテレビ会議を主催し、5月の広島サミットに議論をつなげていきたい。議論を行う中で、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くG7の強い意志を力強く世界に示していく」と述べました。

一方、岸田総理大臣のウクライナ訪問については「現地の安全対策など諸般の情勢を踏まえて検討を行っているが、現時点では何も決まっていない」と述べました。

バイデン大統領のキーウ訪問 時系列でみると…

アメリカ政府の事前の発表では、バイデン大統領はアメリカ東部時間の20日午後7時に首都ワシントン郊外の空軍基地を出発し、ポーランドに向かうとしていました。

しかし、実際には、バイデン大統領を乗せた大統領専用機「エアフォース・ワン」は、前日19日の午前4時15分に空軍基地を出発していたということです。

この訪問にはアメリカの有力紙など、ごく少数のメディアが同行を許されましたが、通信手段も回収されたということで、アメリカ政府は訪問が事前に漏れないよう細心の注意を図ったとみられます。

ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領は19日夜にポーランド南東部の街、ジェシュフに大統領専用機で到着したあと、車で、国境に近い街、プシェミシルまで移動し、ここで列車に乗り換えてウクライナに入りました。

列車での移動は、首都キーウに到着するまでおよそ10時間に及んだということです。

同行したメディアによりますと、バイデン大統領は現地時間20日午前8時にキーウに入り、午前8時半すぎにゼレンスキー大統領と妻のオレーナ氏が待つ宮殿に到着しました。
ゼレンスキー大統領との会談や共同発表を終えたバイデン大統領は午前11時19分に宮殿を離れ、キーウ中心部にある大聖堂を訪れました。

訪問にはゼレンスキー大統領も同行し、2人は大聖堂に続いて、戦死したウクライナ兵士を追悼する壁まで歩き、献花しました。
その後、午前11時40分に車で現地を出発し、正午ごろキーウにあるアメリカ大使館に到着しました。

バイデン大統領は46分間、大使館にいたあと再び車に乗り、午後1時すぎに列車でキーウを離れました。

バイデン大統領のキーウでの滞在時間はおよそ5時間でした。

そして、バイデン大統領を乗せた列車は、ポーランドに戻り、国境に近い街、プシェミシルに20日午後8時45分、日本時間の21日午前4時45分に到着したということです。

このあとバイデン大統領は21日、ポーランドの首都ワルシャワでドゥダ大統領らとの会談を行う予定です。