「北方領土の日」根室で住民大会開催へ 交流事業は中断続く

2月7日は「北方領土の日」です。北海道根室市では、3年ぶりに一般の参加者を入れて住民大会が開かれます。一方で、ロシアが事実上管轄する北方領土では、ロシア人の島民がウクライナへの軍事侵攻を支持する活動を行っていると伝えられるなど、ロシアへの愛国心を高めようという動きがみられます。

「北方領土の日」は、1855年2月7日に、北方四島を日本の領土とする条約が、日本とロシアの間で結ばれたことにちなんで定められ、北海道根室市の総合文化会館では、7日正午から、3年ぶりに一般の参加者を入れて住民大会が開かれます。

北方領土をめぐっては、ロシアが去年3月、ウクライナへの軍事侵攻に対する日本の制裁措置に反発して、北方領土の問題を含む平和条約交渉を中断する意向を表明しているほか、ビザなし交流などの交流事業も中止されたままです。

住民大会では、元島民や地元の高校生の代表などが、北方領土返還に向けた決意表明を行うほか、新型コロナウイルスの道の感染対策が緩和されたことを受けて、返還を求めるシュプレヒコールも、参加者全員で声を出して行う予定だということです。

北方領土の島から兵士として参加し死亡の事例も

ロシアメディアは、北方領土の島々で軍事侵攻を支持する象徴にもなっている「Z」の文字を記した車が列になって島を走る様子や島民が戦地にいるロシア軍の兵士へ支援物資を送ったとする動きを伝えています。
また、島民が軍事侵攻に兵士として参加し、死亡した事例も相次いでいるとみられ、このうち、択捉島では、先月、ウクライナ東部ドネツク州の激しい戦闘が続くバフムトで島出身の兵士が死亡し、葬儀が行われたと伝えられています。
また、色丹島では、去年12月にウクライナで死亡した島出身の兵士を「英雄」としてたたえるとする特別授業も学校で行われたということです。

ロシア側は、軍事侵攻に関する動きを通じて、北方領土においてもロシアへの愛国心を高めようとする狙いがあるものとみられます。

北方領土をめぐっては、ウクライナへ軍事侵攻を始めたロシアに、日本が欧米と歩調を合わせるかたちで制裁を科したのに対して、ロシア側は反発し、去年3月には北方領土問題を含む平和条約交渉の中断を一方的に表明するなど、強硬な態度を示しています。
ロシアはウクライナへの軍事侵攻をめぐり制裁を科す日本に反発し、北方領土の元島民らによる「ビザなし交流」と、元島民らが故郷の集落などを訪問する「自由訪問」について、日本との間の合意を破棄したと去年9月、一方的に発表しました。

北方四島との交流事業は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3年前から中断されたままで、さらにロシア側による一方的な停止の発表で再開の見通しは立っていません。

これまで、日本人の元島民などと交流を重ねてきたロシア人の島民からは、日本による制裁に反発する声があった一方で、交流事業の再開などを望む声も聞かれました。

このうち、第1回目の「ビザなし交流」からおよそ30年にわたって交流に携わってきた、択捉島に住むナタリア・エフトゥシェンコさんは、中断している現状について「日本側が踏み込んだ制裁を発表したから、ロシア側もすぐに対応した」と主張しました。

ただ、今後の交流については「互いに良い関係を維持すべきで、双方とも制裁など必要ない」と話し、ウクライナへの軍事侵攻が交流事業に影響することには反対だと話しました。
また、択捉島の地元紙「赤い灯台」の編集長オリガ・キセリョワさんは、交流事業は互いを知る重要な役割を果たしてきたと指摘した上で「日本の友人たちに会えず、さみしい。『ビザなし交流』は友好的で強い結びつきであった。政治状況はかわったが、人々はかわらない」と話し、島民の中にも交流事業の再開を望む声もあると明かしました。

松野官房長官「問題解決し平和条約締結の方針を堅持」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「戦後77年が経過した今もなお領土問題が解決されず、日本とロシアの間に平和条約が締結されていないのは誠に遺憾だ。ロシアによるウクライナ侵略によって日ロ関係は厳しい状況にあり、展望を具体的に申し上げる状況にはないが、問題を解決し、平和条約を締結するという方針を堅持していく」と述べました。

また「高齢となった元島民の思いに何とか応えたいとの考えに変わりはなく、北方墓参をはじめとした事業の再開は今後の最優先事項のひとつだ。一日も早く事業が再開できる状況となることを強く期待する」と述べました。