“変異ウイルス拡大や年末の接触機会増加に注意”専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国的に感染者数の増加が続いているものの、その速度は鈍化し、今後ピークを迎える可能性があると指摘しました。ただ、別の変異ウイルスの拡大や、年末に向けた接触機会の増加が起きた場合、感染者数は横ばいとなったり、再び増加したりする可能性もあり、注意が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について、全国的に増加が続いているものの、その速度は鈍化し、この夏の「第7波」のピークを上回った北海道などでも鈍化の傾向が見られるとしています。

人口当たりの新規感染者数は、10代など若い世代ほど多いほか、ほとんどの地域で高齢者の増加が続き、重症者や亡くなる人も増える傾向にあると指摘しています。

そのうえで、増加が鈍化していることから、今後ピークを迎える可能性があるとしていますが、別の変異ウイルスへの置き換わりの状況や、年末に向けて人と人との接触機会が増加することなどによって、感染者数は直ちに減少に向かうことなく、横ばいとなったり、再度増加したりする可能性もあると分析しています。

変異ウイルスについては、現在感染の主流となっているオミクロン株の「BA.5」に代わって、海外での感染者数増加の要因だと指摘されている、いずれもオミクロン株の「BQ.1」や「XBB」などの割合が増加する可能性があるとしています。

さらに、インフルエンザも一部の地域で増加傾向が続いているため、コロナとの同時流行を含めて今後の推移に注意が必要だと指摘しました。

そのうえで専門家会合は、必要な対策として、年内にオミクロン株対応のワクチン接種を終えるよう呼びかけることや、自分で検査を行える抗原検査キットの活用を進めることなどを挙げています。

さらに忘年会シーズンを迎えることを踏まえ、改めて、
▼飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、
▼換気の徹底、
▼症状があるときは外出を控えることといった、
基本的な感染対策を再点検するよう求めました。

加藤厚労相「直ちに減少に向かうことにならない可能性も」

専門家会合で、加藤厚生労働大臣は「新規感染者数の増加速度は鈍化しているが、変異株の置き換わりや接触機会の増加などによって、直ちに減少に向かうことにはならない可能性もある。季節性インフルエンザも一部の地域で増加傾向が継続しており、引き続き感染動向に注意が必要だ」と述べました。

そのうえで「同時流行に備えて、ワクチンをまだ接種していない人は接種の検討をお願いしたい。さらに、国が承認した検査キットや解熱鎮痛剤を早めに購入するなどの準備をしてほしい」と呼びかけました。

1週間の新規感染者数 全国 前週比1.18倍に増加

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、11月21日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.18倍に増加しています。
増加幅は先週よりも狭まりましたが、増加傾向が続いています。

首都圏の1都3県では、
▼東京都が1.17倍、
▼神奈川県が1.21倍、
▼埼玉県が1.22倍、
▼千葉県が1.28倍と、
増加が続いています。

関西では、
▼大阪府が1.12倍、
▼兵庫県が1.10倍、
▼京都府が1.17倍。

東海でも、
▼愛知県が1.29倍、
▼岐阜県が1.21倍、
▼三重県が1.24倍と、
増加が続いています。

また、
▼奈良県で1.32倍、
▼青森県と岩手県で1.30倍などとなっていて、
山口県と徳島県を除く45の都道府県で増加しています。

人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は、
▼北海道が1120.66人と1000人を超えて全国で最も多く、
次いで
▼長野県が907.27人、
▼山形県が895.39人、
▼宮城県が847.74人、
▼福島県が795.41人などと、
北海道や東北を中心とした地域で多くなっています。

また、
▼東京都は435.73人、
▼大阪府は314.79人、
▼全国では473.60人となっています。

脇田座長“変異ウイルスに置き換わるときインフル重なる可能性”

専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、全国の感染状況について「増加速度はやや鈍化している。感染者はこれまで10代以下が中心だったが、少し頭打ちの傾向で、増加していた地域はピークを迎える可能性があるといった議論があった。一方、ピークを迎えても、今後、別の変異ウイルスの『BQ.1』や『XBB』に置き換わることで、新たな感染拡大の可能性があり、いったん感染者数がピークになっても、すぐには減少しない可能性が指摘された。また、高齢者では感染者数のゆっくりとした増加が続いていて、重症者や死亡者の増加につながるので、注意が必要だ」と述べました。

また、インフルエンザと新型コロナの同時流行について「インフルエンザは現在、緩やかな増加傾向で、非常に低い水準にある。年内に大きな流行が来るというよりは、来年、新学期になって、学校活動が始まる時期に流行が大きくなる可能性がある。新型コロナがオミクロン株の別の変異ウイルスに置き換わっていくときの流行拡大に、インフルエンザの流行が重なる可能性もあるのではないかといった議論があった」と述べました。

一方、塩野義製薬の開発した新型コロナの飲み薬の使用が承認されたことについて、専門家会合の開催中はまだ審議が続いていたとしたうえで、「委員からは、治療の選択肢が増えるのは歓迎されるが、臨床での効果も見極めていく必要があるし、予防的な投与までは行われるべきではないだろうという意見があった。また、緊急承認制度で初めての承認で、この制度を今後どのように活用できるのか、議論していくべきではないかという意見があった」と述べました。