【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

”ロシア軍が来年の早い時期に大規模な攻撃の可能性”

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日「プーチン大統領はウクライナを支配し、広範囲にわたる領土を占領するという目標に向けて、2つの軍事的な動きを同時に行っている。東部ドネツク州のバフムト周辺などへの攻撃と、インフラ施設への継続的なミサイル攻撃だ」と指摘しました。

そのうえで「ウクライナ政府に譲歩を迫ることに失敗しているため第3の動きとして、この冬、新たな攻撃を行う準備をしている可能性がある」と分析しました。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官も来年2月など年明けの早い時期にロシア軍が大規模な攻撃を仕掛ける可能性があると指摘し、警戒を強めています。

プーチン大統領 19日にベラルーシ訪問へ

こうした中、ロシアと同盟関係にあるベラルーシの大統領府はロシアのプーチン大統領が今月19日に首都ミンスクで、ルカシェンコ大統領と会談し安全保障問題などについて協議すると発表しました。

ベラルーシ領内では、地元の独立系団体が今月に入り、ロシア軍の軍用機や軍用車両が新たに到着したと伝えるなど軍事的な動きが活発化していますが、シンクタンク「戦争研究所」はベラルーシ軍がウクライナに直接、侵攻する可能性は低いと分析しています。

プーチン大統領はルカシェンコ大統領に対して、さらなる軍事的な協力を促す狙いがあるとみられ、ウクライナの首都キーウに近いベラルーシの国境側から揺さぶりをかける思惑とみられます。

キーウ市長 “市内の3つの地区で爆発”

ウクライナの首都キーウのクリチコ市長は16日、市内の3つの地区で爆発があったと明らかにしました。

NHKの取材班がいるキーウ市内のホテルでも、現地時間午前9時ごろ、日本時間午後4時ごろから、複数回にわたって爆発音が聞こえました。

現地では午前8時すぎ、日本時間午後3時すぎからキーウを含むウクライナ全土で防空警報が出されています。

60発以上のミサイルが飛来しているという情報もあり、クリチコ市長はロシア軍による攻撃が続いているとして、住民に避難するよう呼びかけています。

また、ウクライナ東部、ハルキウ州の州知事は16日、州内のインフラ施設にロシア軍による攻撃があったと明らかにしました。

今のところけが人は報告されていませんが、地元メディアによりますと、州内では停電が発生しているということで、当局が詳しい被害の状況を調べています。

ゼレンスキー大統領 “ロシア軍はすべての街や村を破壊”

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、新たな動画を公開し、各地でロシア軍による攻撃が続いていると述べました。

このうち南部ヘルソン州では、一日に16回以上の砲撃があったほか、赤十字の救護施設に砲弾が当たり、救急隊員としてボランティア活動をしていた女性1人が死亡したとしています。

また、東部ドンバス地域やハルキウ州でも攻撃が続いているとしたうえで「彼らはウクライナ軍に勝てないので、すべての街や村を物理的に破壊することで防御に使える建物や壁をなくそうとしている。これを止める唯一の手段は、ロシアのテロリストをウクライナの領土から追い出すことだ」と述べました。

米 ウクライナ軍に行っている訓練 拡充する方針

アメリカ国防総省のライダー報道官は15日、記者会見で、ウクライナの自衛の能力を向上させるため、アメリカがウクライナ軍に行っている訓練を拡充する方針を明らかにしました。

アメリカは、これまでもウクライナ兵に兵器の使い方などについて訓練を行っていて、ライダー報道官によりますと、ことし4月以降、およそ3100人に訓練を行ったということです。

アメリカ軍は来年1月以降、ドイツにあるアメリカ軍の演習場で、毎月およそ500人のウクライナ兵を対象に、より実践的で高度な演習を行うとしています。

ライダー報道官は「ウクライナが自国を守るためには熟練した部隊を確保する必要があり、訓練は不可欠だ」と述べました。

EU ウクライナへ2兆6000億円支援で合意 ロシアへの追加制裁も

EU=ヨーロッパ連合は15日、ベルギーの首都ブリュッセルで首脳会議を開き、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して、来年、総額180億ユーロ、およそ2兆6000億円を支援することで合意しました。

支援は、ウクライナが基本的な公共サービスを維持したり、ロシア軍による攻撃で破壊されたインフラ施設を修復したりするために使われます。

EUはまた、首脳会議と並行して開いた大使級の会合で、ロシアに対して禁輸の対象を広げるなどとする追加制裁についても原則で合意しました。

首脳会議のあと行われた記者会見で、EUのフォンデアライエン委員長は「ウクライナでロシアが続ける戦争に圧力をかけるにあたって、EUはかつてない結束と迅速さで対応してきた」と強調しました。

一方、ロシアに対するより強い制裁を求めていたリトアニアのランズベルギス外相は、ツイッターで「ロシアへの制裁を強めようとするのではなく、自分たちの国が制裁の適用から免れようとする議論に多くの時間が費やされ、悲しい」などと、他のEU加盟国の対応を批判していて、軍事侵攻が長引く中、ロシアへの圧力をめぐってEU内で立場の違いがあることを改めて印象づけました。

プーチン大統領 一方的併合4州の経済発展計画の策定を指示

ロシアのプーチン大統領は15日、ミシュスチン首相など関係閣僚とオンライン会議を開きました。

このなかでプーチン大統領は「前例のない制裁による攻撃が行われ、それはわれわれの経済の破壊を目的としている。しかし、欧米側のもくろみは失敗し、ロシア国民は結束を示した」と主張し、欧米側を非難しました。

さらに、プーチン大統領はロシアが一方的な併合に踏み切ったウクライナの東部と南部の4つの州について「2030年までにすべてのロシアの地域と同じレベルまで社会や経済を発展させる」と述べ、来年3月末までに新たな計画を策定するよう政府に指示しました。

プーチン大統領としては、ウクライナ軍が領土奪還を目指して反撃を強める中でも併合したとするこの4つの州はロシアの一部だとする姿勢を改めて示した形です。

ロシア大統領府のペスコフ報道官も14日、プーチン大統領が年内に4つの州の親ロシア派の指導者たちと会談を行う計画があると明らかにしていて、併合したとする地域の支配の既成事実化を推し進めようとしています。

米 バイデン大統領 アフリカ各国にロシア非難の同調 呼びかけ

アフリカの50近い国の首脳らが出席して首都ワシントンで行われたアメリカ・アフリカサミットの最終日の15日、バイデン大統領はロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「不正義で一方的だ」としたうえで、「コロナ禍と共に世界経済を混乱させ、開発の多くの成果を消し去った」と述べ、ロシアを批判しました。

アフリカ諸国の間では、ことし10月の国連総会でロシアを非難する決議案の採決が行われた際に19か国が棄権するなどロシアに配慮する国々もあり、バイデン大統領としてロシアへの非難に同調するよう呼びかけた形です。
また、バイデン大統領はアフリカでクーデターが相次いでいることを念頭に「民主主義の後退に立ち向かうための投資をする」と述べ、中国やロシアとは異なるアプローチで関与する姿勢を強調し、みずからも来年、アフリカを訪問する考えを示しました。

これに対して、AU=アフリカ連合の議長国であるセネガルのサル大統領は「インフラ整備のための財政支援などが続くことが重要だ」と述べ、アメリカの継続的な関与を求めました。

ロシア軍 ミサイルや無人機などでの攻撃続く

ロシア軍はウクライナのエネルギー関連施設などをミサイルや無人機で攻撃しているのに対してウクライナ軍は、東部や南部で反撃を続けています。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は14日、記者からの質問に答える形でクリスマスや新年の時期に停戦する可能性を否定し、ロシア軍は軍事作戦を続ける構えです。

ウクライナ軍司令官「ロシアの動員は機能している」

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は15日付けのイギリスの雑誌エコノミストのインタビューで「われわれの戦略的な任務は、来年2月に起こりうる戦争に備えることだ。最悪1月の終わりかもしれない。戦争は首都キーウ方面やベラルーシ方面で起きるかも知れず、南部方面についても排除しない」と述べました。

そのうえで「ロシアの動員は機能している。ロシアには120万から150万人の予備の兵力がいると推定していて、新たに20万人の兵士の準備をしている」と述べました。

ウクライナ外相「ロシア軍が来年早い時期に大規模攻撃」

ウクライナのクレバ外相も13日、「ロシア軍はおそらく大規模な攻撃を行う能力を来年1月の終わりから2月にかけて取り戻すだろう」と述べるなど、ウクライナ側はロシア軍が来年の早い時期に大規模な攻撃を仕掛ける可能性があるとして警戒を強めています。

林外相 ジョージア外相会談 “ウクライナ侵攻に連携対応を”

林外務大臣は15日夜、日本を訪れているジョージアのダルチアシビリ外相と会談しました。

この中で林大臣はジョージアが14年前にロシアの軍事侵攻を受け、いまも一部の地域にロシア軍が駐留していることを念頭に「日本はジョージアの主権と領土の一体性を一貫して支持している」と述べました。
そのうえで法の支配に基づく国際秩序を維持、強化していくため、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対し緊密に連携して対応していきたいという考えを伝えました。

そして両外相はジョージアと周辺地域の持続可能な発展に向け、脱炭素などの先端分野や人材育成に対する支援を強化していくことで一致しました。

ロシア国防省 大陸間弾道ミサイル備え付ける映像を公開

ロシア国防省は15日までに首都モスクワの南西にあるカルーガ州の基地でICBM=大陸間弾道ミサイル「ヤルス」を発射台に備え付ける映像を公開しました。

ロシアが定める今月17日の「戦略ミサイル軍の日」に向けたものだとしています。

「ヤルス」は核兵器の搭載が可能だとされ、ことし10月にもロシア北部の基地から発射訓練を行っていて、ロシア国防省は「戦略的抑止力のためだ」と強調しています。

一方、欧米側はロシアの核戦力に対する警戒を続けています。

ポーランドで支援活動の男性「日本からの支援が必要」

ポーランドの首都ワルシャワで日本語学校を運営している坂本龍太朗さん(36)はボランティアで発電機や防寒具などをウクライナの知人を通じて現地に届ける活動をしています。

現地で撮影された写真には雪が積もる中で、届けられた発電機や避難所で使う防寒用の座布団などを受け取る市民の姿が写されています。
坂本さんによりますと、ウクライナでは1日に20分程度しか電気が通らず、氷点下の寒さの中でほとんどの時間を暖房なしで過ごさなければならない地域があるということです。
これまでに南部のオデーサや西部のリビウなどの小学校や幼稚園を中心に100台ほどの発電機を届けたということですが、エネルギー価格の高騰によってポーランド国内でも需要が増え、発電機が手に入りにくくなっているということです。
オンラインで取材に応じた坂本さんは「ウクライナでは2月にかけて冷え込みが強まるので、このままでは寒さによる死者も出るのではないか」と懸念を示しました。
そのうえで、SNSや講演会などで集めた寄付金の残額がわずかとなっていることを明かし「戦争の長期化によって、多くの避難民を受け入れているヨーロッパ諸国では、支援に疲れ、関心も薄れつつある。このままでは支援が継続できなくなるおそれがあり、いまこそ日本の人たちの支援をお願いしたい」と訴えました。

日本に避難のウクライナの人たち “仕事を探している”

日本に避難してきたウクライナの人たちに生活費などを支援している日本財団は、先月下旬から今月12日にかけて避難者を対象にオンラインでアンケートを行い、10代から80代の750人が回答しました。

このうち帰国の意思を尋ねた質問では「ウクライナの状況が落ち着くまでは、しばらく日本に滞在したい」が40.8%、「できるだけ長く日本に滞在したい」が24.7%で、「なるべく早く帰国したい」は2.3%などでした。

また、現在の就労状況について尋ねたところ「働いている」が39.1%、「働いていない」が60.9%でした。

「働いていない」と答えた人の中で「仕事を探している」と回答した人は6割近くいたということです。

このほか、必要な支援を聞いたところ「遊び、観光」が55.9%と最も多く、次いで「仕事の紹介、職業訓練」が39.2%などとなりました。

日本財団はことばの問題で就労できないケースもあるとみられるとしています。

出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人は、今月7日時点で2179人いて、ロシアによる軍事侵攻が始まっておよそ10か月となり、避難生活が長期化するなか、仕事を求めている人の就職の支援などが課題となっています。

ウクライナ支援 カイロや湯たんぽを発送 川崎市

ウクライナでは、ロシア軍による攻撃で発電所などが破壊され、電気や暖房が使えない状態で生活する人がいることから、川崎市のボランティア団体が使い捨てカイロや湯たんぽを送ることになり、15日発送作業が行われました。
川崎市のボランティア団体、東欧支援協会では、ことしからウクライナに物資を送る活動を始めています。
15日、チャリティーイベントなどで募った寄付金で購入した使い捨てカイロ300個や湯たんぽをお菓子や小型ライトとともに段ボール箱に詰めて国際郵便で発送しました。

発送した物資は3週間から1か月後にウクライナに到着し、市民に配られる予定だということです。