ロシアなどが利用か 中国の決済ネットワーク「CIPS」利用拡大

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、欧米や日本は経済制裁としてロシアの特定の金融機関を国際的な決済ネットワークから今も締め出しています。
こうした中、中国の決済ネットワークの利用が拡大していることから、専門家はロシアに加えて、欧米の制裁を警戒する国々が利用しているとみています。

欧米や日本は、ロシア経済に打撃を与えるため、およそ200の国と地域の金融機関が利用するSWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの特定の金融機関を締め出しています。

こうした中、中国が人民元の国際化に向けて拡大を目指す独自の決済ネットワーク「CIPS」の利用が増えています。

民間のシンクタンク「大和総研」によりますと、「CIPS」を使った一日当たりの平均の決済件数は先月、ウクライナ侵攻前の1.5倍の2万1000件に上りました。

また去年12月までの1年間で100を超える金融機関が、新たにネットワークに参加し、専門家はロシアに加えて欧米の制裁を警戒する国々が利用しているとみています。

「CIPS」に詳しい帝京大学の露口洋介教授は、「ロシアがこれまでヨーロッパに売っていた石油を中国に売るようになったこと、欧米や日本と体制の異なる国々が制裁への懸念を深めたことが『CIPS』の決済が増えた背景にある。ドルの優位は簡単に崩れるものではないが、今後、『CIPS』での取り引きが拡大していけば、SWIFTを使った金融制裁の効果が低下する可能性がある」と話しています。

一部の中央銀行 外貨準備として金を購入する動き広がる

ロシアへの経済制裁としては、国際的な決済ネットワークからの締め出しに加えて、ドル資産の凍結も行われています。

これに対し一部の中央銀行の間では、外貨準備として金を購入する動きが広がっています。

イギリスに本部がある調査機関の「ワールド・ゴールド・カウンシル」によりますと、各国の中央銀行の金の購入分から売却分を差し引いた純購入量は、去年1年間で1135トンと前の年から2.5倍と大幅に増え、過去最高の水準となりました。

また、金属の市場を分析している楽天証券経済研究所によりますと、国別の純購入量はトルコが147トン、中国が62トン、エジプトが44トン、カタールが35トン、イラク、ウズベキスタン、インドでそれぞれ33トンなどとなっています。

これについて専門家は、「金の購入を増やしているのは西側諸国と関係が悪化していたり、ロシアと一定の取り引きがあったりする国が目立っている。将来的なドル資産の凍結に備え、融通がきく金を増やすねらいがあるのではないか」としています。