ロシア「避けられない傷 残す」 独や米の “戦車供与方針”に

ウクライナへの軍事支援をめぐり、複数のメディアは、ドイツやアメリカ政府が、焦点となっていた主力戦車を供与する方針を固めたなどと伝えています。
これに対し、ロシア側はこうした欧米側の動きを強くけん制しています。

ドイツの有力誌シュピーゲルなどは24日、ドイツ政府が攻撃能力が高いドイツ製の戦車「レオパルト2」をウクライナに対して供与する方針を固めたと伝えました。

また、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、バイデン政権がアメリカの主力戦車「エイブラムス」をウクライナに供与する方向で検討していると報じています。

ドイツのショルツ政権は、戦車の供与について戦闘が一層激化するという国内の懸念などを背景に、慎重な姿勢を示してきましたが、アメリカなどとの協議も踏まえたうえで、どのような決断をするのかが焦点となっています。

ウクライナ軍は、近く大規模な反転攻勢を目指しているとみられ、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は先月、イギリスメディアのインタビューに対し「300両の戦車や600から700の歩兵戦闘車などが必要だ。そうすれば軍事侵攻前までの領土の奪還が現実的になる」と述べています。

これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、ドイツ政府が供与を決定した場合「将来の両国関係にとってよいことにはならず、必ず避けられない傷を残すことになる」として、強くけん制しています。

また、ワシントンに駐在するロシアのアントノフ大使も「供与が決まれば、アメリカの戦車は、ほかのNATO=北大西洋条約機構の兵器と同様、破壊されるだろう」としています。

米 戦争研究所 “欧米諸国の供与 領土奪還に貢献”

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日、イギリスが主力戦車「チャレンジャー2」を供与する方針を示しているのに続き、ドイツやアメリカが主力戦車をウクライナに供与する方針を固めたなどとメディアが伝えているとしています。

さらにフランスも、フランス製戦車「ルクレール」を供与する可能性を排除しないという立場を示していると指摘しています。

そのうえで「欧米諸国のウクライナへの主力戦車の供与は、ロシア軍を打ち負かし、領土を奪還することに貢献するだろう」として、戦況がこう着する中、ウクライナ軍が主導権を握る可能性があると分析しています。

ロシア大統領府 米の戦車供与の可能性「ばかげた計画」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は25日、アメリカの主力戦車「エイブラムス」がウクライナに供与される可能性について「ばかげた計画であり、技術的な側面から失敗するだろう。明らかに過大評価されている。他の戦車のように燃え尽きることになる」と強くけん制しました。

また、戦車「レオパルト2」を供与する方針を固めたと伝えられていたドイツ政府とロシアは対話を行っていないと主張しました。

そして、アメリカの科学雑誌が「人類最後の日」までの残り時間を象徴的に示す「終末時計」で、これまでで最も短い「残り1分30秒」と発表したことについて質問されたペスコフ報道官は「ヨーロッパと世界情勢は極めて緊迫している。アメリカが主導するNATO=北大西洋条約機構が選んだ路線によって、緊張緩和が見通せていない」と欧米側を批判しました。