【専門家Q&A】 欧米利上げが来年の日本経済への「北風」に

記録的なインフレを退治するため、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会、それにイギリス、ヨーロッパの中央銀行が急ピッチで利上げを進め、金融引き締めを急いでいます。
急速な利上げは景気にブレーキをかけるもの。
来年の世界経済、日本経済はどうなるのか、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストに聞きました。

Q.金融引き締めの影響どう見るか

A. 来年前半のアメリカ、ヨーロッパ経済は明確にスローダウンしていく。エネルギー価格の上昇が、電気代、石油製品と次々に波及していき、物価上昇のすそ野が非常に広くなっている。なかなか上昇を抑えにくくなっている状況だ。だから、アメリカ、ヨーロッパの中央銀行は厳しい利上げを余儀なくされている。たとえばFRBは、来年にあと0.75%利上げして、そこで打ちどめになるとみられている。そして来年いっぱい、極めて高い金利水準が続くかもしれない。そういう意味では、来年2023年も引き締めの年だ。世界経済はかなり減速が目立ってくることになるだろう。景気後退の懸念もある。

Q.日本経済にはどのような波及が

A.2023年の日本には、海外経済の「北風」が吹きつけることになる。今は、日本からアメリカ・ヨーロッパへの輸出は比較的堅調だ。だが、来年前半にかけては、輸出もだんだんと減っていく可能性がある。海外の売り上げが減ることで、日本企業の収益悪化が懸念される。

Q.「北風」をしのぐために日本経済に求められるのは

A. 企業収益が減ったとしても、賃上げによって個人消費が回っていけば、北風を何とか乗り切っていく可能性はあるのではないか。今は企業の収益は堅調だが、それだけでは、日本経済の耐久力は強まらない。2023年の景気は、今ある企業の手厚い収益が、家計部門に回るかどうかにかかっている。春の賃上げ春闘によって高い賃上げが実現して、それが家計に流れ込み消費するようになる。そういう循環的な流れが強まるかどうかが、来年の注目点。企業が家計に分配をきちんとするかどうか。これが「北風」に対する耐久力になると思う。