ロシアのウクライナ侵攻まもなく1年 再び大規模ミサイル攻撃か

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して、今月24日で1年になります。
ウクライナでは、ロシア軍がこれに合わせて再び大規模なミサイル攻撃を仕掛けてくるという見方が政府高官から相次いで示されていて、警戒が高まっています。

ウクライナ国防省は18日、ロシア軍が原子力発電所のある西部フメリニツキー州で民間のインフラ施設などをミサイルで攻撃したと発表しました。アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍が原発の停止を狙った可能性もあるという見方を示しています。

これに対しロシア国防省は19日の発表で、州都フメリニツキーに近い軍の施設や弾薬庫を海上発射型の巡航ミサイルで攻撃したと主張しました。

こうした中、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は18日、地元メディアに対して「ロシアは今月21日から24日にかけて同じようなミサイル攻撃を仕掛けてくるだろう」と述べました。
これは、ロシアのプーチン大統領が今月21日に年次教書演説を行うほか、24日にはプーチン政権がウクライナへの軍事侵攻を開始して1年になることから、ロシア軍がこれに合わせて再び大規模なミサイル攻撃を仕掛けてくるという見方を示したものです。

ウクライナでは、国家安全保障・国防会議のダニロフ書記も16日、ロシアが今月23日から24日にかけて大規模な攻撃を準備していると述べていて、警戒が高まっています。

一方、プーチン大統領の年次教書演説についてロシア大統領府のペスコフ報道官は、19日放送の国営テレビの番組で「国民の生活は今や、この軍事作戦を中心にまわっている。当然、大統領はこのことに多大な注意を払うはずだ」と述べ、演説ではウクライナへの侵攻をめぐって多くの時間が割かれることを示唆しました。

市民 少なくとも7199人が死亡 3割近くは性別判別できず

国連人権高等弁務官事務所は、軍事侵攻が始まって今月12日までにウクライナでは少なくとも市民7199人が死亡したとしています。このうち438人は18歳未満の子どもだということです。
また、7199人のうち、3割近く(27%)にあたる1964人は遺体の損傷がひどく性別が判別できないとしています。

地域別では、いまも激しい戦闘が続く東部のドネツク州とルハンシク州であわせて4189人、首都キーウのほかハルキウやヘルソンなど20の州であわせて3010人の死亡が確認されているということです。

また、けがをした人は1万1756人に上るとしています。

激しい戦闘 正確な被害実態は把握できず

犠牲者のほとんどは砲撃やミサイル、それに空爆などの広い範囲に影響を及ぼす攻撃によるものだと指摘しています。

一方で国連人権高等弁務官事務所は、激しい戦闘が行われたり今も戦闘が継続していたりする地域、例えばドネツク州のマリウポリのほかルハンシク州のリシチャンシクやセベロドネツクなどでは正確な被害の実態は把握できていないとしていて、実際の死傷者は発表した人数を大きく上回るという見方を示しています。

各国からも同じような指摘が出ていて、アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長は去年11月、ウクライナでの市民の死傷者は4万人に上るとみられると指摘しています。

軍の死者数(推定)ウクライナ軍1万人~ ロシア軍4万人~

兵士や戦闘員の死傷者はウクライナ側、ロシア側ともに多数に上っています。

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は去年12月、政府の推定としてウクライナ軍の死者数は1万人から1万3000人で、けが人はさらに多いとしています。

一方、ロシア軍の死者数は、去年9月、ロシアのショイグ国防相が5937人と明らかにして以降、死者数全体に関する発表はなく、正確な実態は分かっていません。

ただ、ウクライナの戦況を分析しているイギリス国防省は今月17日、ロシア軍の兵士や民間軍事会社の戦闘員の死傷者数が合わせて17万5000人から20万人に上っているとみられるという見方を示しました。このうち死者数は4万人から6万人とみられるとしていて、去年9月以降、その数が大幅に増加していると指摘しています。