【詳しく】新型コロナ感染確認から3年 どうだった?どうなる?

新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから3年となりました。この3年間、新型コロナウイルスの感染状況はどう変わり、どのような変異株が発生してきたのか?そして、コロナ対策は、このあとどう変わっていくのか?まとめました。

3年間で累積3100万人が感染

新型コロナウイルスは国内では3年前の2020年1月15日に初めて感染が確認されました。厚生労働省のまとめでは、これまでに感染した人は累積で3100万人に、亡くなった人は6万2000人にのぼっています。

このうち感染者数は、オミクロン株が広がった去年初めから今月16日までで、およそ2974万人と、1年余りで3年間のおよそ95%を占めるなど爆発的に増加しています。

致死率は大幅に減少

感染者数に占める亡くなった人の割合「致死率」は、この3年間で治療法の進歩やワクチン接種が進んだことなどによって、大幅に減少しています。
これまでの致死率を分析した感染の波の期間ごとにまとめました。

▽国内で初めて感染が確認された2020年1月からの第1波では5.34%。

▽重症者に対する治療法が進歩したことなどもあり、その年の夏の第2波では0.93%。

▽おととし(2021年)の年明け以降に急速に感染が拡大した第3波では、医療体制がひっ迫したこともあり、1.82%と再び高くなりました。

▽さらにイギリスで最初に確認された変異ウイルス、アルファ株が広がったおととし春の第4波では1.88%。

▽おととし夏「デルタ株」が広がり、さらに大きな感染拡大となった第5波では、比較的若い世代でも重症化する人が出るなどして亡くなる人は増えた一方、軽症や無症状の感染者も増加したため、致死率は0.32%。

▽感染力の強いオミクロン株が広がった去年初めからの第6波以降には、それ以前とは異なる規模での感染拡大が起き、亡くなる人も増えましたが、それ以上に感染者数の増加が桁違いに大きく致死率は第6波では0.17%。

▽去年夏の第7波では0.11%と、さらに低くなりました。専門家は、感染の主流がオミクロン株に変わって、持病がない若い世代を中心に軽症で済む人も多くなったこと、ワクチン接種が進んで重症化する人の割合が減少したことなどが背景にあるとしています。

▽しかし現在も続く第8波では、ことしに入って以降、死亡数が連日過去最多を更新するなど、急速に増加し、16日の時点で致死率は0.18%。第7波より高くなっていることについて、専門家は、去年秋以降感染者の集計方法が変わり、すべての感染者が集計されていない可能性がある一方、亡くなる人の数は、ほぼ正確に報告されていることが影響しているのではないかと指摘しています。

変異株は“いたちごっこ“続く

新型コロナウイルスは感染が始まって以来3年間、変異を繰り返していて、現在も感染力が強い新たな変異ウイルスの出現や拡大が懸念されています。
日本国内で初めて感染が確認されたのは中国の武漢で見つかったのと同じタイプのウイルスでしたが、2020年の春以降は変異が加わりヨーロッパで広がったウイルスが国内でも拡大しました。

その後、感染力が強まった変異ウイルスが出現して日本国内にも流入し、おととし(2021年)の春以降はイギリスで見つかった「アルファ株」、その後、おととし夏以降はインドで見つかった「デルタ株」が広がり、重症化する患者が相次いで医療体制がひっ迫しました。

去年(2022年)の初めからは、南アフリカで最初に報告された感染力の強いオミクロン株が国内でも主流の状態が続いています。オミクロン株は「BA.1」というタイプが広がったあと、去年春以降は「BA.2」が主流となりました。オミクロン株はそれまでの変異ウイルスと比べて特に若い世代では重症化する割合は低いものの、感染が広がるスピードは格段に早く、より多くの人が感染するようになっていることから、亡くなる人も多くなっています。

そしてオミクロン株の中でも免疫を逃れる方向での変異が繰り返されていて、去年夏以降は「BA.5」が主流となって感染拡大の「第7波」が起き、現在の「第8波」では「BQ.1」の割合が多くなってきています。さらにより感染力が高いおそれがある「XBB.1.5」がアメリカで広がっていて、日本国内でも検出されています。
ウイルス学が専門で東京大学医科学研究所の佐藤佳 教授は「ワクチンを作っても変異株が出てきて逃げてしまうといういたちごっこが続いている。『XBB』系統は最も中和抗体が効かず、変異株との付き合い方は次の局面に入った印象だ。新型コロナには収束といった終わり方はなく、どのような形で流行を許容するのかという議論が必要な段階に入っている。世界的な議論で着地点を見いださなければいけない」と話しています。

医療現場「感染の波来るたびひっ迫は変わらず」

感染拡大当初から対応を続けている病院では現在の第8波でもコロナ患者用の病床がほぼ埋まっていて、3年間、感染拡大の波が来るごとにひっ迫する状態が繰り返されています。
東京 八王子市にある「南多摩病院」では入院が必要な救急患者に24時間対応しながら、2020年の2月に横浜港に入港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が起きたときから新型コロナの患者を受け入れてきました。

病院では当時から現在に至るまで、170床ある病床の14%にあたる23床をコロナ患者専用として確保して中等症までの患者の治療に当たり、これまでに受け入れたコロナ患者は1000人近くに上ります。病院では、おととし夏の「第5波」の頃までは、周囲の病院で感染リスクを恐れて受け入れをためらうところが多かったため、コロナから回復したあとも転院先が見つからずに患者が入院し続けるなどして病床が埋まる状況が続きました。

その後、オミクロン株が広がった去年初めからの「第6波」以降は、肺炎の症状で重症化する患者は少なくなった一方、感染が拡大するごとに院内でほかの病気で入院していた患者が感染するなどして、確保した病床数を超えるコロナ患者が入院してひっ迫し、一般の診療にも影響が出る状態が続いています。
現在の「第8波」でも、先月上旬からコロナ病床が埋まり、ほかの病棟の一部を閉鎖するなどして病床を確保しているため、一般の救急患者の受け入れも難しくなり、ふだんは9割以上に応じている救急患者の受け入れが年明け以降は半分ほどにとどまっています。それでも病院には患者の受け入れの依頼が相次ぎ、消防に対して病床の空きが無いことを伝えても救急車が到着し、医師が初期的な治療を行うなどして対応せざるをえない日々が続いています。
関裕 副院長は「当初はウイルスの性質が分からず強い危機感を持っていたが、有効な治療法が分かってきたことで恐怖感は薄れてきている。ただ、感染の波が来るたびにひっ迫するのは変わらず、苦しい状況が続いている。感染対策は続けなければならないが、最大限の対策を改め、より多くの患者を受け入れる体制に変えられるよう、知恵を絞っていく必要があると思う」と話していました。

保健所「365日対応続き非常に厳しい」

感染拡大当初から対応を続けている保健所では、この3年間、感染した人の全数把握や患者の入院調整などで業務がひっ迫する状態が続きました。
去年9月に全数把握が簡略化され業務は大幅に軽減されましたが、感染の「第8波」で入院調整などの業務が増え、週末も休みなく職員が対応せざるをえない状況が続いています。保健所では新型コロナの感染に際して、感染者の全数把握や健康観察、患者の入院調整などを行ってきていて、東京の北区保健所では3年前の感染拡大の当初は職員が発熱などの症状がある人の電話相談や感染が疑われる人の検体を検査機関に届けるといった業務にも追われました。

その後、検体の搬送は民間の運送業者に委託して検査機関に届けられるようになりましたが、おととし初めの「第3波」以降は感染者数の急増で、患者を受け入れる医療機関を探す入院調整が難航し、入院が必要な人でも自宅で待機するケースが相次ぎ、職員は健康状態の確認などの業務に追われました。

北区保健所によりますと、去年9月に発生届が求められるのが高齢者など重症化リスクの高い人だけになるなど、感染者の全数把握が簡略化されたため保健所の業務量は7割ほど減り、ひっ迫は軽減されたということです。しかし、現在の「第8波」になり、患者の入院調整のほか、自宅で療養する患者に電話したり訪問したりして行う健康管理の業務が増えていて、週末も休みなく職員がおよそ20人体制で対応にあたっているということです。
北区保健所の前田秀雄 所長は「感染者数の爆発的な増加で、保健所の業務は破綻したと言っていいほどひっ迫した。その中で非常時に派遣の職員に加わってもらったり、業務を民間機関に委託したりするなど、効果的な人員体制を整えられるようになった。また、地域の医療機関とリアルタイムで情報を共有せざるを得なくなったことで結果的にコミュニケーションが非常に強化された。ただ、この3年間、保健所の職員が365日対応する体制が続いているのは非常に厳しいといわざるをえない」と話しています。

「2類相当」から「5類」への位置づけはどうなる?

新型コロナの感染対策は今後どうなってゆくのか?

松野官房長官は16日の記者会見で「これまで科学的な知見やエビデンスを重視し、感染状況や専門家の意見を踏まえて対策を講じてきた。現在は感染拡大防止と社会経済活動のバランスをとりつつ、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、取り組んでいる」と強調しました。
政府は、ことし春にも、新型コロナの感染症法上の位置づけを、厳しい措置がとれる「2類相当」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に見直すことも含め検討を進めています。

これについて松野官房長官は「厚生労働省の審議会で議論を始めたところであり、引き続き感染状況や科学的知見、専門家の議論なども踏まえつつ検討を行っていく」と述べました。

尾身会長「納得感と共感ある議論が求められる」

この先、このウイルスとどう向き合っていくべきなのか政府分科会の尾身茂会長は次のように話しました。
「これから一番重要なことは『経済や社会を動かす』一方で『医療提供体制を維持すること』。その2つの目的を同時に実現することが必要だということです。『2類か5類か』の議論をする前に、この2つの目的を実現するためにどれが一番良い方法か、いまのコロナの特徴を踏まえた対策が必要だと思います。市民がどう考えるか、医療者がどう考えるか、簡単に結論を出すと言うより、深い議論が必要です。『これなら分かる』という納得感と共感がある議論が求められるのではないかと思います」