住宅ローン変動金利引き下げの動きも 住宅価格上昇や物価高で

住宅価格の上昇や物価高が続き、より低い金利でローンを組みたいというニーズが高まる中、金融機関の間では、住宅ローンの金利を引き下げて顧客を取り込もうという動きが出てきています。

住宅ローンは、金利が維持される固定金利と、一定期間ごとに金利を見直す変動金利がありますが、低金利が続く中、国内では変動金利を選ぶ人が7割にのぼるという調査結果もあります。

金融機関の間ではこの変動金利を引き下げる動きが出ていて、ネット銀行の「auじぶん銀行」は、ことし6月から携帯電話と電気の契約を条件に新規で年0.3%台としている変動金利を0.2%台に引き下げています。

店舗を持たないなどコストを抑えることで金利を引き下げていて、ことし4月から先月までの住宅ローンの申込件数は、去年の同じ時期と比べておよそ1.2倍に増えているとしています。
一方、大手銀行ではみずほ銀行が去年から変動金利について、インターネットで申し込みを行うなどの条件を満たした人に対して0.3%台の優遇金利を適用しています。

金利引き下げの背景には、住宅価格の上昇や物価高が続く中、消費者の間で、より低い金利でローンを組みたいというニーズが高まっていることがあります。

ただ、住宅ローンは返済期間が長いうえ、変動金利の場合、将来的に大きく金利が上がると、返済額が当初の想定以上に膨らむおそれがあることから、契約の際にはリスクを考慮しながら慎重に検討することが求められます。

変動金利引き下げの背景は

住宅ローン比較サイトの運営会社によりますと、ネット系の金融機関を中心に変動金利を引き下げる動きが活発になっていて、この会社のサイトを通じてローンの借り換えを申し込んだ人は去年のおよそ2倍に増えているということです。

その背景には、国内で固定金利の住宅ローンの利率が上昇傾向にある一方、日銀のマイナス金利政策などの影響で変動金利の水準が低く抑えられてきた状況があるとしています。

この会社が各金融機関のデータから独自にまとめた住宅ローン金利の推移をみると、35年固定型の今月の金利は1.54%で3年前の11月と比べて、0.37ポイント上昇しています。一方、今月の変動金利は0.44%で3年前の11月と比べて、0.04ポイント下がっています。

こうした中、物価の上昇で家計の見直しのニーズが高まり、金融機関の間で、変動金利をさらに引き下げて顧客を獲得しようとする動きが出ているということです。

このサイトを通じて住宅ローンの借り換えを申し込んだ人のおよそ半数が、その理由として物価の上昇や今の金額でローンの返済を続けていくことへの不安を挙げているといいます。

住宅ローン比較サイト「モゲチェック」運営会社の塩澤崇取締役COOは「ことしの春ごろからどんどん物価が上がって生活防衛のニーズが高まってきた。住宅ローンは家計の中で最大の支出になるのでそこを減らすために借り換えをする利用者が増えている」と分析しています。

変動金利の引き下げで借り換えの申込件数が1.5倍~2倍に

ネット金融大手・SBIホールディングス傘下の新生銀行はことし6月から住宅ローンの変動金利を引き下げるキャンペーンを行ってます。

0.45%だった変動金利を0.35%に引き下げたところ毎月の住宅ローン借り換えの申込件数は前の年の1.5倍から2倍に増えているということです。

借り換えの契約をした千葉県の40代の男性は「新型コロナの影響で多少、収入が減ってしまった中で、物価高となり、まずは1か月の支払い額を減らしたいと思いました。今までの金利よりかなり低いのは事実で直感的にこれはいいなと思うところはありました」と話していました。

新生銀行の来海秀行・住宅ローン部長は「お客様に魅力的な水準で金利を提供しようと、これまでにない低金利でのローンの提供に至りました。生活への不安から月々の負担を減らしたいという声を多く耳にしていて、金融機関の間で0.01%の単位で変動金利の引き下げ競争をしている実態があります」と話していました。

仮に変動金利が上昇したら 負担はどれほどに…

仮に住宅ローンの変動金利が上昇すると、毎月の支払額や返済総額はどの程度増えるのか。

住宅ローン比較サイトの運営会社によりますと、3500万円を返済期間35年で、0.5%の変動金利で借りた場合、金利が変わらなければ毎月の返済額は9万854円、返済総額は3815万円余りとなります。

この金利がいずれも5年後に
▽0.5%上昇した場合、毎月の返済額は9万7672円となり、6818円の負担増となります。

▽1%上昇した場合、毎月の返済額は10万4802円で1万3948円の負担増、

▽1.5%上昇した場合は毎月の返済額が11万2242円で2万1388円の負担増となります。

返済総額はいずれも5年後に、
▽0.5%上昇した場合、245万円余り増えて4061万円余り、
▽1%上昇した場合、およそ500万円増えて4318万円余り、
▽1.5%上昇した場合、およそ770万円増えて4585万円余りになると試算されています。

専門家「変動金利はリスクを抱えていると意識する必要がある」

住宅ローンの変動金利の引き下げで借り換えの動きが活発になっていることについて、住宅ローンに詳しいニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は「日本銀行が金融政策を引き締める方向には行かないと見ている人が増えて、変動金利が上昇しないのならより低い金利に借り換えようという考え方も出ているのではないか」と指摘しました。

そのうえで、「将来、金利が上昇すればローンの返済額も上がっていく可能性があり、変動金利はリスクを抱えていることを意識する必要がある。金利が上昇したときのために貯蓄をするなどある程度保守的なリスク管理を行うべきだ」と話しています。