【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシアでは軍事侵攻が家族の関係に亀裂も

ウクライナ侵攻が続くなかロシアでは予備役の動員が始まった去年9月下旬以降、「緊張状態」や「恐怖」などを感じる人が増えたという世論調査の結果が相次いで発表されるなど国民の精神状態が悪化しているとみられます。

ロシア国営のタス通信は去年10月、市場調査を行っているロシアの機関のデータを引用し、1月から9月までの間で抗うつ薬の購入額が去年の同じ時期と比べて70%、鎮痛剤は44%増えたと伝えていて精神面で不調を訴える人が増えているとみられます。

さらに心理カウンセラーに相談する人も増えています。
オンラインでカウンセリングを行っている会社の共同設立者で臨床心理士のオリガ・キタイナ氏は、NHKの取材に対して去年1月から10月までの新規の顧客数は前の年の同じ時期と比べて50%増加したということです。

相談内容で最も多いのは、家族など身近な人との関係をめぐる悩みで軍事侵攻を進める政権に対する考えの違いなどが浮き彫りになり関係に亀裂が入ったといったケースもあるということです。

また、身近な人が動員されたり、動員から逃れようと国外へ出国したりするなど暮らしに急激な変化が生じ、強い不安や恐怖心を抱いているなどの相談も寄せられているとしています。

キタイナ氏は「家族の間で考え方の違いが表面化し、いざこざの原因となることが多い。そして、家族関係を維持しようと解決に向けて何かと議論をしなければならないなど葛藤も多い」と述べ、軍事侵攻の長期化に伴って家族関係にも影響を与えるなど精神的な負担を増大させていると指摘しています。

“死者を出しながらも前進” ロシア民間軍事会社の戦闘員を投入

ウクライナ東部のドンバス地域では、ウクライナ側の拠点バフムトの掌握を目指すロシア軍が、近くの町ソレダールで激しい砲撃を繰り返しています。

ウクライナ国防省は、ロシア側は民間軍事会社ワグネルの戦闘員を多数投入し、死者を出しながらも前進しようとしていて、ウクライナ側との間で戦闘が激化しているとしています。

戦況を分析しているアメリカのシンクタンク「戦争研究所」によりますと、ソレダール中心部でワグネルの戦闘員が市街戦を展開しているとする映像がSNSに投稿されており、「戦争研究所」はワグネルがいくつかの地区を掌握したと主張することで有能な戦闘部隊であるという評価を高めようとしていると指摘しています。

プーチン政権に近いとされるワグネルの代表プリゴジン氏は、ロシア国内の刑務所に服役する受刑者から戦闘員を募り戦地に派遣したと伝えられているほか、アメリカ政府は、ワグネルが北朝鮮からロケット弾やミサイルを調達していると指摘するなど、ウクライナへの軍事侵攻で役割を拡大しているという見方が出ています。

日仏首脳会談 「G7広島サミットでウクライナ支援継続、強化を」

ヨーロッパなどを歴訪している岸田総理大臣は、フランスの首都パリにある大統領府、エリゼ宮で日本時間の午前4時すぎからマクロン大統領と首脳会談を行いました。

会談で岸田総理大臣は、ことし5月の「G7広島サミット」について、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するG7の強い決意を示すとともにウクライナ侵攻を続けるロシアに対する厳しい制裁と強力なウクライナ支援を継続、強化していく姿勢を示す場にしたいという考えを伝えました。

また、エネルギーや食料安全保障を含む国際社会の課題も議論する意向も伝え、両首脳は、サミットの成功に向けて連携していくことを確認しました。

マクロン大統領はエネルギー支援などで日本に謝意

フランスのマクロン大統領は、岸田総理大臣との共同記者発表で、ロシアによるウクライナへの侵攻に関連して「日本はロシアの行為を迅速に非難して対抗措置を取り、ウクライナを財政的、人道的に支援したほか、難民を受け入れ、エネルギーの面でも欧州を支援した」と述べて、日本がエネルギー危機に陥るヨーロッパに向けてLNG=液化天然ガスを融通したことも踏まえて感謝を述べました。

そして「ウクライナ戦争に限らず、日仏両国は国際的な危機や核不拡散の問題で、協調を欠かしたことはない」と述べて、北朝鮮やイランによる核開発の問題や中国が影響力を強めるインド太平洋地域での安全保障、それに気候変動などの課題で、緊密な連携を続けたい考えを示しました。

ウクライナ東部激しい攻防 ロシア側 “ワグネル”加わり攻勢か

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は東部のウクライナ側の拠点の掌握を目指して、大量の砲撃とともに民間軍事会社の戦闘員も加わって攻勢を仕掛けているとみられ、徹底抗戦を続けるウクライナ軍と激しい攻防となっています。

ウクライナ東部のドンバス地域ではウクライナ側の拠点の掌握をねらうロシア軍とウクライナ軍との間で激しい戦闘が続いています。

このうちドネツク州のウクライナ側の拠点バフムト近くにあるソレダールについて、ウクライナ軍の報道官は9日、地元テレビに対し「敵はこの1日で106回の砲撃を行った」と述べるとともに至近距離での戦闘も起きていると説明しました。

また、ウクライナのマリャル国防次官は9日に「敵は強力な突撃を始めた。民間軍事会社『ワグネル』の戦闘員で編成された多数の突撃部隊を投入し、大量の砲撃を行っている」とSNSに投稿しました。

ロシアメディアもロシア側にはワグネルの戦闘員が加わって、市街戦が行われていると伝えていて、兵力を集中させて突破を図るロシア側と徹底抗戦を続けるウクライナ軍との間で激しい攻防となっています。

各地でミサイル攻撃 住民への被害相次ぐ

東部ハルキウ州の知事は9日、市場がミサイル攻撃を受け、2人が死亡し5人がけがをしたと明らかにしたほか、南部ヘルソン州の知事も「住宅地への砲撃で1人が死亡した」とSNSに投稿しました。

ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官も、南部ミコライウ州でミサイル攻撃があり8人が病院に運ばれたうえ、住宅100棟以上が被害を受けたと明らかにするなど、各地で住民への被害が相次いでいます。

ゼレンスキー大統領 動画で徹底抗戦続ける姿勢強調

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日公開した動画で、激しい戦闘が続く東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の戦況について触れ「侵略者たちはソレダールに最大限の力を集中させている。われわれの兵士たちが厳しい攻撃に抵抗してくれていることで、ウクライナは追加の時間と力を得ることができた」と前線の兵士をたたえました。

その上で「テロリストたちをわれわれの土地から追放し、ロシアの攻撃計画から住民を確実に守るためには、ウクライナは必要なすべてのものを手に入れなければならない。こうした武器や装備は、まもなく前線の兵士たちに届くはずだ」として、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。