【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(8日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる8日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

防衛研究所研究員「手札が限られる中での脅し」

ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員は8日、NHKのインタビューに応じ「東部のハルキウや南部のヘルソン市の奪還などに続くインパクトがある。プーチン政権にとっては衝撃だったと考えられ、戦争が長引くことに、ロシア国内の不満が高まる可能性がある」と指摘しました。

またプーチン大統領が「核戦争の脅威が高まっている」などと発言したことについては「10月にロシアとクリミアをつなぐ橋で爆発があった時、ロシアは『報復攻撃』したが、すでにミサイルなど精密誘導兵器はかなり消費し、使える手札が限られる中で、これまでに何回も使ってきた核の脅しを、また使っている。脅しによって欧米の世論を動かし、有利な停戦にもっていきたいねらいだ」と述べました。

そのうえで今後の見通しについては「プーチン大統領やその周辺は、まだアメリカとの窓口を維持しているものの、今回ロシア国内が攻撃されたことで、今後は強硬派が影響力を強める可能性がある。その場合、ロシア側の動きが読みづらくなる」と述べました。

そして、ロシア国内の強硬派の動きや、アメリカの反応、それにウクライナ軍のロシア内陸部への攻撃が続くかどうかが今後の焦点になるという考えを示しました。

キーウ近郊の仮設住宅 断続的に停電 “氷点下の寒さ”

ウクライナでは、ロシア軍のインフラ攻撃で深刻な電力不足が続き、キーウ近郊のイルピンに設置された仮設住宅では、停電が断続的に起きています。

イルピンではことし3月、ロシア軍の激しい攻撃で多くの住宅が破壊され、300人以上が仮設住宅での暮らしを強いられています。

仮設住宅では7日、NHKの取材班が訪れた時にも、停電が発生し、氷点下の寒さのなか、暖房が切れて急速に室温が下がったほか、電気コンロや電子レンジなども利用できなくなりました。

80歳の女性はときおりせき込みながら「湿気と寒さがひどい。毛布にくるまって横になるしかない」と話していました。

また、室温が下がることで、「結露」が生じ、ベッドや家具の裏に水滴がつくことに、住民の多くが悩まされているということで、40代の男性は「停電が頻繁に起きて、すべてがだめになってしまう」と話していました。
医師を目指しているという18歳の学生は、停電のためオンラインの授業が受けられず「先生とも話せないしテストも受けられない。何もできない」と話していました。

国営の電力会社は7日、SNSにメッセージを投稿し、ロシアのミサイル攻撃で破壊されたインフラの復旧を急ぐとする一方、断続的な停電は今後も続くという見通しを示しています。

米 戦争研究所「プーチン政権が停戦協議に向かう可能性は低い」

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシアのプーチン大統領が核戦争の脅威が高まっているという認識を示したことについて、「欧米のウクライナ支援を弱体化させようという情報戦の一環だ」という見方を示しました。

さらに、プーチン大統領がウクライナ南部に面するアゾフ海を例に挙げて「ピョートル大帝もアゾフ海に進出しようと戦った」と、みずからを帝政ロシア時代の皇帝と重ね合わせるような発言について、「戦争研究所」は「プーチン氏の現在の目標が帝国主義的なものだと明確に位置づけられる発言だ」と指摘しています。

そして「攻撃的な作戦を一時的にでも停止することによって、国内の勢いを失うリスクを冒すつもりはないようだ」として、プーチン政権が停戦協議に向かう可能性は低いと分析しています。

EU 無人機のエンジンのロシアへの輸出を禁止に

EU=ヨーロッパ連合の執行機関ヨーロッパ委員会は、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する新たな制裁の案を7日、明らかにしました。

制裁案では、ロシア軍が攻撃に無人機を使わないよう、無人機のエンジンのロシアへの輸出を禁止するとしています。

またロシアの友好国のイランも、ロシアにエンジンを供与する可能性があるため、同様の措置を取るとしています。

この制裁は加盟国の承認を得たうえで発動されます。

米 NSC元高官 “プーチン氏は心理戦を仕掛けている”

ロシアのプーチン大統領がたびたび核兵器に言及することについて、アメリカのNSC=国家安全保障会議の元高官で、世界的に著名なロシア研究者のフィオナ・ヒル氏は7日、ニューヨーク大学で行った講演の中で「プーチン氏は核の脅威で人々を怖がらせることの心理的な価値を理解している」と述べ、欧米に対し心理戦を仕掛けているとの見方を示しました。

そのうえで「欧米の人々に対し、ウクライナでの戦争が核戦争や第3次世界大戦につながるという意識を与えなければ、欧米がウクライナへの支援を撤回する可能性は一段と低くなる」と述べ、核の脅威という心理的な圧力を強めることで、欧米による支援態勢を弱体化させるのがプーチン氏のねらいだとの分析を示しました。

米タイム誌「ことしの人」にゼレンスキー大統領

アメリカの雑誌「タイム」は7日、世界に最も影響を与えた「ことしの人」に、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナのゼレンスキー大統領と「ウクライナの精神」を選びました。

ゼレンスキー大統領を選んだ理由についてタイム誌は「2月24日にロシアが攻撃を始めたあともウクライナにとどまって支援を集め続け、世界中に行動の波を引き起こした」と指摘し、スピーチなどを通じて国際社会に結束を呼びかけ世界中がウクライナを支援するようになったとしています。

また「ウクライナの精神」を選んだ理由については、ウクライナに思いを寄せ手を差し伸べてきた多くの人によって体現されているとし、難民に食事を無料で提供したウクライナのシェフや、ウクライナに何度も足を運び攻撃でけがをした人の治療法を現地の医者に教え続けたイギリスの外科医などの活躍を紹介しています。

プーチン大統領「核戦争の脅威が高まっている」欧米を批判

プーチン大統領は7日、大統領の諮問機関の会議を開き、ウクライナへの軍事侵攻について「長いプロセスだ」と述べて一層長期化する可能性もあるとの見方を示しました。

そして、「核戦争の脅威が高まっている」と述べてアメリカの核兵器がヨーロッパに大量にあると主張し欧米を批判した一方、「われわれの核兵器は争いを拡大させるためではなく抑止力のためだ」と述べ、ロシアが保有する核兵器はあくまでも防衛のためのものだと強調しました。

ロシア国内での爆発「非常に成功し効果的だった」

ロシア国内では5日、中部と南部の空軍基地で爆発が相次いだほか、6日にはウクライナと国境を接するロシア西部の飛行場に近い石油施設が無人機による攻撃を受けたと、地元の州知事がSNSで明らかにしています。

ロシア国防省は空軍基地での爆発についてウクライナ側が無人機を使って攻撃を仕掛けたとしています。

ウクライナ政府はこれまでのところ公式な発表を出していませんが、アメリカの有力紙ワシントン・ポストは6日、ウクライナ政府の高官が、3つの攻撃はすべてウクライナの無人機によるものだと認めたうえで「非常に成功し効果的だった」とコメントしたと伝えています。

ロシアのプーチン大統領は6日、安全保障会議を招集するなど事態を深刻に受け止めているものとみられます。

ドネツク州 砲撃で6人死亡

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアの国防省は7日、ウクライナ東部や南部にミサイルなどで攻撃を行ったと発表しました。

ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで東部ドネツク州の町が砲撃を受け、少なくとも6人が死亡し、5人がケガをしたと述べてロシアを非難しました。

ロシア国防省 “ウクライナ軍がソビエト時代の無人機で攻撃”

ロシア国防省は、5日にロシア南部と中部の空軍基地で起きた爆発ではウクライナ軍が「ソビエト時代の無人機」で攻撃を仕掛けたと主張しています。

これについてロシアの新聞「イズベスチヤ」は7日、ウクライナ軍が保有するソビエト時代の無人機の中で今回の攻撃が可能なのは航続距離が1000キロに及ぶ「ツポレフ141」だとする見方を伝えました。

当初は偵察などに使うため製造された無人機で、最高時速は1000キロほどと、警戒の厳しい国境地帯を高速で通過することが可能だとしています。

そのうえで、ウクライナ軍が制御装置などに改良を加え、地上攻撃のために転用したとみられるとしています。

ロシア南部クルスク州の知事はことし6月、SNSに、撃墜されたウクライナ軍のツポレフ141だとする写真を投稿したほか、ロシアの国営通信社はことし3月、8年前にロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアで同型機が墜落したと伝えています。

プーチン大統領 追加の予備役動員 計画なし強調

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアはことし10月、30万人の予備役の動員を完了したことを発表しましたが、プーチン大統領は7日に開かれた会議で参加者からさらなる動員があるかを問われ、軍事侵攻を行っている地域に入っているのは半数にあたる15万人で「あとの半数は部隊に入っておらず、まだ訓練施設にいる」と述べました。

そして「こうした状況では追加の動員について話す意味がない」と述べ、現時点で追加の動員を行う計画はないと重ねて強調しました。

ロシアでは今月5日に独立系メディアが「来年1月、公式な発表をしないまま動員の新たな波が始まる」と伝えるなど追加の動員をめぐる報道や臆測が出ています。

またプーチン大統領は兵士の脱走について「戦線を離れるということは起きたが、少なくなってきている。大多数は自発的に任務に戻っている」と述べ、脱走が起きていることを認めながらも、状況が改善しているため問題視しないという考えを示しました。