中国 去年のGDP伸び率 前年比+3.0% 2020年以来の低水準に

中国の去年のGDP=国内総生産の伸び率は、前の年と比べてプラス3.0%でした。厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が影響し、政府が掲げたプラス5.5%前後という目標を大きく下回りました。

中国の国家統計局が17日に発表した去年1年間のGDPの伸び率は物価の変動を除いた実質で前の年と比べてプラス3.0%と、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が最初に広がった2020年以来の低い水準となりました。

中国政府は去年の経済成長率についてプラス5.5%前後という目標を掲げていましたが、目標を大きく下回るのは極めて異例です。

中国では去年「ゼロコロナ」政策のもと、最大の経済都市の上海など各地で外出制限がたびたび行われた影響で消費が冷え込み、各地で工場の操業停止や物流の混乱が相次ぎました。

また、主要産業の不動産業界ではマンション建設の中断などの問題が続いて、景気を停滞させる要因になりました。

同時に発表された去年10月から先月までのGDPの伸び率は、前の年の同じ時期と比べてプラス2.9%でした。

先月、感染対策が緩和されたものの、その後感染が急拡大した影響もあり伸び率は前の3か月と比べて1ポイント縮小し、減速が目立つ形となりました。

中国政府は今月「ゼロコロナ」政策を終了し、経済の立て直しを急いでいますが感染拡大が続く中、景気回復が進むかが焦点となります。

日本の大手バイクメーカーの現地法人は

中国経済の停滞は厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が最大の要因で、国内の企業の生産活動に大きな影響を与えました。

内陸部の重慶にある日本の大手バイクメーカーの現地法人では、去年11月、地区で感染が拡大して外出制限が実施されたため11日間にわたり操業の停止を余儀なくされました。

生産再開のため従業員を工場の敷地から出さないいわゆる「バブル方式」での操業を求められ、ベッドや寝袋まで持ち込んで対応しましたが、従業員は通常の半分ほどになり生産力も落ち込みました。

先月の感染対策の緩和後は従業員の感染が広がって全体の6割ほどが感染したとみられ、会社では漢方薬の成分を参考に栄養に配慮した飲み物を配って対応したということです。

今月は通常の体制に戻り、会社では今後の経済の正常化に期待しています。ただ、部品の調達先で感染が広がると、生産に支障が出るため取引先の感染状況の把握に努めているということです。

「重慶建設ヤマハモーターサイクル」の三好隆 総経理は「従業員からは家族に感染が広がるのが怖いという声も聞かれた。今後は『ゼロコロナ』政策でのロックダウンもなくなり、中国全体が通常の状態に戻っていくことを期待したい」と話していました。

観光地からは先行きに不安の声も

中国では「ゼロコロナ」政策が終了したものの、観光地からは景気の先行きについて不安の声も聞かれました。

このうち世界遺産にも登録され、城壁に囲まれた町並みが有名な、内陸部の山西省の平遙は去年はたびたび外出制限がとられて主要産業の観光が大きな打撃を受けました。

先月から感染が急拡大しましたが、今月に入ってようやく観光客が戻り始めたということです。

観光客の1人は「以前は感染対策が面倒でしたが、今は面倒なこともなくなって便利になりました」と話していました。

街では今月下旬の旧正月の春節にあわせた大型連休に向けてイベントを開催して、これまでの落ち込みを取り戻そうと観光需要の回復に大きな期待を寄せています。

ただ、今のところ観光客の数は少なく、民宿の1つでは連休期間にもまだ予約がない日が多いということです。

民宿では、去年の売り上げがコロナ前と比べて半分以下に落ち込んでいて、人件費などを差し引くと手取りはわずかで苦しい状況が続いているということです。

経営者の侯立勇さんは「感染対策が緩和されてもまだ怖いという人も多く商売は悪い状況のままだ。経営は悲惨な状況でことしもよくならないと予想しています」と話していました。

今後の中国経済の見通しなどについて専門家は

(日本総研 野木森稔主任研究員)
Q.中国のGDPが3.0%の伸び率だったことについて受け止めは
A.「ゼロコロナ」政策を続けたことが2022年に関しては大きな下押しの要因になったと考えられる。中国政府は「ゼロコロナ」政策を続けながらもプラス5.5%前後という目標を達成できると見ていたが、目標を大きく下回ったことで新型コロナの感染拡大による経済への影響を見誤ったことが明らかになったと思う。

Q.ことしの中国経済の見通しは
A.中国政府は「ゼロコロナ」政策を大きく転換し、ウィズコロナへ向かっていくことを明言した。このため、ことし前半はサービス消費が盛り上がり旅行や映画に行く人が増えるなどして経済は急速に回復するとみられる。しかし、後半にかけては米中対立による製造業の低迷や不動産市場も構造的な問題を抱えていることから、経済全体の勢いが落ちて厳しい状況になると考えられる。

Q.GDPと合わせて中国の人口が61年ぶりに減少に転じたと発表された。経済への影響については
A.厳しい「ゼロコロナ」政策の下で人の行き来が制限され、子どもがなかなか産めないといった状況もあり、特殊な環境にあったことを考慮しても、人口減少が速いペースで進んでいる。中国はこれまで世界の工場として世界経済の需要を取り込んで経済発展をしてきたが、必要なのは豊富な労働力だった。そこがどんどん縮小していくと、製造業で大きな力を持つことが難しくなり経済成長が低下していく可能性がある。

Q.中国の人口減少のトレンドは今後も続くか
A.中国では都会に出て行く女性も増えている中で、子供を産むことに弊害を感じるようになってきている可能性がある。経済がしっかり回復するような状況にならないと、中国の人たちが子どもを安心して産める環境にはならない。中国がしっかり回復基調に経済を乗せていけるかが重要なポイントになってくるとみている。

国家統計局局長「ことしの中国経済は好転する」

GDPの伸び率が政府目標を大きく下回った去年の中国の経済状況について、国家統計局の康義局長は「予想を超える要因によるショックに対して効果的に対応したことで、マクロ経済はおおむね安定していた」と述べました。

そのうえで、今後の見通しについては「世界経済がスタグフレーションに入るリスクが高まっているほか、国内経済は回復の基礎がまだ固まってはいないが、ことしの中国経済は全体として好転するだろう」と述べ、懸念はあるとしながらも景気の回復に自信を見せました。