“コロナ減少傾向 インフルエンザ同時流行に注意” 専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は減少傾向が続き、亡くなる人の数や救急搬送が困難なケースも高い水準にはあるものの減少傾向となっていると分析しました。今後、新型コロナは全国的には減少傾向が続くと見込まれる一方、インフルエンザは増加が続くと見込まれ、同時流行に注意が必要だと指摘しています。

専門家会合は、現在の感染状況について全国では減少傾向が続き、今後も全国的に減少傾向が続くことが見込まれると分析しています。

病床使用率は低下傾向で、救急搬送が困難なケースも減少しているものの、非常に多い地域もあるとしています。

そして、亡くなる人の数は高い水準の中で減少傾向となっている一方、感染者のうち80代以上が占める割合が去年夏の第7波より多い傾向が続いていて、引き続き注意が必要だと指摘しました。

さらにより免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加しているほか、アメリカを中心に報告され国内でも検出されているオミクロン株の「XBB.1.5」など変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要としています。

一方で、全国で流行期に入った季節性インフルエンザは今後も増加が続くと見込まれ、新型コロナとインフルエンザの同時流行に注意が必要だと指摘しました。

専門家会合は、高齢者や重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するための医療体制の強化や重点化が必要だと指摘したうえで、オミクロン株対応のワクチンの接種を呼びかけるとともに自分で検査できる抗原検査キットを準備して感染に備えるよう求めています。

そして、
▽飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、
▽換気の徹底、
▽症状があるときは外出を控えるといった、基本的な感染対策の徹底を引き続き呼びかけています。

脇田座長“減少は一過性の集団的免疫か”

専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田隆字座長は、現在の感染状況について「地域によって差があるが、すべての地域で感染の減少傾向が見られる。ただ、高齢者の感染割合が多い地域もあり、今後の推移には注意が必要だ」と評価しました。

そのうえで、減少の理由について「会合の中では前回の第7波の減少と同じように一過性の集団的な免疫が一定程度ついたことでいったん収束の方向に向かっているのではないかという説明があった。ただ、今後、海外で流行している『XBB』系統など、免疫を逃れる能力が強い変異ウイルスに置き換わる可能性もあり、その動きによって今後の感染の動向が左右されると思う」と述べました。

また、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、脇田座長は「見直しに伴って感染対策をどう考えるかという議論があり、今後どのような対策を行っていくべきなのか継続して話し合うことになった。医療体制や治療費の公費負担のあり方などについても意見が出たが、いずれにしてもコロナ診療と一般医療を続けることが必要で、マイナスの影響が出ないよう段階的な移行が必要だという意見があった」と説明しました。

1週間の新規感染者数 前週比0.59倍 全都道府県で減少傾向

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、24日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて0.59倍とすべての都道府県で減少傾向が続いています。

首都圏の1都3県では、
▽東京都が0.59倍、
▽神奈川県が0.61倍、
▽埼玉県が0.62倍、
▽千葉県が0.63倍と減少傾向が続いています。

関西では、
▽大阪府が0.60倍、
▽兵庫県が0.62倍、
▽京都府が0.57倍、
東海でも、
▽愛知県が0.58倍、
▽三重県が0.71倍、
▽岐阜県が0.56倍などとすべての都道府県で前の週と比べて減少しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▽三重県が761.92人と全国で最も多く、
次いで
▽鳥取県が702.56人、
▽静岡県が690.22人、
▽広島県が663.50人、
▽和歌山県が651.76人で1000人を超える地域はなくなりました。

また
▽東京都は321.83人、
▽大阪府は427.86人、
そして
▽全国では445.11人となっています。

日本医師会 釜萢氏「学校現場でのマスク対応 変更問題ない」

日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で「新型コロナの感染症法上の位置づけを『5類』に移行しても、医療現場や介護、高齢者施設では、引き続きマスクの着用をお願いしないといけない。ただ学校現場で早くマスクを着けなくてもよいように対応の変更を求める声も少なくないと承知している。国が適切に判断して、位置づけの見直しよりも早く実施することは問題ないと思う」と述べました。

今後の身近な感染対策 考え方まとめる

新型コロナの感染症法上の位置づけについて、政府が原則として、ことし春に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を示したことを受け、厚生労働省の専門家会合のメンバーなどは、今後の身近な感染対策について「個人や集団が流行状況やリスクに応じて対策を選択し行うことになる」とする考え方をまとめました。

この考え方は厚生労働省の専門家会合のメンバーらがまとめ、25日に開かれた会合で示しました。

それによりますと、現在の状況について新型コロナが出現して4年目となり、いまでは過剰ともいえる感染対策や有効性が疑問視される感染対策が続けられている場面が見られ、社会経済活動や教育活動、子どもの生活の大きな制限になっていることが課題だとしています。

一方でオミクロン株は感染が広がりやすく、さらに変異が加わったウイルスも世界各地で確認されていて、今後も流行が繰り返される可能性があるという認識を示しています。

そのうえで、これからの身近な感染対策について地域で流行が大幅に拡大し社会に大きな影響を与える事態が想定される場合を除いて「政府の要請に基づく一律の対策から、個人や集団が流行状況やリスクに応じて主体的に選択して行うことになる」とする考え方を示しました。

また感染対策はどの程度の感染予防効果があるかという情報に基づいて、個人がそれぞれの価値判断で決めることになるとして、職場や集まりでは話し合いなどで合意することが望ましく、対策を行うことや逆に対策をやめることが強要されないよう、個人の選択を尊重する配慮がされるべきだとしています。

さらに、人混みができる公共の場では、重症化しやすい人、健康でも感染を避けたい人がいることを踏まえて、こうした人たちが不安を感じない配慮のある対策が求められ、病院や高齢者施設では感染が広がりやすく拡大した場合の影響が大きいことから、感染を持ち込まれないようにすることは引き続き重要だと指摘しました。

脇田座長は「合理的で市民が納得できる対策を選択できることが目指すべき方向性だ。今後、具体的な対策についてさらに議論して、科学的な根拠や知見とともに示していきたい」と話しています。