新型コロナ 専門家会合「感染者数減少傾向も死者数過去最多」

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は減少傾向に転じている一方、亡くなる人の数や救急搬送が困難なケースが過去最多となる状況が続き、引き続き注意が必要だと指摘しました。高齢者など重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するための体制の強化や重点化、それに感染対策の継続が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について、全国では減少傾向に転じ、今後も地域差や不確実性はあるものの、全国的には横ばいか減少傾向になることが見込まれるとしています。

ただ、年代別に見ると、60代以上で減少幅が小さく、一部の地域では増加もみられているとしています。

亡くなった人の数は過去最多を超える状況が続き、高齢者施設や医療機関での集団感染が多く見られ、感染者のうち、80代以上の高齢者が占める割合が去年夏の第7波のときより増える傾向が続いていて、引き続き注意が必要だと指摘しました。

病床使用率は多くの地域で5割を超えて7割を超える地域もみられるほか、救急搬送が困難なケースも第7波のピークを超えて増加傾向が続いており、救急医療体制の確保に注意が必要だとしています。

さらに、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加しているほか、アメリカを中心に報告され国内でも検出された「XBB.1.5」など変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要としています。

また、全国で流行期に入った季節性インフルエンザについて、今後も増加が続くと見込まれていて、新型コロナとインフルエンザの同時流行に注意が必要としています。

専門家会合は、高齢者や重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するための医療体制の強化や重点化が必要だと指摘したうえで、オミクロン株対応のワクチンの接種を呼びかけるとともに、自分で検査できる抗原検査キットを準備して感染に備えるよう求めています。

そして、飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、換気の徹底、症状があるときは外出を控えるといった、基本的な感染対策の徹底を改めて呼びかけました。

全国の新規感染者数 前週の0.75倍

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、16日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて0.75倍と、大きく増加していた先週から一転し、すべての都道府県で前の週より感染者数が減っています。

首都圏の1都3県では
▽東京都が0.69倍、
▽神奈川県が0.77倍、
▽埼玉県が0.71倍、
▽千葉県が0.75倍と減少しています。

関西では
▽大阪府が0.74倍、
▽兵庫県が0.77倍、
▽京都府が0.79倍、

東海でも
▽愛知県と三重県が0.83倍、
▽岐阜県が0.76倍などと、すべての都道府県で前の週と比べて減少しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は

▽宮崎県が1361.57人と全国で最も多く、
次いで
▽佐賀県が1200.83人、
▽鳥取県が1184.84人、
▽鹿児島県が1122.36人、
▽熊本県が1112.98人などと12の県で1000人を超えていて
▽東京都は514.90人、
▽大阪府は673.07人、
そして
▽全国では712.39人となっています。

脇田座長「減少傾向続くのか注意必要」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田隆字座長は、現在の感染状況について「新規感染者の数は、全国的には横ばいから減少傾向となっている可能性があるが、年末年始や年明けの連休の影響があり、正確な把握が難しい。今後、本当にピークアウトして減少傾向が続くのか注意して見ていく必要がある」と評価しました。

死亡者数の増加が続いていることについては「現時点ではウイルスが変化し、重症化率や死亡率が上がっているといった情報はない。高齢者で、ワクチンの接種や感染によって獲得した免疫が低下し、これまで以上に感染しやすくなっている可能性もあり、もう少し詳細に分析すべきだといった議論があった。さらに、どのような症例がコロナに関連した死亡として報告されているか、地域によってばらつきがある可能性も指摘された」と述べました。

また、今後のワクチンの接種の進め方については「主流となるウイルスが、免疫を逃れる能力をどの程度持つのか、重症化率がどう変化するのか見ていく必要がある。また、ワクチン接種の目的を明確にし、どのような人に接種を進めるのか時期を置かずに議論を進める必要がある」と述べました。

そして、国内で初めて新型コロナの感染が確認されてから3年を迎えたことについて「国民をはじめ、医療関係者や保健所、国や自治体、社会全体の努力でコロナによる死者数は、海外に比べて低く抑えられてきたが、それでも感染対策で社会活動が制限され、経済や教育、生活などさまざまな場面で影響があった。いまは、オミクロン株が主流となりワクチン接種が進んだことで、重症化率や致死率は低下したが、感染力は高まり、死亡者の数も非常に多くなっている。また、インフルエンザのように冬だけ流行するのではなく、1年を通して流行が繰り返されるなど予測が極めて難しく、一般の感染症と同じように対応できるようになるまでにはまだ時間がかかる。医療がひっ迫し、感染者数の急激な増加を避けていくことは引き続き求められると思うが、社会経済活動などを回復させることも必要で、今後もコロナの特徴に合わせて必要な対応を取り、専門家として、科学的な分析に基づいて適切な助言を続けたい」と話していました。