【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(15日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる15日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ“首都キーウでロシア軍によるミサイル攻撃”

ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官などは15日、首都キーウでロシア軍によるミサイル攻撃があったとSNS上で明らかにしました。

いくつかのミサイルは防空システムで撃墜したものの、2発のミサイル攻撃を受けて集合住宅で被害が出ているということです。

ティモシェンコ副長官はまだ攻撃が続くおそれがあるとして住民に避難するよう呼びかけています。

また、ウクライナのメディアは、西部リビウ州や東部ハルキウ州などほかの地域でも攻撃があったと伝えています。

ラブロフ外相「ロシア産農産物輸出の障壁なくす成果を」

ロシアのラブロフ外相はインドネシアのバリ島で国連のグテーレス事務総長と会談し、ロシア外務省によりますとウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意について話し合ったということです。

この合意は今月19日に期限を迎えますが、ロシア側は合意に含まれているロシア産の農産物の輸出が制裁の影響で制限されていると批判していて、合意が延長されるかどうかが焦点となっています。

ラブロフ外相は会談のあと記者団に対し「ロシア産農産物の輸出の障壁をなくすようグテーレス事務総長が尽力していることは評価するが、これまでのところ実質的な成果は出ていない。紙の上ではなく、実際にどう実行されるかが重要だ」と述べ、農産物の輸出に関わるロシアの事業者を制裁の対象から外すなどの措置が必要だと強調しました。

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は15日、「合意の延長に関する決定は適切な時期に発表する」と述べ合意を延長するかどうか明言しませんでした。

G20 ラブロフ外相「欧米側はG20宣言案を政治化しようとした」

G20サミット=主要20か国の首脳会議に出席するため、インドネシアのバリ島を訪れているラブロフ外相は記者団に対し「欧米側が取ったエネルギーをめぐる措置が、途上国のエネルギー事情を悪化させた。われわれはこの問題を政治的に利用しないよう主張した」と述べ、ウクライナ情勢をめぐってロシアに対して科された制裁を念頭に欧米側を批判しました。

また「欧米側は、ロシアを非難するためG20の宣言案を政治化しようとした」と述べ、批判しました。

さらに、ロシアのラブロフ外相は記者団に対し、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相と現地で短時間、会談を行ったと明らかにしました。

このなかで、ラブロフ外相は「ウクライナ側がロシアとの交渉プロセスを妨害している」と両首脳に主張したということです。

ヘルソン撤退のロシア軍 別の拠点に部隊を再配置で防衛強化か

ロシア軍は、ヘルソンからの撤退後、州内の別の拠点に部隊を再配置し、支配を維持するため防衛を強化しているという見方も出ています。

イギリス国防省は15日、ロシア側は州都ヘルソンからの撤退後、州の東部にあり、アゾフ海に面したヘニチェシクに統治機構だけでなく軍の指揮部隊を再配置するとみられると指摘しました。

ヘニチェシクは、8年前にロシアが一方的に併合したクリミア半島から増援を受けられる位置にあるとしてイギリス国防省は、ロシア側は南部での支配を維持するため防衛を強化しているという見方を示しました。

ウクライナ軍は、南部だけでなく東部でも反転攻勢を強めたい考えで15日、ルハンシク州やドネツク州での戦闘で合わせて10か所でロシア軍を撃退したと強調し、今後、東部での戦闘も激しくなるとみられます。

ウクライナ 奪還したヘルソンに潜伏のロシア軍兵士 拘束

ウクライナの保安庁は、奪還した南部ヘルソン州の州都ヘルソンで、地元の住民を装って潜伏していたロシア軍の兵士を発見し、拘束したと、14日SNS上で発表しました。

それによりますと、拘束された人物は軍服は着ていなかったということですが、ロシア軍の所属であることを認めているとしています。

また、ヘルソンで破壊工作や情報の収集などの任務にあたっていたことが分かっているということです。

ウクライナの保安庁や警察は、奪還した土地にロシア軍の兵士などが住民を装ってまだ残っているおそれがあるとして、警戒しています。

ゼレンスキー大統領 ヘルソン奪還の成果を強調

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、南部ヘルソン州の州都ヘルソンを訪問したあと「実りの多い象徴的な1日だった」と述べて戦略的拠点をロシア側から奪還した成果を強調しました。

ロシア軍はヘルソンから撤退させた部隊を東部に投入するとみられ、冬を迎えるなか、戦闘が激しくなるという見方が出ています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、ロシア軍が部隊を撤退させた南部ヘルソン州の州都ヘルソンを訪れたあと動画を公開し、「きょうはとても実りの多い象徴的な1日だった」と述べて反転攻勢によって南部の戦略的拠点を奪還した成果を強調しました。

そのうえで「2014年、そしてことし2月24日以降にロシアによって日常を奪われた地域にも幸せは訪れるだろう。私たちはすべてを取り戻す」と述べて領土の奪還をさらに進める考えを示しました。

ゼレンスキー大統領 アメリカと中国の合意を歓迎

14日、米中首脳会談で両首脳が、ロシアを念頭に、ウクライナでの核兵器の使用や核による威嚇に反対することで合意したあと、ウクライナのゼレンスキー大統領は、新たな動画を公開しました。

この中で「特に重要なのは、アメリカと中国が共同で、核兵器を使用するといういかなる威嚇も容認できないと言及したことだ。このことばが誰に向けられているのか、誰もが理解している」と述べ、アメリカと中国の合意を歓迎しました。

ロシアのプーチン政権は、ウクライナへの軍事侵攻後、核戦力の使用も辞さない姿勢を示し、ウクライナや欧米側を繰り返し威嚇しています。

“ヘルソンはウクライナであり これからもウクライナ”

ウクライナ軍が奪還した州都ヘルソンでは14日、市民から喜びの声があがりました。

ロシアが占領していた8か月余りにわたり、ヘルソンで暮らしていたという女性は「この街にロシア軍がいなくなって、変化が起きたと感じた。ウクライナの人々が国旗を掲げたのを見て、ただただ泣いていた」と話していました。

そのうえで「ウクライナ政府の人とここで会って、ヘルソンは永遠にウクライナだと思った。ヘルソンはウクライナであり、これからもウクライナだ」と強調しました。

一方、ロシア軍が撤退する前に通信や電力、それに水道の施設など重要な社会インフラを破壊したことで、市民の生活に深刻な影響が及んでいます。

市内を流れるドニプロ川には、トイレや洗い物など生活に使うための水を求める市民が足を運び、プラスチックの容器にくんでいました。

水をくみにやってきた男性の1人は「卑劣なことをした人々は、報いを受けるべきだ」と述べ、ロシア側への怒りをあらわにしていました。

G20 ウクライナ侵攻後 初の首脳会議がインドネシアで開幕へ

G20=主要20か国の首脳会議は、15日から2日間の日程でインドネシアのバリ島で開かれます。

G20の首脳会議が開かれるのはロシアによるウクライナ侵攻後では初めてで、アメリカのバイデン大統領や中国の習近平国家主席のほか、ロシアからはプーチン大統領の代わりにラブロフ外相が出席する予定です。

初日の15日は、ウクライナ情勢を背景にした世界的なエネルギーや食料価格の高騰への対応などが議題となる予定ですが、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、各国の立場は大きく異なっています。

これまでの閣僚会議でも、インフレなどについて、ウクライナ侵攻が原因だとする欧米各国と、経済制裁が原因だとするロシアとが互いに非難しあう事態となり、議論は進展してきませんでした。

こうした中迎える首脳会議では、世界の分断が一層、浮き彫りになるおそれもあり、首脳たちが何らかの一致点を見いだせるのか議論の行方が注目されています。

“ロシア軍が残した地雷が住民の脅威に”ウクライナ兵士が証言

先月、日本を訪問したウクライナの議員団の1人で、南部へルソン州などの奪還作戦に兵士として参加しているロマン・コステンコ氏がNHKとのオンライン・インタビューに応じ、奪還作戦の状況について、「敵が撤退を始めていて、それを追撃した。すべての方角にいる敵を排除するために、全方位から部隊を進めた」と述べ、各部隊が緊密に連携しながら慎重に前進したことを明らかにしました。

そして、自身の生まれ故郷の集落を奪還し、現地に入ったときの状況について「今までの人生で、いちばん特別な出来事だった。住民と抱き合って喜んだ」と振り返りました。

一方で、ロシア軍の占領下にあった地域の状況について「水道はほとんど使えず、電気も通っていない。病院からも設備が盗まれた。あらゆる場所に地雷が設置されていて深刻な問題になっている。手足を失った人も目にした」と述べ、インフラの破壊に加え、ロシア軍が残していった地雷が、住民を危険にさらし、復旧に向けた脅威になっているとしてロシアを非難しました。

そのうえで、コステンコ氏は厳しい冬が迫る中、発電機などの確保が喫緊の課題になっていると訴えるとともに、地雷の除去に向けた日本の支援に期待を示しました。

今後数週間 戦闘激化か

ロシア国防省は14日、東部ドネツク州の州都ドネツクの西部にあるパウリウカを掌握したと発表し、侵攻を継続する姿勢を示しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は13日「プーチン大統領は、ヘルソンから撤退させたロシア軍を東部に投入しドネツク州全域を占領することを条件に、ヘルソンからの撤退を認めたとみられる。動員された兵士も到着するため、今後数週間、戦闘が激化するだろう」と分析しています。

そのうえで「双方は現在、足場が悪い泥の中で戦っているが、冬場に入ると地面が凍結し、機動部隊が進軍しやすくなる。気温が下がるにつれて、戦闘は激化する可能性が高くなる」と指摘し、冬を迎えると戦闘は一層、激しくなるという見通しを示しました。

米ロの代表団がトルコの首都アンカラで会談

ロシアの有力紙コメルサントなどによりますと、アメリカとロシアの代表団が14日、トルコの首都アンカラで会談しました。

ロシア側からは主要な情報機関の1つ、対外情報庁のナルイシキン長官が出席したということです。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は会談があったことを認めたうえで「アメリカ側の呼びかけで行われた」と述べました。

一方、ロイター通信は14日、アメリカのホワイトハウスの報道官の話として、アメリカ側の参加者はCIA=中央情報局のバーンズ長官だと伝えています。

会談の目的について報道官は「ロシアが核兵器を使用した場合の結果に関するメッセージを伝えるためだ」と述べたということです。

ロイター通信によりますと、ことし2月、ロシアがウクライナに侵攻してから、アメリカとロシアの高官が直接、接触するのは今回が初めてだということです。

ウクライナの軍事専門家「ヘルソンの奪還は重要な転換点に」

ウクライナの軍事専門家、イーホル・カバネンコ氏は首都キーウでNHKのインタビューに応じ、ウクライナ軍による南部ヘルソンの奪還について「ウクライナ軍の反転攻勢の動きを確実なものとし、この戦争における重要な転換点になる」と述べ、大きな成果だとする見方を示しました。

また、ヘルソン州内でのロシア軍の状況については「ドニプロ川の対岸で拠点を築いているが、攻撃の優位性を失っている。兵士の数が足りず士気も低い。ロシア軍がそこから攻撃する可能性もあるが、むしろウクライナ軍の反撃にさらされるだろう」と述べ、戦況はウクライナ側に有利になっていると分析しました。

そのうえで、カバネンコ氏は「ロシア軍は今後、動員した兵士の訓練を終え、兵器の修理もしてくる。このためウクライナ軍は待つべきではなく、勢いを保って前進していくだろう」と述べ、ウクライナ軍の反転攻勢が続くとの見通しを示しました。

ゼレンスキー大統領 奪還したヘルソンを訪問

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、奪還したヘルソンを訪れ、国旗の掲揚式に参加しました。

そして、奪還の任務に当たった兵士たちに謝意を示すとともに、ロシア軍によって破壊された電力や通信インフラの復旧を急ぐ考えを示しました。

そのうえで、ゼレンスキー大統領は「われわれは、一時的に占領されている領土に一歩ずつ近づいている。困難で長い道のりになるだろうが、この戦争にはわが国の英雄たちが参加している」と述べ、さらなる領土の奪還を進めると強調しました。