辞職のロシア元外交官「プーチン大統領勝利以外受け入れない」

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア政府に抗議し、ことし5月、ロシアの外交官を辞職したボリス・ボンダレフ氏がNHKのインタビューに応じ、「プーチン大統領は戦争の終結を勝利以外の方法では受け入れない」と述べ、プーチン大統領が勝利と捉えられる状況にならないかぎり軍事侵攻は続くとの見方を示しました。

スイスのジュネーブにあるロシア政府の代表部に所属する外交官だったボンダレフ氏はことし5月、ウクライナへの軍事侵攻を続ける政府に抗議しておよそ20年間キャリアを積んできた外交官を辞職しました。

ボンダレフ氏は現在はスイスで生活していて14日、NHKのインタビューに応じ、軍事侵攻の計画は当時、外務省の幹部にも知らされていなかったと述べたうえで「辞職しなければ軍事侵攻に同意することになると思った。プーチン大統領はウクライナを侵略するために大勢の人が死亡し家や町が破壊されることを気にもとめていない。私は関与したくなかった」と辞職した理由を明らかにし、プーチン政権を非難しました。

そして侵攻が始まって1か月ほどで外務省の同僚が何人も辞職したとしたうえで「彼らはポイント・オブ・ノーリターンと呼ばれるものをとおりすぎてしまったことを理解し、この先は悪くなる一方で元の正常な軌道にどうやって戻せばいいのかは全く分からないと考えていた」と述べ、プーチン政権が引き返すことができない方向にかじを切ったことを一部の外交官などは理解していたと指摘しました。

ただ侵攻が長期化するうちに政権からの圧力が強くなり「退職したあと逮捕されるか、何らかの抑圧を受けることになるかもしれない」と述べ、いまは密告されたり拘束されたりすることを恐れて辞職することは難しく、抗議の声をあげられなくなっていると指摘しました。

またボンダレフ氏は、ウクライナによる反転攻勢が続き、南部ヘルソン州からロシア軍が部隊を撤退させたとしていることについて「ロシア政府は当初、ウクライナがすぐに敗北すると思っていたが、前線の状況が悪くなり、政府関係者の大半は想定外のことが起きていると考えているはずだ」と述べ、侵攻が思うように進んでいないと受け止めているのではないかと指摘しました。

そして、「プーチン大統領はこのような戦争によって自身の権威を急激に引き上げることを決意した。すべての問題や失敗を戦争のせいにして『私たちには敵がいる。だからわれわれにはプーチン政権が必要なんだ』と言うために侵攻した」と指摘したうえで「プーチン大統領は戦争の終結を勝利以外の方法では受け入れないと私は確信している」と述べ、プーチン大統領が勝利と捉えられる状況にならないかぎり軍事侵攻は続くとの見方を示しました。