
防衛費増額 財源どこから?増税策は?詳しく解説
防衛費増額の財源を賄うための増税策をめぐり、自民党税制調査会は党の所属議員が広く参加する形での議論を始めました。
増税に理解を示す意見の一方「復興特別所得税」の活用は慎重に対応すべきだという指摘が相次ぎました。
税制調査会で何が検討されているのか、後段では担当記者が詳しく解説します。
岸田首相が協力を要請

岸田総理大臣は13日朝、自民党の役員会で「いま議論しているのは新たな脅威に対し、防衛能力を抜本強化し、日本人の暮らしと命を守り続けるという話だ。責任ある財源を考え、今を生きる国民がみずからの責任としてしっかりその重みを背負って対応すべきものだ」と述べ、改めて、増税策の検討への協力を要請しました。
1兆円程度が不足
防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は5年後の2027年度に防衛費と関連する経費を合わせてGDP=国内総生産の2%に達する予算措置を講じるよう指示しています。今年度のGDPの見通しをもとに計算すると、GDPの2%は11兆円規模になる見通しです。
防衛力を安定的に維持するためには、毎年度およそ4兆円の追加の財源が必要だとしていて、このうち、およそ4分の3は歳出改革や、年度内に使われなかった「剰余金」の活用、それに国有資産の売却など、税金以外の収入を活用する「防衛力強化資金」の創設などで賄うとしています。
防衛力を安定的に維持するためには、毎年度およそ4兆円の追加の財源が必要だとしていて、このうち、およそ4分の3は歳出改革や、年度内に使われなかった「剰余金」の活用、それに国有資産の売却など、税金以外の収入を活用する「防衛力強化資金」の創設などで賄うとしています。

しかし、歳出削減などを行っても、残りの4分の1にあたる1兆円程度については財源が不足すると試算されていて、岸田総理大臣は「残りのおよそ4分の1の1兆円強は国民の税制で協力をお願いしなければならない」などと述べています。
1兆円分の財源どうする?
この1兆円程度の不足をどう賄うのか。東日本大震災からの復興予算にあてる「復興特別所得税」の徴収期間を20年程度延長する案を、自民党税制調査会の幹部が検討していることがわかりました。
検討されている増税策の案では、3つの税目を組み合わせて財源を確保するとしていて、軸となる法人税は納税額に一律に5%程度を上乗せし、7000億円から8000億円を確保するとしています。一方で中小企業の負担を軽減するため納税額のうち170万円は上乗せの対象から外すことを検討しています。
また、たばこ税を引き上げ2000億円程度を確保する方針です。
さらに東日本大震災からの復興予算にあてるため、2037年まで時限的に所得税に上乗せされる「復興特別所得税」から2000億円程度を活用するとしています。
検討されている増税策の案では、3つの税目を組み合わせて財源を確保するとしていて、軸となる法人税は納税額に一律に5%程度を上乗せし、7000億円から8000億円を確保するとしています。一方で中小企業の負担を軽減するため納税額のうち170万円は上乗せの対象から外すことを検討しています。
また、たばこ税を引き上げ2000億円程度を確保する方針です。
さらに東日本大震災からの復興予算にあてるため、2037年まで時限的に所得税に上乗せされる「復興特別所得税」から2000億円程度を活用するとしています。

そのうえで活用によって復興予算の総額が減らないよう「復興特別所得税」の徴収期間を2050年代まで20年程度延長し、2050年代以降は防衛費への活用分だけ上乗せを続ける案となっています。
増税案めぐり議論始まる

自民党税制調査会は党の所属議員が広く参加する形での議論を13日から始めました。
増税に理解を示す意見の一方、「復興特別所得税」の活用は慎重に対応すべきだという指摘が相次ぎました。
増税に理解を示す意見の一方、「復興特別所得税」の活用は慎重に対応すべきだという指摘が相次ぎました。
自民党税制調査会は、13日午前、幹部らおよそ30人が出席する会合を開き、2027年度以降、1兆円余りの財源が不足するとして、岸田総理大臣が与党の税制調査会に増税を検討するよう指示したことを踏まえ、意見が交わされました。
出席者からは、「国を守る気概を国民で共有するため税で対応すべきだ」と増税に理解を示す意見の一方、「大事な議論であり、もっと時間をかけて慎重に行うべきだ」と拙速な議論を控えるよう求める声も出されました。
また、税制調査会の幹部が検討している3つの税目を組み合わせる増税案のうち、東日本大震災からの復興予算にあてる「復興特別所得税」を活用することについて、「復興に対する間違ったメッセージになりかねない」などと、慎重に対応すべきだという指摘が相次ぎました。
会合のあと、宮沢税制調査会長は「増税の税目や施行期日など、岸田総理大臣から指示された結論を出さなければならない」と強調し、14日に、増税案のたたき台を示して議論する考えを明らかにしました。
出席者からは、「国を守る気概を国民で共有するため税で対応すべきだ」と増税に理解を示す意見の一方、「大事な議論であり、もっと時間をかけて慎重に行うべきだ」と拙速な議論を控えるよう求める声も出されました。
また、税制調査会の幹部が検討している3つの税目を組み合わせる増税案のうち、東日本大震災からの復興予算にあてる「復興特別所得税」を活用することについて、「復興に対する間違ったメッセージになりかねない」などと、慎重に対応すべきだという指摘が相次ぎました。
会合のあと、宮沢税制調査会長は「増税の税目や施行期日など、岸田総理大臣から指示された結論を出さなければならない」と強調し、14日に、増税案のたたき台を示して議論する考えを明らかにしました。
西田昌司 参院議員「間違ったメッセージになる」

自民党安倍派の西田昌司 参議院議員は、税制調査会の会合のあと、記者団に対し「復興特別所得税を防衛費に充てる話はありえず、間違ったメッセージになる。所得税に比べて法人税は圧倒的に少ないので、このゆがみを正すための議論を行っていけば、必然的に答えは出てくるのではないか」と述べ法人税の増税などを中心に財源を確保すべきとの認識を示しました。
片山さつき 元地方創生担当相「新しい“防衛税”と同じ」

自民党無派閥の片山さつき 元地方創生担当大臣は、記者団に対し「国民は防衛力増加に賛成しているが、急に増税一辺倒になったから生活が苦しい人は、法人も個人も反対するのは当たり前だ。『復興特別所得税』の期間を延ばすなら、新しい『防衛税』をとるのと同じになり、そう言えばいい。3年くらいはつなぎの国債で対応するしかない」と述べました。
立憲 泉代表「転用納得できず 本当におかしい」

立憲民主党の泉代表は、党の常任幹事会で「今一番怒っているのは東日本大震災の復興に一生懸命歩んでいる東北各県の皆さんではないか。『復興特別所得税』がいつの間にか防衛費に転用されるのは納得できず、本当におかしい」と述べました。
財源に「復興特別所得税」なぜ?担当記者は

(政治部の瀬上記者の解説)
政府 与党内では当初、所得税も検討の対象にすべきだという意見が出ていましたが、岸田総理大臣が「個人の所得税負担が増加する措置は取らない」という方針を示し、所得税そのものの増税は対象外となりました。
このため復興財源として、所得税に上乗せして徴収されている「復興特別所得税」の一部を活用する形であれば、新たな「負担の増加」とは受け止められないと判断したものとみられます。
ただ検討されている案では、2037年で終了予定だった所得税の上乗せ措置を20年程度延長し、その後も防衛費に活用する分の上乗せを続けるとしています。
与党内からは復興軽視のメッセージになりかねないとの懸念も出ているほか、岸田総理大臣の方針との整合性も問われることが予想されます。
政府 与党内では当初、所得税も検討の対象にすべきだという意見が出ていましたが、岸田総理大臣が「個人の所得税負担が増加する措置は取らない」という方針を示し、所得税そのものの増税は対象外となりました。
このため復興財源として、所得税に上乗せして徴収されている「復興特別所得税」の一部を活用する形であれば、新たな「負担の増加」とは受け止められないと判断したものとみられます。
ただ検討されている案では、2037年で終了予定だった所得税の上乗せ措置を20年程度延長し、その後も防衛費に活用する分の上乗せを続けるとしています。
与党内からは復興軽視のメッセージになりかねないとの懸念も出ているほか、岸田総理大臣の方針との整合性も問われることが予想されます。
根強い反対意見 今後の見通しは?
岸田総理大臣は周辺に「閣僚にも自分の意見を言ってもらうことはかまわないが、方針が決まったらそれに従ってもらう」と話していて、年内に増税の道筋を示すという考えに変わりがないことを強調しています。
自民党の税制調査会の幹部は、岸田総理大臣の指示を踏まえて今週中に増税の税目や実施時期の議論を進める方針ですが、党内には「あと数日で具体案まで決めるのは拙速だ」という意見もあり、どこまで意見集約を図れるか政権の求心力が問われることになりそうです。
自民党の税制調査会の幹部は、岸田総理大臣の指示を踏まえて今週中に増税の税目や実施時期の議論を進める方針ですが、党内には「あと数日で具体案まで決めるのは拙速だ」という意見もあり、どこまで意見集約を図れるか政権の求心力が問われることになりそうです。