【動画解説】“ロシアの戦争犯罪を裁く”「特別法廷」設置とは

「ロシアの戦争犯罪を裁くため、特別法廷を設けるべきだ」

その提案がいま注目されています。提唱したのはEUのフォンデアライエン委員長です。

フォンデアライエン委員長は「ロシアは主権国家を侵略した罪を含む恐ろしい戦争犯罪の代償を払わなければならない。ロシアの侵略犯罪を捜査し訴追する国連支援の特別裁判所の創設を提案する」としています。

ロシアの戦争犯罪をめぐっては、ICC=国際刑事裁判所が捜査を進めています。

ただ、ロシアはICCの締約国ではなく、侵略犯罪の罪でプーチン大統領ら政権幹部の責任を問うのは難しいという見方が根強くなっています。

このため、ウクライナ政府がICCの捜査に加えて特別法廷の設置も国際社会に求めていて、今回EUのフォンデアライエン委員長が公式にその提案を後押しした形です。

ゼレンスキー大統領の夫人、オレーナ氏も訪問先のイギリスの議会で演説し、そこで強調したのがこの特別法廷の設置でした。

停戦交渉は「特別法廷」設置の機運の高まりしだいか

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア側の停戦交渉の再開の条件として、
▽領土の回復
▽国連憲章の尊重
▽戦争犯罪の賠償
▽戦争犯罪者の処罰
▽ロシアが侵攻しない保証
の5つを挙げました。

特別法廷の設置は戦争犯罪者の処罰としてウクライナ政府が求めているもので、ウクライナ政府としてはロシア側と最終的に交渉する可能性も視野に各国に特別法廷設置に向けて働きかけを進めています。

今後の交渉は、この特別法廷設置の機運が国際社会の中で高まるかどうかです。

フランスやオランダなどは特別法廷設置を支持する立場と報じられているものの、特別法廷設置はロシアを過度に刺激することになって、むしろ和平交渉の道を閉ざすことになりかねないと欧米の中でも慎重な立場の国も存在しています。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は1日、早速「特別法廷の設置は合法性に欠け、私たちは受け入れない」と発言し、欧米側をけん制しています。

ウクライナ政府はG7にも特別法廷の設置に向けた協力を求めていて、来年G7の議長国となる日本の手腕が問われるかもしれません。