“笑顔の連鎖”生み出す 世界にひとつの和菓子

大好きな果物。
大好きな武将。
大好きだった猫。

大阪 羽曳野市の和菓子店では、小学生から“こんな和菓子があったらいいな”という絵を集め、ユニークな作品を職人が形にするコンテストを毎年開いています。

和菓子になった作品を子どもたちが手にすると、“笑顔の連鎖”が生まれました。

(大阪放送局 しあわせニュース取材班 小野田真由美)

“こんな和菓子があったらいいな”

タイトル:かわむきみかん
“大好きなみかんが、和菓子になったらいいな”
むいた皮の中には、あんこがたっぷり!
タイトル:サンタとクリスマスツリーとゆきだるまがのってるのにきづかないうさぎ
もうすぐクリスマス!
サンタやツリーが、うさぎの背中に乗ってやって来る?!
羽曳野市の和菓子店が、毎年開いている「小学生デザインコンテスト」。
11回目のことしは、過去最多157点の応募がありました。

「発想のユニークさ」などを基準に審査した結果、40作品が入賞。
タイトル:遠くから見守る上杉謙信
作品を受け取りに来た子どもたちは、手にした瞬間、歓声を上げて笑顔になります。
「遠くから見守る上杉謙信」作者の小学5年生
「めっちゃかっこいいし、なんかすごい!」

未来への投資 “あんこ嫌い”をなおしたい

「全国和菓子協会」によると、和菓子の生産金額は減少傾向にあり、去年は過去20年で生産金額が最も高かった14年前の平成20年に比べ約15%減少し、若い世代の“和菓子離れ”が指摘されています。

こうした中、和菓子店の社長の松田明さんはコンテストを企画しました。
「子どもの時においしさを知れば、将来もきっと食べてくれる。伝統文化を守るための“未来への投資”」という思いで、10年以上続けています。

松田さん
「あんこが嫌いなお子さんが、コンテストに応募してくれたんです。食べたら『おいしい!』と言ってくれて、あんこ嫌いを1人なおしました。喜びがなかったら、食べることもなかったかもしれませんね」

10時間かけて作品に

作品は、子どもたちに渡す日の前日に職人全員で作ります。

ことしは、朝から10時間かけて仕上げていきました。
タイトル:きれいな音がひびくバイオリン
タイトル:秋の風景
タイトル:パクパクスヤスヤあおむし
タイトル:The・大仏☆
タイトル:夜のさん歩 わがしをもとめて三千里

絵を一生懸命描いてくれた子どもたちの思いを、職人それぞれの技術で形にし、すべて無償でプレゼントしています。

橋本啓子工房長
「みんな個性があって、おもしろいなと。この子にとっては一生心に残るものになるので、心を込めて作らせてもらってます」

職人たちも “幸せ”

社長の松田さん自身が作った作品の1つ、タイトルは「三色だんごに ぴょん!」
絵では猫が顔を出していますが、見えないところも整えるのが職人のこだわり。

松田さんは、絵には描かれていない胴体まで作りました。
松田さん
「猫たちに躍動感を感じて。“こんな和菓子があったらいいな”という思いで絵を描いてくれたことが、すごく伝わってきました」

猫の楽しそうな表情も、忠実に表現しました。

丸一日作り続けてヘトヘトになっても、子どもたちの喜ぶ顔を想像すれば、松田さんも、幸せそうです。

未来を担う職人たちも

ことし職人になったばかりの新人2人が挑んだのは、たくさんの色を使って描かれたトンボ。

タイトルは「きどあい楽」です。
2人が「和菓子職人になりたい」と思ったのは、小学生の時。

その夢をかなえた今、小学生の“あったらいいな”を実現させました。
新人職人 須川穂咲さん
「トンボの体に込められている感情が、それぞれの色にちりばめられているのかな。この作品を見て、和菓子に興味を持ってくれたらうれしいです」

新人職人 中島康太さん
「今の僕にしては“出来た”かなと。時間はかかったけど愛情というか、子どもたちの思いをちゃんと込めて作れたのでよかったです」

和菓子で “笑顔と幸せの連鎖” を

作品を担当した職人が子どもたちに和菓子を直接手渡すと、「すごい!」「かわいい!」と店内には“笑顔が連鎖”していきます。
「三色だんごに ぴょん!」の作者は、小学4年生の石山真妃さんです。

真妃さんは、おばあちゃんの家で飼われていた大好きな猫をイメージして、和菓子にしてもらいました。

絵に描かれていない胴体だけでなく、もう一つ、サプライズが!
かわいらしい“肉球”まで、ついていたんです。

石山真妃さん
「めっちゃかわいくて、うれしいです。早く大人になって働いたお金で和菓子いっぱい買って、ママや家族にもあげたいです」
和菓子店社長 松田明さん
「最高ですね!泣きそうです!和菓子を食べる人が増えれば増えるほど笑顔が増える、幸せになっていくと思って作ってます。幸せになってもらえるお手伝いをできたらと思います」

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