戦車供与の独英 ウクライナ側への訓練 来月はじめまでに開始へ

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対し、欧米各国は主力戦車の供与を相次いで表明していて、このうちドイツとイギリスはウクライナ側への訓練を来月はじめまでに開始し、3月末にもウクライナに戦車が届くとしています。

ウクライナでは26日、各地でロシア軍による攻撃があり、ウクライナ政府は合わせて11人が死亡したと発表したほか、各地の電力インフラも被害を受けたということです。

ロシア国防省は27日、「この攻撃でNATO=北大西洋条約機構から供給されたものを含め、戦闘地域への兵器や弾薬の輸送を断ち切った」と主張していて、欧米各国がウクライナへの主力戦車の供与を相次いで表明するなか、こうした支援をけん制したい思惑もあるとみられます。

一方、ドイツ政府は27日、供与を決めた戦車「レオパルト2」をウクライナ軍の兵士が扱えるようにするための訓練を、来月はじめにドイツ国内で開始する予定であることを明らかにしました。

またイギリスも、供与する戦車「チャレンジャー2」の操縦や整備についての訓練を来週30日からイギリス国内で開始する見通しを示しています。

両政府とも、3月末にもウクライナに戦車が届くとしていて、春に向けてロシア、ウクライナ双方の軍事作戦の強化も伝えられる中、欧米側の軍事支援が本格化しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、27日公開した動画の中で、「ドネツクなど前線の状況は引き続き極めて厳しい。ロシア軍は破壊の手段には事欠かず、力によってのみ阻止できる」と述べるとともに、改めて各国の軍事支援に感謝し、徹底抗戦する決意を強調しました。

ウクライナが「レオパルト2」を求める理由は?

ウクライナ側は、欧米の主力戦車の中でもドイツの「レオパルト2」が戦況を打開するうえでもっとも有効だとして供与を強く求めてきました。

その理由としては、運用上の「利点」と優れた「性能」が挙げられます。

まず、この戦車は、ヨーロッパのNATO加盟国などが多く保有することから、300両の戦車を求めているウクライナとしては、まとまった数の供与が期待できます。

同じモデルの戦車であるため、修理や補給の際に必要な部品や燃料などを確保することが容易だとされているほか、戦車を操縦する兵士の訓練も効率よく行うことができるという利点も指摘されています。

また、レオパルト2は、旧ソビエト製の戦車との戦闘も想定した設計となっていて、イギリスのシンクタンク、IISS=国際戦略研究所は、こうした戦車に対して装備面で優れた点があるとしています。

IISSによりますと、現在使われている「レオパルト2」のうちもっとも古い「A4」という型であっても、旧ソビエト製の車両と比べ、射撃管制システムなどの面で優位性があるということです。

また、A4よりさらに新しい型の「レオパルト2」は、砲撃する兵士のための照準器や指揮官用の熱光学機器を備えているため、夜間でもより正確に標的を捕捉できるなど、ロシア軍の多くの戦車に対して有利だとしています。

さらに、「レオパルト2」が搭載する120ミリ砲は、NATOの最新の標準的な弾薬でその供給ラインを利用することができるようになる点でもウクライナ軍にとってプラスになるということです。

「レオパルト2」保有は16か国 欧州だけで2000両以上

イギリスのシンクタンク、IISS=国際戦略研究所によりますと、ドイツ製の「レオパルト2」を保有しているのは、ヨーロッパやNATO=北大西洋条約機構の加盟国では16か国に上るということです。

保有している数は多い順に
▽ドイツが520両以上、
▽ギリシャが353両、
▽スペインが327両、
▽トルコが316両、
▽ポーランドが247両、
▽フィンランドが200両、
▽スイスが134両、
▽スウェーデンが120両、
▽カナダが82両、
▽オーストリアが56両、
▽デンマークが44両、
▽ポルトガルが37両、
▽ノルウェーが36両、
▽ハンガリーが12両、
▽チェコとスロバキアがそれぞれ1両となっています。

ヨーロッパの国々だけで2000両以上を保有していることになります。

また、ドイツ、ポーランド、ノルウェー、フィンランド、カナダ、それにスペインがレオパルト2のウクライナへの供与を表明しているほか、各国メディアによりますと、オランダ、ポルトガルが供与を検討しているということです。

このうちオランダは、「レオパルト2」を保有していませんが、ドイツから借りている車両を購入したうえでウクライナに供与することを検討しているということです。