東京 杉並区の片平かずみさん(38)は4年前、34歳の時に第一子の長女を出産しました。
結婚後、10年ほど前から「妊活」に取り組み、32歳の時、本格的に不妊治療を受けるため、正社員として働いていた会社を休職しました。
高度な治療が必要と診察されていたことや自分の年齢を考慮し、夫の転勤にあわせて決断したといいます。
しかし、不妊治療や出産の費用はあわせて300万円にのぼり今後の生活のための貯蓄は大きく減ってしまいました。
さらに、復職後は通勤時間の事情で仕事と子育てを両立するため別の会社の契約社員に転職し、夫と合わせた収入が正社員のときと比べて大幅に減ることになりました。
片平さんは、第一子の教育費も考慮すると第二子は諦めざるを得ないと考えています。「2人産んで4人家族になったら楽しいだろうなという気持ちがある一方で、現実面を考えるといまは子育てや教育費にすごくお金がかかるので、1人目を産むことで金銭的にも苦労した分、2人目という気持ちにはなれない面もあります」

出生数過去最少 80万人割れか 私が2人目をあきらめたワケ
「子どもは2人ぐらい産んで4人家族になるんだろうなと、小さいころから漠然と考えていました。」
しかし、女性は2人目の妊娠と出産をあきらめました。理由は経済的な不安です。
「教育費とか、現実面を考えるとどうしても…」
25日の厚生労働省の発表では、ことし9月までに生まれた子どもの数は59万9000人余りと過去最少のペースです。
予測より早く進行する少子化、これからどうなるのでしょうか。
「もう1人産みたいけど…」諦めざるをえない女性は

ことしの出生数 過去最少のペースに

ことし1月から9月までに生まれた子どもの数は厚生労働省が25日発表した速報値で59万9000人余りと、去年の同じ時期より約3万人減少しています。
去年1年間の出生数は81万1622人で、12月までの3か月間も今のペースのままで推移すれば国が統計を取り始めた1899年以降で初めて80万人を下回る可能性があります。
大手シンクタンク「日本総合研究所」が今月上旬に公表した推計では、最終的なことしの出生数は約77万人で、80万人を下回る見通しとなっています。
80万人を下回れば、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した予測よりも8年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいることになります。
厚生労働省は少子化の進行について「結婚や妊娠を控えるなど長期化するコロナ禍の影響があったのではないか」としています。
去年1年間の出生数は81万1622人で、12月までの3か月間も今のペースのままで推移すれば国が統計を取り始めた1899年以降で初めて80万人を下回る可能性があります。
大手シンクタンク「日本総合研究所」が今月上旬に公表した推計では、最終的なことしの出生数は約77万人で、80万人を下回る見通しとなっています。
80万人を下回れば、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した予測よりも8年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいることになります。
厚生労働省は少子化の進行について「結婚や妊娠を控えるなど長期化するコロナ禍の影響があったのではないか」としています。
「出生数」これまでの推移は

出生数は統計を取り始めた1899年、明治32年は138万6981人でした。
その後は上昇傾向が続き、終戦後の「第1次ベビーブーム」(昭和22年~24年)にあたる1949年(昭和24年)には最多の269万6638人に上りました。
その後は減少傾向となりますが、1960年代から1970年代半ばごろにかけては一時、増加に転じ、「第2次ベビーブーム」(昭和47年~49年)を迎えました。
1973年(昭和48年)には209万1983人に上りますが、その後は再び減っていきました。
1989年(平成元年)は124万6802人で、1990年代は120万人前後で推移していましたが、2000年代に入るとさらに減少傾向となり、2016年(平成28年)には97万7242人と、初めて100万人を下回りました。
その後は上昇傾向が続き、終戦後の「第1次ベビーブーム」(昭和22年~24年)にあたる1949年(昭和24年)には最多の269万6638人に上りました。
その後は減少傾向となりますが、1960年代から1970年代半ばごろにかけては一時、増加に転じ、「第2次ベビーブーム」(昭和47年~49年)を迎えました。
1973年(昭和48年)には209万1983人に上りますが、その後は再び減っていきました。
1989年(平成元年)は124万6802人で、1990年代は120万人前後で推移していましたが、2000年代に入るとさらに減少傾向となり、2016年(平成28年)には97万7242人と、初めて100万人を下回りました。
結婚の件数「婚姻数」も減少傾向に

「婚姻数」も2000年代から減少傾向が続いています。
最近では、
▽2019年はいわゆる「令和婚」で前の年から増加し、59万9007組となりましたが、
▽2020年は52万5507組(前年比-7万3500組)、
▽2021年は50万1138組(前年比-2万4369組)と、戦後最も少なくなりました。
国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度程度行っている「出生動向基本調査」では、2021年の時点で「一生結婚するつもりがない」と回答した人が18歳から34歳までの世代で男女とも増加していることから、「日本総合研究所」は結婚の件数は今後も減少していくことが懸念されるとしています。
最近では、
▽2019年はいわゆる「令和婚」で前の年から増加し、59万9007組となりましたが、
▽2020年は52万5507組(前年比-7万3500組)、
▽2021年は50万1138組(前年比-2万4369組)と、戦後最も少なくなりました。
国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度程度行っている「出生動向基本調査」では、2021年の時点で「一生結婚するつもりがない」と回答した人が18歳から34歳までの世代で男女とも増加していることから、「日本総合研究所」は結婚の件数は今後も減少していくことが懸念されるとしています。
「夫婦の希望の子どもの数」も…

先ほどの「出生動向基本調査」では、「夫婦の希望の子どもの数」も調べています。
2021年の時点で2.25人で、2015年の調査より0.07人低下しています。
予定する子どもの数が希望の子どもの数を下回る夫婦に対して、希望の数の子どもを持たない理由について複数回答でたずねたところ「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という「経済的な理由」が52.6%と最も多くなりました。
次いで「高年齢で生むのはいやだから」が40.4%、「欲しいけれどもできないから」が23.9%などとなっています。
一方、「未婚者の希望の子どもの数」は2021年の時点で
▽男性が1.82人、▽女性が1.79人で前回の調査と比べて
▼男性は0.09人、▼女性は0.23人減少しています。
女性は1982年の調査開始以来、初めて2人を下回っています。
2021年の時点で2.25人で、2015年の調査より0.07人低下しています。
予定する子どもの数が希望の子どもの数を下回る夫婦に対して、希望の数の子どもを持たない理由について複数回答でたずねたところ「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という「経済的な理由」が52.6%と最も多くなりました。
次いで「高年齢で生むのはいやだから」が40.4%、「欲しいけれどもできないから」が23.9%などとなっています。
一方、「未婚者の希望の子どもの数」は2021年の時点で
▽男性が1.82人、▽女性が1.79人で前回の調査と比べて
▼男性は0.09人、▼女性は0.23人減少しています。
女性は1982年の調査開始以来、初めて2人を下回っています。
合計特殊出生率2.95 自治体の取り組みは

町をあげた少子化対策で、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」が倍増した自治体があります。
岡山県北東部の山あいに位置する人口5700人余りの奈義町は、2005年に1.41だった合計特殊出生率が、2019年には2.95にまで上昇しました。全国平均の1.36を大幅に上回っています。
岡山県北東部の山あいに位置する人口5700人余りの奈義町は、2005年に1.41だった合計特殊出生率が、2019年には2.95にまで上昇しました。全国平均の1.36を大幅に上回っています。

町は20年前の2002年から町の職員や議員定数を2割から3割程度削減して予算を捻出し、若者や子育て世代向けの施策を充実させてきました。
このうち、出産前後の経済的な支援として不妊治療を行う場合は助成金として年間で20万円が5年間支給されるほか出産祝い金として1人10万円が支給されます。
また子育て期間中も、子どもの医療費が高校卒業まで無料となるほか、小中学生の給食費が半額免除となります。
さらに、町外の高校に通うための通学費などとして高校生1人につき年間13万5000円が支給され子どもが高校を卒業するまで町内で暮らしてもらえるよう環境を整備しています。
このうち、出産前後の経済的な支援として不妊治療を行う場合は助成金として年間で20万円が5年間支給されるほか出産祝い金として1人10万円が支給されます。
また子育て期間中も、子どもの医療費が高校卒業まで無料となるほか、小中学生の給食費が半額免除となります。
さらに、町外の高校に通うための通学費などとして高校生1人につき年間13万5000円が支給され子どもが高校を卒業するまで町内で暮らしてもらえるよう環境を整備しています。

このほか、子育て支援のため幼稚園の統廃合で空いた園舎を利用した設置した「なぎチャイルドホーム」では、常勤する保育士などが育児の相談に応じるほか、地域のお年寄りが子どもを一時預かりするサービスを受けることができます。
さらに、子育てをしながら働きたい母親のための「しごとコンビニ事業」は、チラシの作成や農作業など地域の企業から寄せられるさまざまな仕事の依頼を紹介するサービスで現在はおよそ270人が登録しているということです。
さらに、子育てをしながら働きたい母親のための「しごとコンビニ事業」は、チラシの作成や農作業など地域の企業から寄せられるさまざまな仕事の依頼を紹介するサービスで現在はおよそ270人が登録しているということです。

奈義町情報企画課 森安栄次参事は「子育て支援に力を入れて20年が経過し、ようやく結果が出てきましたが結果が出るまでには時間がかかると感じました。子育て支援は町の中の大きな柱で、1丁目1番地なので今後も若い世代の声をしっかり聞いてサポートしていきたいです」と話しています。
専門家はどう見ている

人口問題や少子化問題に詳しい専門家2人に、今の状況と今後必要なことについて聞きました。
日本総合研究所 藤波匠上席主任研究員は「2015年の出生数は100万人を超えていた中、このままではわずか7年で20%以上減少してしまうことになる。少子化が進むと国内の社会保障の問題や経済成長などにも大きな影響があると考えられ、対策は喫緊の課題だ」と指摘しています。
そのうえで、「1990年代の出生数は120万人程度と比較的安定していた時期で、その年代の子どもたちが20代から30代となってちょうど結婚や出産の時期を迎えているので、今後の10年間は少子化対策に取り組む上で特に重要な期間になるのではないか」と指摘しています。
日本総合研究所 藤波匠上席主任研究員は「2015年の出生数は100万人を超えていた中、このままではわずか7年で20%以上減少してしまうことになる。少子化が進むと国内の社会保障の問題や経済成長などにも大きな影響があると考えられ、対策は喫緊の課題だ」と指摘しています。
そのうえで、「1990年代の出生数は120万人程度と比較的安定していた時期で、その年代の子どもたちが20代から30代となってちょうど結婚や出産の時期を迎えているので、今後の10年間は少子化対策に取り組む上で特に重要な期間になるのではないか」と指摘しています。

中京大学 松田茂樹教授は「国の経済や社会の維持が難しいレベルになってきており深刻に受け止める必要がある。さらに2020年からの出生数は明らかに減っていて、目に見える形でコロナ禍の影響も出ていると考えられる」と述べました。
そのうえで、「少子化の進行は『静かなる有事』とも言われ長期的にみると国の社会保障や豊かさ、国力を衰退させることになる。少子化対策には長い時間やお金もかかるかもしれないが、国民1人1人が必要性を理解し出生率を早期に回復軌道に乗せられるような対策が必要だ」と指摘しています。
そのうえで、「少子化の進行は『静かなる有事』とも言われ長期的にみると国の社会保障や豊かさ、国力を衰退させることになる。少子化対策には長い時間やお金もかかるかもしれないが、国民1人1人が必要性を理解し出生率を早期に回復軌道に乗せられるような対策が必要だ」と指摘しています。

冒頭でご紹介した片平かずみさんにも意見を聞いてみました。
Q子どもの数が減っていることについて。
(片平さん)
「正直社会の雰囲気からいって子育てや妊娠出産以外に娯楽がたくさん増えている中で、子どもを産むことだけがすべてじゃないんだいう風土になってきていることは悪いことではないと思います。
一方で、やはり私は子供を産んだことで自分自身もすごく成長させてもらっていますし、子どもは単純にかわいくて、かけがえのない存在なので、実りのある人生になったかなと感じています」
Q産みたい人が産める社会にするには?
「子どもが遊べる施設やさまざまな年代の方が一緒に集える場や環境がもっと増えていったり、子どもがいる社会がもっと身近になっていくと、もう少し若い人たちが『子どもが欲しいな』と自然に思えるような社会になるんじゃないかなと思います」
Q子どもの数が減っていることについて。
(片平さん)
「正直社会の雰囲気からいって子育てや妊娠出産以外に娯楽がたくさん増えている中で、子どもを産むことだけがすべてじゃないんだいう風土になってきていることは悪いことではないと思います。
一方で、やはり私は子供を産んだことで自分自身もすごく成長させてもらっていますし、子どもは単純にかわいくて、かけがえのない存在なので、実りのある人生になったかなと感じています」
Q産みたい人が産める社会にするには?
「子どもが遊べる施設やさまざまな年代の方が一緒に集える場や環境がもっと増えていったり、子どもがいる社会がもっと身近になっていくと、もう少し若い人たちが『子どもが欲しいな』と自然に思えるような社会になるんじゃないかなと思います」