みとりケアの高齢者は面会可能に コロナ禍の制限 模索する動き

新型コロナウイルスの感染者の増加傾向が続く中、多くの医療機関や高齢者施設では感染防止を徹底するため面会の制限が続いています。一方、コロナ禍も3年近くに及ぶ中で、人生最後のみとりが近づいた高齢者に限っては対面での面会ができるようにするなど、施設ごとに面会制限の在り方を模索する動きも出ています。

さいたま市の特別養護老人ホーム「尚和園」では新型コロナの感染拡大後、入居する高齢者と家族との面会を一時は全面的に禁止し、その後もオンラインやガラス越しでの面会に限るなど制限を続けてきました。

しかし、ことし1月から、人生最後のみとりのケアに入った高齢者に限っては家族と対面での面会ができるよう対応を見直しました。

面会は入居するほかの高齢者と接触しないよう施設の入り口近くの部屋で20分間に限って行われ、家族は事前に予約したうえで施設を訪れ手の消毒と検温を行ったうえで部屋に入るなど対策が徹底されています。

25日はさいたま市に住む加藤和子さんが89歳の母に会いに訪れました。

加藤さんの母は脳梗塞のあと体力が落ちて食事が一時難しい状況になり、今は「みとり」のケアに入っています。

加藤さんはこれまではオンラインでの面会しかできなかったため母親が画面越しでのやり取りになった理由や状況を理解することが難しいと思われたことや高齢で耳が聞こえにくいことから面会の利用を避けていたということです。

しかし、この日は直接手を握ったり体をさすったりすることができたほか、声が小さい母親に耳を近づけてことばを聞き取り、話す時も耳元で話すことで会話のやり取りができ、笑ったり恥ずかしがったりなど、表情の変化も見ることができました。

加藤さんは「最初はコロナの中で、母の手を握ってよいものか迷いましたが、握り返す強さできょうは元気だなと感じることができました。触れ合って通じ合えることがいちばん大事だと思うので、今後も続けてほしいです」と話していました。
また、野崎直良施設長は、「コロナを心配しながらですが、せめて人生の最後、本人と家族が一緒に過ごす時間を作ることは大事だと思い、取り組みを始めました。社会的にコロナへの対応が変化している中で、私たちもできるかぎり面会や家族との交流の在り方を考え直していかないといけない時期だと思います」と話していました。