岸田首相 “防衛費増額の財源 コロナ対策の積立金も検討”

衆議院予算委員会で岸田総理大臣は、防衛費増額の財源について、一時的な措置として新型コロナの収束後、コロナ対策の積立金を活用することも検討する一方、安定的な財源の確保に向けた議論を進める考えを示しました。また、自衛隊と海上保安庁の連携を強化するため、有事の際の「統制要領」の作成に着手したと明らかにしました。

衆議院予算委員会は28日、今年度の第2次補正予算案の基本的質疑の2日目が行われ、午後は、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組などが質問を行いました。

日本維新の会の馬場代表は、防衛力の強化に向けて、政府が年末までに改定する安全保障関連の3文書について「岸田総理大臣は今の国会の代表質問で『閣議決定前の協議について、党首間でのやり取りも含めて検討する』と、答弁した。ぼちぼち協議を始める時期だと思うが、いつやるのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「国会の審議の中で、さまざまな形で政府の取り組みや考え方は説明させていただいている。そのうえで党首間のやり取りも含めた議論は、ぜひできるだけ近いうちに調整をさせたい」と述べました。
国民民主党の玉木代表は「われわれはかなり踏み込んだ安全保障戦略をまもなくまとめる。閣議決定する前に、ぜひ、国民民主党も協議の場を設けてもらい、考え方を説明する機会をいただきたい」と述べました。

これに対し、岸田総理大臣は「公党間のやり取りについては、日本維新の会の馬場代表からも提案をいただいている。ぜひ御党ともできるだけ、近いうちにこうした公党間のやり取りを調整させてほしい」と述べました。

そして、岸田総理大臣は防衛費増額の財源について「経済成長の成果によって税収が増えたとかコロナ対策の積立金を活用するということを、仮に一時的に考えたとしても防衛費の議論においては、国民の命や暮らしを守るためにしっかりとした防衛力を確保しなければいけない。防衛費を安定維持し持続させていくためには、どうあるべきなのか議論を進めていきたい」と述べました。

また、有事の際の海上自衛隊と海上保安庁の連携について「武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領は今、政府内において、すでに作成に向けて作業に着手している。海上保安庁と海上自衛隊の連携の強化など、長年にわたり積み残された課題について、政府の考え方を明らかにしていきたい」と述べました。

さらに、サイバー攻撃に対して先手を打って対抗措置をとる「積極的サイバー防御」をめぐり「新しい国家安全保障戦略の策定などに努め、その中で対応を整理し、それに基づいて具体的な対応を用意していく。担当大臣を置くべきだという指摘についても、政府としてどうあるべきか検討したい」と述べました。
共産党の田村貴昭氏は、旧統一教会の関連団体がODA=政府開発援助を受けていた問題について「世界平和女性連合がアフリカのセネガルで運営する職業訓練校の新校舎建設に955万円余りの無償資金協力を行っていた。当時の外務大臣として、反社会的団体に国民の血税である資金を供与した責任をどう認識しているのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「支援を行う際には、少なくとも旧統一協会と関係があることは全く把握できていなかった。違法な活動などが行われていないことは確認したが、少なくとも問題があるような行動があれば、あるいは信用を利用するような事態があれば、政府として対応は考えていかなければならない」と述べました。
一方、れいわ新選組の櫛渕副幹事長は「消費税が増税されるたびに実質賃金が切り下がっている。消費税に苦しむ国民が増えている。消費税減税法案をやると、決断いただけないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「少子化が進む中で、ぜひ社会保障費を広く負担していこうということを考えなければならない。結果として消費税は維持する必要があると思っており、消費税減税は考えていない」と述べました。

自衛隊と海上保安庁の統制要領とは

自衛隊は、法律に基づいて、日本の防衛が主な任務と規定されていて、他国の軍隊に対応する役割を担っています。

一方で海上保安庁の任務は、治安の確保や領海の警備、海難救助などで、自衛隊の任務とは一線を画しています。

海上保安庁法第25条では「海上保安庁や職員が軍隊として組織され、訓練され、軍隊の機能を営むことを認めるものと解釈してはならない」と定められています。

ただ、自衛隊法では、日本に対する武力攻撃が起きて自衛隊に防衛出動などが出された場合、総理大臣は海上保安庁を防衛大臣の統制下に入れることができると定められています。

これについて、海上保安庁の石井昌平長官は、今月16日の記者会見で「海上保安庁が実施する任務や権限に何らかの変更を加えるものではない。海上保安庁法に規定された所掌事務の範囲内で、非軍事的な性格を保ちつつ、海上における漁船の保護や船舶の救難など人命・財産の保護などの業務を実施することになる」と述べています。

統制要領の作成に向けた作業では、日本に対する武力攻撃などが起きた場合に、法律に定められた範囲の中で自衛隊と海上保安庁がどのように役割分担をするのかなどが議論されるとみられます。