コロナ感染者立ち寄りの店名公表 県の賠償責任認めず 徳島地裁

3年前、徳島県が、新型コロナの感染者が立ち寄ったラーメン店の名前を公表したことをめぐり、店側が風評被害を受けたとして、県に賠償を求めた裁判で、徳島地方裁判所は「感染の収束を図ることなどが急務だったことを考慮すれば、店名を公表する必要性や緊急性はあった」と判断して、訴えを退けました。

全国で新型コロナの感染が第2波に入った2020年7月、徳島県は、県内で確認された20人目の感染者が立ち寄っていたラーメン店の名前を公表しました。

これについて店側は、同意のないまま店名を公表され、深刻な風評被害を受けたと主張して、県に1100万円の賠償を求める訴えを起こしていました。
25日の判決で、徳島地方裁判所の島戸真裁判長は「当時、徳島県では感染の急拡大が懸念されていて、収束を図ることなどが急務だったことを考慮すれば、店名公表の目的は正当で、必要性や緊急性もあった」と指摘しました。

さらに「県の公表は客観的な事実を述べたにすぎず、感染対策の不備など、店の名誉や信用を傷つけたり、感染の危険性があると誤認させたりするものでないことは明らかだ」と述べて、公表の方法も問題はなかったと判断し、店側の訴えを退けました。

原告 ラーメン店経営者 “冷たい裁判結果 残念だ”

原告のラーメン店経営者、近藤純さんは、判決のあとの会見で「弱っている飲食店に冷たい裁判結果で残念だ。店名公表は当たり前だという県の主張はとてもつらいもので、弱い立場の気持ちは行政には分からないのかと感じた」と話していました。

また、原告の代理人を務めた森本健夫弁護士は、店側が店名の公表に同意していなかったと裁判所が認定した点については評価したうえで「判決が店名の公表には正当性や緊急性があったとした点は非常に残念だ」と述べました。

原告側は今後、判決の内容を精査したうえで控訴を検討するということです。

徳島県「主張が認められた」

判決を受け、徳島県は「これまでの主張が認められたと考えている。引き続き関連法令に基づき新型コロナ対策に取り組む」とコメントしています。