【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(15日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる15日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ世論調査 ロシア支配地域すべて奪還が「勝利」85%

ウクライナの調査機関「レーティング」が11月下旬にウクライナで暮らす18歳以上の1000人を対象に行った世論調査によりますと、ロシアが一方的に併合した南部のクリミアや、東部のドネツク州やルハンシク州などでロシアが支配している地域、すべてを奪還することが「勝利」だと考えている人が85%に上りました。これはことし3月の74%から11ポイント増えています。また、軍事侵攻を止めるためロシアと和平条約を結ぶべきだと答えた人は8%にとどまっています。

調査機関のミシフ副代表は14日、NHKの取材に対し「ロシア軍がキーウ近郊や南部のヘルソンなど一時、支配していた地域で行った残虐な行為が、人々の意識を変えロシアへの強い拒否感が生まれた」などと指摘しました。

さらに、11月のヘルソンの奪還や欧米からの兵器の支援でウクライナがロシアに勝てると思うようになっているとした上で「冬に電気や暖房がなければ厳しい生活になることは理解している。しかし、抗議活動や不満はみられない。9割の人は勝利を求めている」と述べ、多くの人がロシアから領土を奪還することを願っていると分析しています。

米 ウクライナに「パトリオット」供与で最終調整

アメリカのCNNテレビなど複数のメディアは、アメリカの政府当局者の話としてバイデン政権がウクライナの防空能力の強化に向けて迎撃ミサイル「パトリオット」を供与することを早ければ今週中にも発表すると伝えました。

「パトリオット」は弾道ミサイルや巡航ミサイル、それに航空機などの迎撃に使われる高性能なミサイルシステムで、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は14日、記者団に対し、供与について具体的な言及は避けたものの、「ウクライナにとって防空能力は緊急に必要なものであり、われわれも優先している」と述べました。

CNNなどによりますと「パトリオット」の供与が決まれば、ドイツにあるアメリカ軍の基地でウクライナ軍が使い方の訓練を受けるということです。アメリカはこれまでにも防空ミサイルシステム「ナサムス」や移動式の防空システムなどをウクライナへ相次いで供与しています。

米バイデン大統領「アフリカの未来に強く関与」関係強化を強調

アメリカのバイデン大統領はアフリカ各国の首脳との会議で「アメリカはアフリカの未来に強く関与していく」と演説し、中国やロシアがアフリカへの影響力を拡大させる中、貿易や投資などを通じて関係を強化していく考えを強調しました。

アメリカの首都ワシントンで行われているこの会議には、アフリカの50近い国の首脳らが出席しています。

バイデン大統領は14日、演説の中で「アフリカが成功すれば、アメリカが成功する」などと述べ、質の高いインフラへの投資や貿易の促進などを通じて関与を強めていく考えを強調しました。

また、バイデン大統領は「アフリカの経済成長には、よい統治が必要だ」と述べ、民主的な政治体制を後押しする姿勢を示しました。

アフリカでは、中国やロシアがクーデターが起きた国などでも巨額の融資や軍事支援をしているケースが見られ、民主主義の後退につながっているとの指摘も出ていて、アメリカとしては異なるアプローチで関与していくとした形です。

ウクライナ視察の国連事務次長「電力の確保が最優先事項だ」

国連で人道問題を担当するグリフィス事務次長は今月12日から4日間の日程でウクライナを訪れていて、南部ヘルソン州とミコライウ州を視察し、住民や市の関係者から聞き取りを行いました。

首都キーウで14日、NHKの取材に応じたグリフィス事務次長は「電力がなければ水も手に入らず、病院も機能せず、暖房もない。電力の確保を最優先事項として電線を修理し、発電機を提供する」と述べ、電力の安定供給に向けた支援に力を入れる考えを示しました。

その上でエネルギー関連施設への攻撃が続いていることについて「国際法では民間のインフラ施設などへの攻撃は禁じられている。私たちはいつも、どちらの側からもそのような攻撃があってはならないと繰り返している」と述べ、攻撃の即時停止を求めました。
そして「私はこれまで40年にわたって世界中の紛争地を見てきたが、この戦争は今までに見たこともないほど非常に深刻だ。ウクライナが再建され世界が再び1つになるためにもこの戦争はできるだけ早く終わらせる必要がある」と訴えました。

その上で日本が来年、G7=主要7か国の議長国を務めるとともに安全保障理事会の非常任理事国になることに触れ「日本は非常に特別な立場にある。来年には変化が起こり、戦争が終結することを願っている」と述べ、指導力を発揮することに期待を示しました。

ゼレンスキー大統領「テロリストがイラン製無人機で攻撃」

ウクライナの首都キーウでは14日早朝、中心部で爆発があり、ゼレンスキー大統領はSNSで公開した動画で「テロリストはけさ13機のイラン製の無人機で攻撃を始めた」と述べ、ロシア軍がイラン製の無人機で攻撃したという見方を示しました。

いずれも撃墜されたということですが、市の当局は撃墜した際の残骸が落下するなどして、市内のあわせて5つの建物が被害を受けたとしています。

一方、ゼレンスキー大統領は「前線に平穏はない。占領者たちは目の前のすべてを破壊し、街を廃虚にしようとしている」と述べて東部のドンバス地域などで激しい攻撃が続いているという認識を示しました。

ウクライナでは、ロシア軍によるインフラ施設への攻撃で深刻な電力不足が続いています。

ヘルソン 庁舎が砲撃で損傷 エネルギー関連施設の復旧も進まず

ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官によりますと、ウクライナ軍が先月奪還した南部の要衝ヘルソンで14日、中心部にある州政府の庁舎がロシア軍の砲撃を受け一部が損傷したということです。

けが人はいなかったということですが、ロシア軍はヘルソンを含むドニプロ川の西岸地域から撤退したあとも対岸から砲撃を続けていて、ヘルソン州の知事は相次ぐ砲撃でエネルギー関連施設の復旧が進まず、ヘルソン市内の一部地域で暖房を供給するシステムが止まったことをSNSで明らかにしました。

ロシア報道官 軍事侵攻続ける構え崩さず

ロシア大統領府のペスコフ報道官は14日、クリスマスや新年の時期に停戦する可能性を検討しているか記者団に問われると「誰からもそうした提案を受けていないし議題にもなっていない」と否定し、プーチン政権としてあくまで軍事侵攻を続けていく構えを崩していません。

ウクライナのすべての原発にIAEA専門家常駐で合意

IAEA=国際原子力機関は13日に発表した声明で、グロッシ事務局長とウクライナのシュミハリ首相が会談し、ウクライナ国内のすべての原子力発電所にIAEAの専門家を常駐させることで合意したと明らかにしました。

グロッシ事務局長は「真冬のウクライナがかつてない規模のエネルギーインフラの問題に直面している中で、今回の合意は極めて重要だ」としています。

ロシア国際政治学者「ロシアの存亡にも関わる重大な賭け」

ロシアを代表する国際政治学者のドミトリー・トレーニン氏がNHKのインタビューに応じ、欧米との関係について「完全に崩壊した」と述べ、なかでもアメリカについては「戦闘に直接参加していないがロシア兵は、アメリカの砲弾やミサイルで死亡している。これは、ロシアとアメリカの代理戦争だ」と述べました。

そのアメリカが主導するNATO=北大西洋条約機構との対立をめぐってトレーニン氏は「加盟国は、冷戦時代よりも敵対的な立場をとっている。激化する危険性はある」と述べ、ロシアとNATO加盟国が直接、軍事衝突する危険性は排除できないという見方を示しました。

そして「いま起きていることは第1次世界大戦に匹敵する戦争だ。仮にロシアがこの戦争で負けるとしたら私たちがいま見ているロシアは存在しなくなるかもしれない。敗北すればすべてが失われる。私たちは、これがロシアという国家の存在をかけた戦いであることを理解しなければならない」と述べ、プーチン政権は、理念や歴史を含むロシアの存亡にも関わる重大な賭けに出ているという見方を明らかにしました。