ウクライナ保健相 病院など被害1200件「ロシア責任問われる」

ウクライナのビクトル・リャシュコ保健相は10日、NHKの単独インタビューに応じ、ロシアによる軍事侵攻が始まって以降、病院や診療所などの被害がおよそ1200件に上り医療に深刻な影響が出ていると明らかにしました。

この中でリャシュコ保健相は、今月6日の時点でロシア軍の攻撃による病院や診療所の被害は1192件に上っていて、このうち67%は修復ができておらず、23%はまったく機能していないと強調しました。

その上で「医療施設に対する攻撃はジュネーブ条約で明確に禁止されている。第2次世界大戦後、今回のロシアによる攻撃ほど医療施設への被害が出たことはなく、ロシアはその責任を問われることになる」と述べ、強く非難しました。

また、リャシュコ保健相は「最前線に近いところでは、心臓発作や脳卒中などの病気があっても、残念ながら救急車が行けない」と述べ、ロシアが道路や橋などのインフラへの攻撃を繰り返し、医療へのアクセスも困難になっていると指摘しました。

さらに、電力不足によって医療に優先順位をつけなければならなくなっているとして、一部の病院では手術を行う外科や子どもたちがかかる小児科などに必要な電力や暖房を集中せざるをえない状況に陥っていると説明しました。

そして、近隣諸国に協力を求めることを余儀なくされるなど国内の医療事情が極めて厳しくなっているという認識を示しました。

厳しい寒さで体調崩す人も インフラ施設攻撃で電力不足

ロシア軍によるインフラ施設への攻撃で電力不足に陥っているウクライナでは、厳しい寒さで体調を崩す人が少なくありません。

首都キーウ近郊にある診療所では、発電機を使いながら地域の医療を守ろうと奮闘を続けています。

キーウ近郊のホストメリにある診療所は、去年2月のロシア軍による侵攻の直後から1か月余りにわたって占拠され大きく損傷したものの、去年4月から修復しながら診療を続けています。

診療所には連日、およそ100人の住民が診察に訪れますが、厳しい寒さで体調を崩し、かぜなどの症状を訴える人が増えているということです。

10日は、昼間でも気温がマイナス3度ほどに冷え込む中、周辺の停電が続いていて、診療所では発電機を使って最低限の明かりをともしながら住民たちの診療を行っていました。

診療所を訪れる住民の数は日に日に増えているということで、院長のメルニックさんは「寒さの影響で呼吸器系疾患の患者の数が4割ほど増えています。診療中も停電が1日に2回はありますが、発電機を使いながらなんとか対応しています」と話していました。