ロシア シリアからよう兵募り 約2000人ウクライナ戦地に派遣か

ウクライナ軍が反転攻勢を強める中、ロシアは自国での動員に加え、内戦が続く友好国のシリアから、よう兵を募り、ウクライナの戦地に派遣しているとみられ、人権団体によりますと、その数はすでにおよそ2000人にのぼるということです。

内戦が続くシリアでは、ロシアが後ろ盾となっているアサド政権の支配地域で、ロシア側にたってウクライナと戦うためのよう兵の登録が各地で行われています。

このうち、北部の主要都市アレッポでは、軍の関連施設や学校などで、よう兵の募集が行われ、月収は3000ドルで、場合によっては、ロシア国籍の取得もできるといった説明が行われているということです。

現地の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、10月の時点でロシア側にたって戦う、よう兵としておよそ5万人が登録を済ませたということです。

そのうち、すでにおよそ2000人が主にウクライナ東部や南部のロシアの支配地域に派遣され、ロシア軍の後方支援などで戦闘に加わっているとみられるということです。

このうち、ことし7月にウクライナに向かったアフマドさん(35)は、妻と3人の子どもを養うため、よう兵となり、東部ドネツク州の前線で、ロシア側に立って戦闘に参加しています。

アフマドさんは、同じくよう兵の登録をして派遣を待つシリア国内の友人に対し、ウクライナ軍の攻撃で多くの死者が出ているとしたうえで、現地での過酷な状況を電話で伝えました。

この中でアフマドさんは、「シリア人よう兵たちは、奴隷のような扱いをされ、毎日2食の食事は腐っているような味の缶詰で、中身が何かも分からない。シリアでの説明は全部うそで、シリアで500ドルをもらって以降、一銭ももらえていない。カオスな状況でここに来ていいことなんて何一つない」と述べ、ウクライナの戦場には来るべきではないと友人に訴えていました。

シリア人権監視団のラミ・アブドルラフマン代表は、「シリア人よう兵が後方支援に徹することで、ロシア軍は前線を広げ、ウクライナ軍との戦闘に専念できることになる。戦況によっては、さらにシリア人よう兵が派遣される可能性がある」と述べ、今後、シリア人よう兵が戦場にさらに送り込まれるおそれがあると指摘しています。

妹のために戦うシリア人よう兵

10年以上におよぶ内戦で戦闘経験が豊富なシリア人のよう兵は、ロシア側、ウクライナ側の双方で戦地に派遣されているとされ、その多くは、生活の困窮などを背景に金銭の報酬を目当てによう兵の募集に応じたとみられています。

このうち、10月、シリアの首都ダマスカスでロシア側のよう兵としてウクライナに向かうというアサド政権の軍の兵士で20代半ばのムハンマドさんに話を聞くことができました。

ムハンマドさんは、かつて過激派組織IS=イスラミックステートが拠点としたシリア北部ラッカの出身で、3年前、家族の住む村がアメリカ主導の有志連合による空爆を受け、妹を除く家族全員が死亡し、妹のヤスミンさんも両足を切断する大けがを負いました。

その結果、ムハンマドさんは、欧米への敵意を募らせ、ロシア側にたって、欧米の支援を受けるウクライナとの戦闘に参加することでヤスミンさんの治療費を得る決断をしたといいます。

ただ、親戚の家に身を寄せ、14歳となった妹のヤスミンさんはその決断に反対し、毎日のようにムハンマドさんに電話をかけてウクライナ行きを思いとどまるよう訴えていました。

電話口でムハンマドさんは、ヤスミンさんの「もう家族は兄さんしかおらず、行かないでほしい」との呼びかけに対し、「君が義足をつけてまた歩くところを見たい」と応じ、決断を変えることはありませんでした。

ムハンマドさんは、11月17日、シリア北西部ラタキアにあるロシア軍が駐留する空軍基地に向かい、そこからロシアに渡ったということです。