【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。
(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ「ミサイル攻撃で40人死亡 30人以上が行方不明」

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は14日、ウクライナ各地への大規模なミサイル攻撃を行い、このうち東部の都市ドニプロでは9階建てのアパートにミサイルが着弾しました。

ウクライナの非常事態庁は16日、この攻撃でこれまでに子ども3人を含む40人が死亡し、75人がけがをしたほか、依然として30人以上の行方が分かっていないとSNSで明らかにしました。

ロシアとベラルーシ“合同演習開始” ベラルーシ国防省

ベラルーシ国防省は16日、ロシアとベラルーシの空軍による合同演習が始まったと発表しました。ベラルーシ国内各地でロシアの航空宇宙軍の部隊とともに、さまざまな訓練を実施するとしています。

合同演習は来月1日までの予定で、偵察や地上作戦の支援などさまざまな訓練を実施し、戦闘任務を共同で行う際の相互の運用性を高めるのが目的だとしています。

合同演習についてベラルーシに隣接するウクライナは「ロシアが合同演習の名目でベラルーシで航空部隊を増強している。ベラルーシからのミサイル攻撃や空爆の脅威が高まっている」として警戒を強めています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日「ロシアによる攻撃の可能性は現時点で低いが、こうした活動はロシアがベラルーシからウクライナを攻撃するという情報操作を強めるものだ」と分析していて、ロシアとしては合同演習でウクライナに軍事的な揺さぶりをかけるねらいがあるものとみられます。

ドニプロのアパートに着弾は「対艦ミサイル」か

ウクライナ空軍は、15日、東部ドニプロペトロウシク州の中心都市ドニプロにあるアパートに14日着弾したのは、対艦ミサイル「Kh-22」だとする見解を示しました。

「Kh-22」は旧ソビエト時代に空母などの艦船を攻撃する目的で開発されたミサイルですが、ロシア軍は兵器不足のため地上攻撃に使用しているとみられます。去年6月、ウクライナ中部ポルタワ州クレメンチュクのショッピングセンターが攻撃され市民20人以上が犠牲になった際も、イギリス国防省は「Kh-22」の改良型が使用されたと分析していました。

ウクライナ空軍は声明で「この型式のミサイルを撃墜できる兵器を保有していない」として、侵攻開始以来あわせて210発以上の「Kh-22」がロシア側から発射されたものの1発も撃墜できていないと明らかにしました。その上で「将来的に供与される『パトリオット』などの地対空ミサイルシステムだけがこうした標的を迎撃できる」としています。

ミサイル攻撃で30人死亡 犠牲者さらに増えるか

ウクライナでは14日に首都キーウなど各地でロシア軍による大規模なミサイル攻撃があり、このうち東部ドニプロペトロウシク州の中心都市、ドニプロでは、9階建てのアパートにミサイルが着弾しました。

ゼレンスキー大統領は15日公開した動画で「30人が亡くなり、その中には15歳の女の子も含まれる。2人の子どもたちの親が亡くなったという報告もある。愛する人を失ったすべての人に哀悼の意を表したい」と述べました。

そのうえで、依然として30人以上が行方不明だと明らかにし、犠牲者はさらに増える見通しです。

ウクライナ空軍によりますと、この攻撃に使われたのは射程が600キロに及ぶ対艦ミサイルだということです。

その後もロシア軍による攻撃は続き、南部ザポリージャ州の知事は16日「州都ザポリージャ周辺のインフラ施設にミサイル攻撃があり、複数のけが人が出ている」としています。

攻撃についてロシア国防省は15日「軍事インフラを攻撃し、目標にすべて命中した」と主張しました。

ゼレンスキー大統領 救助活動に全力あげる考え

ウクライナのゼレンスキー大統領は動画で「がれきからは、6人の子どもを含む多くの人が救出されている」と述べ、今後も救助活動に全力をあげる考えを示しました。

さらに「今でもこのテロを非難していないロシアにいる人やロシア出身の人たちに言いたい。起きていることに対して沈黙しただじっと待っていると、いつか自分たちに返ってくるという結果に終わるだけだ」と非難しました。
一方、東部での戦況について「ソレダールやバフムト、ドネツク州のすべての地域、そしてルハンシク州での戦いは休むことなく、止まることなく続いている」と述べ、激しい戦闘が続いていることを強調しました。

プーチン大統領 「前向きな動きだ」

ロシアのプーチン大統領は、国営テレビ向けに13日に受けたインタビューで、ロシア国防省がウクライナ東部にあるウクライナ側の拠点近くの町、ソレダールを掌握したと発表したことについて「前向きな動きだ。すべて軍の計画どおりだ」としたうえで、「兵士たちが何度でもわれわれを喜ばせてくれることを願う」と述べ、軍に対しさらなる作戦の遂行を求めました。

ロシアとベラルーシが合同演習 ウクライナ北部の州で警戒

ロシアとベラルーシが16日から合同演習を行うとしていることについて、国境を接するウクライナ北部のチェルニヒウ州では、演習が新たな攻撃に発展するのではないかと警戒感が広がっています。

ベラルーシの国防省は、ロシアとベラルーシの空軍が1月16日から2月1日まで合同演習を実施すると発表しました。

ロシア軍は、去年2月の侵攻当初、ベラルーシからも地上部隊を進軍させていて、当時ロシア軍が主要都市の周辺まで迫ったチェルニヒウ州では、訓練を機に再びロシア軍が進軍してくるのではないかと、市民の間で懸念する声が聞かれました。
40歳の女性は「恐ろしいです。合同演習を続けると聞きましたが、こちら側に来ないようウクライナ軍に守ってもらいたいです。2月に経験したようなことが2度と起きて欲しくありません」と話していました。

また74歳の男性は、「ベラルーシのルカシェンコ大統領がウクライナへの攻撃を許可するほど愚かではないことを願っています」と話していました。

町のガソリンスタンドでは、避難を余儀なくされた場合に備えて、念のため給油しておこうという市民の姿がみられました。

訪れた男性は「もしベラルーシとロシアが攻撃してきた場合、町を出て安全な場所に行く可能性があり、念のため満タンにしました」と話していました。

ロシア軍の進軍を警戒し家庭で準備する人も

リュドミーラ・アダメンコさんは、去年2月の侵攻時には家族で中部の町に避難したということで、ロシアとベラルーシの合同演習のニュースをSNSで知り、再び避難を迫られるおそれもあると準備を進めていました。

パスポートなどの書類や防寒具、それにスマホの充電器などを詰めた非常持ち出し用のカバンを用意しているほか、非常食の備蓄を増やしました。

医師免許を持つ夫は先週、軍から招集されたため、仮に避難する場合は、2人の息子と車で中部の町に行く計画を立てているということです。
アダメンコさんは「ウクライナ軍が必ず国境を守ってくれ、敵は来ないと信じていますが、国境で訓練をしていると聞き、怖いです」と話していました。