ロシア軍 南部の要衝 へルソンから撤退 ウクライナ側は奪還へ

ウクライナ南部のヘルソン州をめぐりロシア軍はドニプロ川をはさんで州都を含む地域から対岸に部隊を撤退させると発表しました。ロシア軍が戦略的な拠点を失えば大きな打撃になるという見方が出ていて、ウクライナ側は慎重に部隊を進めながら奪還を目指すとみられます。

ロシアのショイグ国防相は9日、ウクライナ南部のヘルソン州について、ドニプロ川をはさんで州都ヘルソンを含む北西の地域から軍の部隊を撤退させるよう命じました。

川の南東側で防衛を固めるのが最善の選択だとしています。

そして、ロシア国防省は10日「計画に従い、川の東側に移動している」として部隊の撤退が始まったことを明らかにしました。

これについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は9日「われわれは損失を最小限に抑え国土のすべてを解放するため、非常に慎重に動いている」と述べ、慎重に部隊を進めながら、ヘルソンの奪還を目指すとみられます。

戦況を分析するイギリス国防省は10日に、「ロシア軍がヘルソン州の西岸を失えば、陸からオデーサに到達するという戦略的な野望がかなわない可能性が高い」として、ロシア軍にとっては、今後、南部の港湾都市オデーサを攻略するための拠点を失うとの見方を示しました。
そのうえで「ロシア軍は撤退にあたって、ウクライナ軍の前進を遅らせるために、複数の橋を破壊し、地雷を敷設した可能性がある。ロシア軍の撤退は数日間にわたる可能性が高い」と指摘しています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、9日に、「ロシア軍は軍隊を秩序正しく撤退させ、ウクライナ軍の前進を遅らせることを優先している」としたうえで、ウクライナ軍の反転攻勢が成功を収めているなどと評価しました。

一方、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表、プリゴジン氏や、プーチン大統領に忠誠を誓い、軍事侵攻でチェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏など強硬派は撤退の判断について肯定的に評価しています。

これについて「戦争研究所」は「ロシア国内の軍事専門家の多くからも撤退は必要だったという声が上がっている。ロシア指導部は、ことし9月に東部ハルキウ州からロシア軍が壊滅的に撤退した経験から学んだようだ」と指摘し、政権への批判につながらないよう対応したという見方を示しています。