これについてJAXAは、ロケットの1段目にあるシステムが、異常を検知して補助ロケットを点火する信号を送らなかったため、打ち上げ中止となったと説明しています。
JAXAは初号機について、燃料を抜き取った上で早ければ18日午前中に発射地点から組み立て棟に戻す予定です。
「H3」初号機 組み立て棟に戻し打ち上げ中止の原因究明へ
17日に打ち上げが中止された日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機についてJAXA=宇宙航空研究開発機構は、早ければ18日午前中に機体を組み立て棟に戻す予定で、原因を究明した上で予備の打ち上げ期間にあたる来月10日までに再び打ち上げに臨みたいとしています。
新型ロケット「H3」の初号機は17日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定でしたが、ロケットは打ち上がりませんでした。


「H3」の開発責任者で、JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャは、17日の会見で原因究明などを進めるとともに「予備の打ち上げ期間中にできることを全力でやりたい」などと述べ、初号機の打ち上げを来月10日までに実施できるよう取り組む考えを示しました。
打ち上げの計画は
新型ロケット「H3」の初号機は、計画では17日午前10時37分ごろに鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる計画でした。

【前日の動き】
ロケットは16日夕方、組み立て棟から発射地点に移動。
夜10時すぎから燃料の「液体水素」と燃焼に必要な「液体酸素」を注入。
【打ち上げ当日】
17日は午前9時40分ごろと午前10時半ごろに、それぞれ機体の状況や天候などを踏まえ、打ち上げを行うかどうかを判断。打ち上げ実施が決まりました。
【打ち上げ直前】
発射8分前からは打ち上げに向けた秒読みが始まり、4分前からは作業が自動に切り替わります。
発射の2分50秒前に電源を地上設備からロケット内部に切り替えた後、発射の6秒ほど前からメインエンジンの「LE-9」が燃焼を開始。そして、発射の0.4秒前、補助ロケットの「SRB-3」が点火して燃焼を開始し、直後に、ロケットは発射台を離れる予定でした。
しかし実際には、メインエンジン「LE-9」は燃焼が始まったものの、補助ロケットは点火されず、打ち上げは中止されました。
ロケットは16日夕方、組み立て棟から発射地点に移動。
夜10時すぎから燃料の「液体水素」と燃焼に必要な「液体酸素」を注入。
【打ち上げ当日】
17日は午前9時40分ごろと午前10時半ごろに、それぞれ機体の状況や天候などを踏まえ、打ち上げを行うかどうかを判断。打ち上げ実施が決まりました。
【打ち上げ直前】
発射8分前からは打ち上げに向けた秒読みが始まり、4分前からは作業が自動に切り替わります。
発射の2分50秒前に電源を地上設備からロケット内部に切り替えた後、発射の6秒ほど前からメインエンジンの「LE-9」が燃焼を開始。そして、発射の0.4秒前、補助ロケットの「SRB-3」が点火して燃焼を開始し、直後に、ロケットは発射台を離れる予定でした。
しかし実際には、メインエンジン「LE-9」は燃焼が始まったものの、補助ロケットは点火されず、打ち上げは中止されました。

補助ロケットは、「SRB-3」と呼ばれ、「H3」ロケット用に改良されました。長さはおよそ15メートルで直径2.5メートルの円筒に入った固体燃料を燃やし最も推進力が必要な打ち上げの初期段階に使用されます。
「SRB-3」は、搭載する衛星の重さに応じてロケット本体に取り付けますが、部品を減らし、軽量化や低コスト化につなげたほか、取り付けにかかる日数も2日と、これまでの半分で済むよう開発されたということです。
今回の初号機には2本装着され、計画では、打ち上げの0.4秒前に点火して燃焼を始め、発射から1分56秒後、高度43キロでロケット本体から切り離される予定でした。
「SRB-3」は、搭載する衛星の重さに応じてロケット本体に取り付けますが、部品を減らし、軽量化や低コスト化につなげたほか、取り付けにかかる日数も2日と、これまでの半分で済むよう開発されたということです。
今回の初号機には2本装着され、計画では、打ち上げの0.4秒前に点火して燃焼を始め、発射から1分56秒後、高度43キロでロケット本体から切り離される予定でした。
専門家「条件そろわなかったか」

三菱重工業の宇宙事業部長などを務め、ロケット開発に詳しい淺田正一郎さんは、「液体燃料を使うメインエンジンには着火しているので、補助ロケットの点火に進む圧力や温度などの条件がそろわず、点火の信号が送られなかったと思われる。必要な条件がそろわなかったのか、条件を判断するために設定する値を誤っていたかのどちらかだと思う」と話していました。
また、「設定値のミスならすぐに対応できるが、設定で要求された条件に届かなかった場合には、いろいろな原因が考えられ、場合によっては打ち上げがさらに延びるおそれもある」と指摘しました。
そのうえで、「焦ってはいけないが、海外の国々も次々と新しいロケットを投入しようとしているので、今回起きたことをしっかりフィードバックして、より信頼性の高いものにして確実に打ち上げてほしい」と話していました。
また、「設定値のミスならすぐに対応できるが、設定で要求された条件に届かなかった場合には、いろいろな原因が考えられ、場合によっては打ち上げがさらに延びるおそれもある」と指摘しました。
そのうえで、「焦ってはいけないが、海外の国々も次々と新しいロケットを投入しようとしているので、今回起きたことをしっかりフィードバックして、より信頼性の高いものにして確実に打ち上げてほしい」と話していました。
過去に打ち上げを中止したケースは
文部科学省やJAXAによりますと、ロケットの打ち上げで発射の直前に異常がみつかり、打ち上げを中止したケースはこれまでに少なくとも4件あるということです。
【「H2」2号機】
今から29年前の1994年8月、「H2」ロケット2号機で発射予定時刻の直前に打ち上げが中止されました。17日午後の会見で、JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャが当時のことについて触れ、「このときは補助ロケットに点火せず、パターンとしては今回と似ている。30年近く前だったが、安全に停止して、原因を突き止めてリベンジしたと記憶している」と話していました。
【イプシロン5号機】
また最近ではおととし10月に打ち上げられる予定だった「イプシロン」5号機が19秒前になって緊急停止し、打ち上げが中止に。このときの原因についてJAXAは「地上設備において確認すべき事象が発生したため」としました。その後、打ち上げを1か月余りあとに実施して成功しています。
【イプシロン初号機】
イプシロンでは、2013年8月の初号機の打ち上げの際も発射19秒前にロケットの姿勢に異常を示すデータが見つかり、打ち上げを中止。2週間余り後に打ち上げを実施して成功しています。
このほか、1989年8月に計画された「H1」ロケット5号機の打ち上げでもエンジンの不具合で発射直前に中止したということです。
【「H2」2号機】
今から29年前の1994年8月、「H2」ロケット2号機で発射予定時刻の直前に打ち上げが中止されました。17日午後の会見で、JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャが当時のことについて触れ、「このときは補助ロケットに点火せず、パターンとしては今回と似ている。30年近く前だったが、安全に停止して、原因を突き止めてリベンジしたと記憶している」と話していました。
【イプシロン5号機】
また最近ではおととし10月に打ち上げられる予定だった「イプシロン」5号機が19秒前になって緊急停止し、打ち上げが中止に。このときの原因についてJAXAは「地上設備において確認すべき事象が発生したため」としました。その後、打ち上げを1か月余りあとに実施して成功しています。
【イプシロン初号機】
イプシロンでは、2013年8月の初号機の打ち上げの際も発射19秒前にロケットの姿勢に異常を示すデータが見つかり、打ち上げを中止。2週間余り後に打ち上げを実施して成功しています。
このほか、1989年8月に計画された「H1」ロケット5号機の打ち上げでもエンジンの不具合で発射直前に中止したということです。
新型国産ロケットの仕様

【「H3」とは】
新型ロケット「H3」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発しています。
日本の大型ロケットとしては「H2」以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。
「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットで、第1段と第2段には、ロケットを飛ばすための推進剤に「液体水素」と「液体酸素」を使っています。
エンジンはいずれも新型で、
▽第1段のメインエンジンが「LE-9」。
▽第2段のエンジンが「LE-5B-3」。
▽さらに、「SRB-3」という固体燃料を使う補助ロケットを搭載することができます。
「H3」は、「H2A」に比べて、
▽エンジンの第1段では部品の数を、▽補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしています。
【発射台】
発射場は、鹿児島県の種子島宇宙センターですが、発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
新型ロケット「H3」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発しています。
日本の大型ロケットとしては「H2」以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。
「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットで、第1段と第2段には、ロケットを飛ばすための推進剤に「液体水素」と「液体酸素」を使っています。
エンジンはいずれも新型で、
▽第1段のメインエンジンが「LE-9」。
▽第2段のエンジンが「LE-5B-3」。
▽さらに、「SRB-3」という固体燃料を使う補助ロケットを搭載することができます。
「H3」は、「H2A」に比べて、
▽エンジンの第1段では部品の数を、▽補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしています。
【発射台】
発射場は、鹿児島県の種子島宇宙センターですが、発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。

【搭載重量に応じて変更可能】
「H3」は、
▽メインエンジンを2基から3基に増やせるほか、
▽補助ロケットの本数も最大4本まで搭載可能です。
▽人工衛星を覆うカバー「フェアリング」の大きさも長短2種類あり、
搭載する人工衛星に応じて仕様を変えられるのも特徴です。
【初号機は】
今回打ち上げる初号機は、
▽メインエンジンが2基、
▽補助ロケットが2本、
▽フェアリングは短いタイプを使用するため全長は57メートルで、
▽人工衛星を含めない重量はおよそ422トンです。
地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。
「H3」は、
▽メインエンジンを2基から3基に増やせるほか、
▽補助ロケットの本数も最大4本まで搭載可能です。
▽人工衛星を覆うカバー「フェアリング」の大きさも長短2種類あり、
搭載する人工衛星に応じて仕様を変えられるのも特徴です。
【初号機は】
今回打ち上げる初号機は、
▽メインエンジンが2基、
▽補助ロケットが2本、
▽フェアリングは短いタイプを使用するため全長は57メートルで、
▽人工衛星を含めない重量はおよそ422トンです。
地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。
特徴は「安く大きく」
【パワー増強とコストダウン】
新型ロケット「H3」の最大の特徴は、パワー増強と、コストダウンの両立です。
【日本のロケット長所と短所】
現在の主力ロケット「H2A」は、打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、これまで55回打ち上げられ、失敗は2003年、「H2A」6号機の1回だけで成功率は98%を誇ります。
一方で、「H2A」は、打ち上げ1回当たり、およそ100億円かかります。
商業衛星の打ち上げ需要が高まり、世界中で新型ロケットの開発が進む中で、H2Aでは将来、価格競争の面で不利になると指摘されています。
新型ロケット「H3」の最大の特徴は、パワー増強と、コストダウンの両立です。
【日本のロケット長所と短所】
現在の主力ロケット「H2A」は、打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、これまで55回打ち上げられ、失敗は2003年、「H2A」6号機の1回だけで成功率は98%を誇ります。
一方で、「H2A」は、打ち上げ1回当たり、およそ100億円かかります。
商業衛星の打ち上げ需要が高まり、世界中で新型ロケットの開発が進む中で、H2Aでは将来、価格競争の面で不利になると指摘されています。
【「H3」が掲げる目標】
「H3」は全長が最長で63メートルと、「H2A」より10メートル長いほか、直径も1.2メートル大きい5.2メートルで、国内のロケット史上最大。
打ち上げ可能な重量は、「H2A」のおよそ1.3倍に増強されました。
そしてコスト面では、打ち上げにかかる費用をおよそ50億円と、「H2A」の半分程度に抑えることを目指して開発。
独自の技術を採用してエンジン部品の数をこれまでの3分の1程度に減らしたほか、
ロケットの発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
さらに、受注から打ち上げまでの期間を2年から1年に短縮するとともに年間6機の打ち上げを目標に掲げています。
【高い信頼性も維持】
「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、新しい宇宙開発時代に必要なパワー増強とコストダウンを両立させ、各国がしのぎを削る国際的な打ち上げビジネスに対抗するのがねらいです。
「H3」は全長が最長で63メートルと、「H2A」より10メートル長いほか、直径も1.2メートル大きい5.2メートルで、国内のロケット史上最大。
打ち上げ可能な重量は、「H2A」のおよそ1.3倍に増強されました。
そしてコスト面では、打ち上げにかかる費用をおよそ50億円と、「H2A」の半分程度に抑えることを目指して開発。
独自の技術を採用してエンジン部品の数をこれまでの3分の1程度に減らしたほか、
ロケットの発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
さらに、受注から打ち上げまでの期間を2年から1年に短縮するとともに年間6機の打ち上げを目標に掲げています。
【高い信頼性も維持】
「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、新しい宇宙開発時代に必要なパワー増強とコストダウンを両立させ、各国がしのぎを削る国際的な打ち上げビジネスに対抗するのがねらいです。
永岡文科相「状況確認中」
永岡文部科学大臣は記者会見で「打ち上げ時刻前に自動で停止したと報告を受けている。現在JAXAで状況確認中で、今後の打ち上げの見通しについては、その結果などを踏まえて検討していくことになる」と述べました。
その上で「新しいロケット開発は、EUでも各国苦労しているという話を伺っている。前を向いてしっかりと前進するように頑張っていく」と述べました。
その上で「新しいロケット開発は、EUでも各国苦労しているという話を伺っている。前を向いてしっかりと前進するように頑張っていく」と述べました。