中国 新型コロナ死者数などデータ “WHOの指摘はあたらず”

中国外務省の報道官は、WHO=世界保健機関が中国から示された死者数などのデータが実態を正確に反映していないと指摘したことに対し、「中国は一貫して速やかな公開と透明性の原則に従って、データを共有してきた」と述べ、指摘はあたらないという認識を示しました。

WHOは4日の定例会見で、中国政府の発表する統計について「死者数については定義が狭いなどの問題があり、感染の影響が過小評価されている」と述べ、実態を正確に反映していないと指摘しました。

また、テドロス事務局長も「われわれは中国に対し、より迅速で信頼できるデータとウイルスの情報を求め続ける」と述べ、中国側にさらなる情報の開示を求めました。
これについて、中国外務省の毛寧報道官は5日の記者会見で、「中国は一貫して速やかな公開と透明性の原則に従って、WHOと緊密な意思疎通を保ち関連する情報やデータを共有してきた」と述べ、指摘はあたらないという認識を示しました。

そのうえで「WHOには、科学的かつ客観的で公正な立場から、世界的な感染症の課題に積極的な役割を果たすことを期待する」と述べ、WHOをけん制しました。

また、日本政府が、今月8日から、中国本土からの入国者を対象に水際措置をさらに強化する方針を示したことについても「各国の感染対策は科学的かつ適度であるべきで、政治的なもてあそびをすべきではない」と述べ、重ねて反発しました。

中国の感染データは実態とかい離

中国では、先月7日に「ゼロコロナ」政策による規制が緩和されたあと、各地で感染が急拡大しましたが、同時に大規模なPCR検査も行われなくなったことなどから、感染者数の正確な把握ができておらず、実態とかい離しているのが実情です。

国の感染症対策を担う中国疾病予防センターは4日、国内で新たに9308人の感染が確認されたと発表しています。
ただ、中国の感染症の専門家の中には、人口2000万人以上の北京について「すでに80%以上が感染した可能性がある」という見方を示したり、「多くの大都市で感染者はすでに5割を超えている」という見方を示す別の専門家もいたりして、実際の感染者数はこれよりはるかに多いとみられます。

一方、新型コロナによる死者の定義について、中国政府は「感染後、主に呼吸が困難になり死亡した場合に限られる」としていて、基礎疾患のある感染者が重症化して死亡した場合などは新型コロナの死者には含めていません。

中国では4日までの1週間に国内で10人余りが死亡したと発表されていますが、インターネット上では、基礎疾患のある人や高齢者などが亡くなったという情報が連日伝えられています。

制限緩和で海外旅行再開に期待

中国政府が、先月末に新型コロナウイルスの水際対策を見直し、中国人の海外旅行を段階的に再開させていく方針を示したことを受けて、首都・北京にある大手の旅行会社では、海外旅行に関する問い合わせが急増しているということです。

この旅行会社は、2020年1月に中国で新型コロナの感染が拡大する前は日本を含む海外への旅行を数多く取り扱っていましたが、中国政府が、国内の旅行会社に対して団体旅行の受け付けや旅行商品の販売を禁止したため、今では取り扱いがありません。

しかし、この会社によりますと、先月末に中国政府が見直しを発表して以降各国の水際対策の状況や旅行の手続きに関する質問などが一日に100件近く寄せられているということです。

中国政府は、今のところ、海外旅行の具体的な解禁時期を示していませんが、会社では、旅行商品などの準備を進めながら海外旅行の本格的な再開に期待したいとしています。

北京春秋旅行社の楊洋総経理は「コロナ禍による影響は非常に大きく、緩和を待ち望んでいました。日本やタイといった人気の国には今後何千万という中国人観光客が訪れると思います」と話していました。