COP27 首脳級会合始まる 深刻化する異常気象 途上国支援は?

国連の気候変動対策の会議「COP27」は6日、エジプト東部のシャルムエルシェイクで開幕し、日本時間の7日午後7時半ごろからは首脳級の会合が始まりました。会議の冒頭、国連のグテーレス事務総長が演説し、「地球の気温は上昇し続け、われわれは後戻りできないところに近づいている。人類には選択肢がある。協力するか滅びるかだ」と訴え、各国にCOP27で具体的な成果を出すよう求めました。

2日間行われる首脳級の会合には、100を超える国と地域から首脳らが参加する予定で、1日目は、フランスのマクロン大統領やドイツのショルツ首相、イギリスのスナク首相などが演説するほか、2日目にはウクライナのゼレンスキー大統領がビデオメッセージを寄せる予定です。

今回の会議では、2030年までの温室効果ガスの削減をどう加速させるかや、気候変動の悪影響によって発生した「損失と損害」に特化した資金支援について交渉が行われる予定ですが、難航も予想されています。

パキスタンでの大規模な洪水など異常気象の被害が深刻化する一方で、ウクライナ情勢をめぐって国際社会の分断が深まる中、各国の首脳がどのような発言をするか、注目されます。

国連事務総長「協力か滅びるかだ」

国連のグテーレス事務総長が演説し、「温室効果ガスの排出量は増え続け、地球の気温は上昇し続けている。われわれは後戻りできないところに危険なほど近づいている」と述べ、現状に強い危機感を示しました。

そして、「ウクライナでの戦争は、化石燃料に依存することへの深刻なリスクをあらわにした」と指摘し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けたエネルギー危機のさなかでも、温室効果ガスの削減を着実に進めるべきだと訴えました。

また、「悲惨な運命を避けるために、G20=主要20か国が今、取り組みを加速させ、先進国が主導権を握らなければならない」と述べ、中でも経済大国のアメリカと中国は、特別な責任があると指摘しました。

そのうえでグテーレス事務総長は、「人類には選択肢がある。協力するか滅びるかだ」と訴え、各国にCOP27で具体的な成果を出すよう求めました。

各国で相次ぐ異常気象

世界でいっそう深刻化する洪水や干ばつ、極端な暴風雨などの異常気象。国連のグテーレス事務総長はことし9月、パキスタンでの大規模な洪水、中国やアフリカ東部などで長期化する深刻な干ばつをあげて「気候変動による被害は未知の領域に向かっている」と述べて対策の必要性を訴えました。
このうちヨーロッパはことし夏、EU=ヨーロッパ連合の研究機関が「少なくとも過去500年で最悪」だとする記録的な干ばつに見舞われました。

EUの研究機関はことし8月の時点でヨーロッパ全土のうち47%で土壌の水分が不足し、17%で農作物などに影響が出ているとする報告書を発表し、平年より暖かく乾燥した気候は11月まで続くと警告しました。
スペインではことし10月の平均気温が平年をおよそ3度上回り、観測史上で過去最高を記録し、降雨量は平年よりおよそ30%少なくなっているといいます。10月末に取材に訪れた中部のダムでは、巨大な貯水池の水がほとんど干上がり、水につかっているはずの石橋がそのまま姿をあらわしていました。

スペインの南部では、ダムの水位が軒並み例年の20%にとどまる危機的な状況に陥っています。

オリーブ生産にも打撃

記録的な干ばつは世界一の生産量を誇るスペインのオリーブにも大きな打撃を与えています。

オリーブ農園を営むラファエル・モヤノさんは、先祖から引き継ぐ、樹齢が数百年、幹の直径が1メートル以上という巨大なオリーブの木が自慢だといいます。ところがことしは水不足で実が大きくならないまま枯れたり、実の表面にしわが入ったりするケースが相次ぎ、食用に収穫するのを断念しました。
実を絞って油にしても収穫は例年の30%程度に落ち込む見通しだということです。モヤノさんは「生産量は70%減り、実ったものも小さくてしわくちゃだ。この気候が続くとどうなるか怖い」と話し、水をより多く必要とする老木を切り、若い木に植え替えるかどうか悩んでいると言います。

気象の専門家は「シミュレーションは、厳しい干ばつと少雨がこれから普通になり繰り返されることを示している。問題は、実際どうなるかだ」と話し、スペインだけでなく、フランスやイタリア、ポルトガルなど、ヨーロッパ南部の広い範囲で極端な高温や干ばつが繰り返され今後、乾燥化が進むおそれがあると警鐘を鳴らしています。

人が暮らせなくなる集落も

北アフリカのモロッコでは頻繁に発生する干ばつで水不足から人が暮らせなくなる集落が相次いでいます。

ことしは過去30年で最も深刻な干ばつに見舞われ、アルジェリアとの国境に近い東部の町リサニ近郊では、畑が広範囲で干上がり、作付けができない状態となっていました。住民たちが暮らしているのは「カサル」と呼ばれる高い塀に囲まれた1000年以上の歴史があるという、伝統的な集落です。
しかし、住民によりますとこの地域では、数年前から雨の量が大幅に減り、農業や暮らしに必要な水が確保できないために人が住めなくなる集落が相次いでいるということです。

地元の行政当局者によりますと周辺にあるおよそ360ある集落のうち、40の集落ではすでに全員が移住したほか、残る300余りの集落でも、人口が半減しているということです。

地元の当局者は「干ばつが数百年もの間続いた暮らしを終わらせるとは、誰も想像していなかった。気候変動が土地を干上がらせた」と話していました。

EUでは石炭回帰の動き

異常気象が相次ぐ中、これまで世界の脱炭素の動きをけん引してきたEU=ヨーロッパ連合では、ロシアからの天然ガスの供給が大幅に減っていることを背景に、石炭への回帰が進む事態となってます。

ヨーロッパ最大規模の港、オランダ・ロッテルダム港には、連日、EU域外から石炭を運んできた船が到着しています。港の当局によりますと、ことし1月から9月までの石炭の取扱量は去年の同じ時期に比べておよそ25%増えたということです。

ドイツやフランス、オランダなどでは電力の安定供給のためとして石炭火力発電所の稼働が拡大していて、IEA=国際エネルギー機関はことしのEUの石炭の消費量は前の年よりも7%増えるという見通しを示しています。
ギリシャのミツォタキス首相は2019年、稼働中の石炭火力発電所を2023年までに閉鎖する計画を発表しましたが、ことし4月、「この先2年、石炭の採掘を50%増加させ、石炭による発電量を増やすのが適切だ」と述べ、ロシア産の天然ガスへの依存を減らすためとして石炭の利用を拡大すると発表しました。

ギリシャ政府は石炭の利用拡大について、あくまで一時的な措置だとしています。ヨルギアディス開発投資相はNHKの取材に対し「非常時の短期的な対応だ。われわれは気候変動との闘いに全面的に取り組んでいる」と強調しました。

しかし、環境NGOからはこうした石炭への回帰に懸念の声があがっています。グリーンピースのベルギー支部の広報担当者は「温室効果ガスは今、減らさなければならない。たとえ短期的であっても、石炭に後戻りするのはよくない兆候だ」と話しています。

日本でも火力発電依存が続く

日本では国内に供給される電力のうち、火力発電が占める割合は直近のことし6月で、全体の79.3%を占めています。

内訳は▽LNG=液化天然ガスが40.4%、▽石炭が29.8%、▽石油が2.3%などとなっています。

国のエネルギー基本計画では、2030年度に向けて「できる限り電源構成に占める火力発電の比率を引き下げる」としていますが、電力需給のひっ迫が懸念される中、政府はこの冬も、休止中の火力発電所の再稼働を求めるなど、火力発電に依存する状況が続いています。
こうしたなか企業の間では、災害や停電などの非常時の備えとして、石油やガスを使う発電機を導入する動きが出ています。

都内で化粧品などに使う香料を製造する企業では、停電が起きると、サーバーが停止し香料の製造に欠かせないレシピや取引先のデータなどを失いかねないとして、非常用発電機の導入を計画しています。

当初は環境に配慮し、温室効果ガスを出さない燃料電池の導入を検討したということですが電池の容量が少なく、コストもかかるため、軽油を使うディーゼル発電機に変更したということです。
この会社の飯島善男調査役は「電気が止まれば、実際の事業に与えるインパクトはかなり大きい。サーバーを含む電子機器をカバーするため、ディーゼルというのもやむなしという最終的な判断です」と話していました。

東京都では、中小企業がこうした非常用発電機を導入するのを助成する制度を設けていますが、ことし3月に東京電力管内で電力需給ひっ迫警報が出されて以降、問い合わせが増えているということです。

脱炭素に向けた取り組み 中断も

エネルギー価格の高騰による電気料金値上げの影響を受けて、経営の安定が最優先となり脱炭素に向けた取り組みを中断せざるを得なくなった中小企業も出ています。

精密加工部品などを製造する岡山県倉敷市の企業は、中小企業の脱炭素を進める国の支援事業に参加して再生可能エネルギーを導入した場合の温室効果ガスの排出量を試算し、年内には太陽光パネルを設置して工場で使う電力をまかなおうと、場所を確保するなどの準備を進めていました。
しかし、ことし2月のロシアによるウクライナ侵攻後、電気料金の値上がりが続き、ことし9月に工場の稼働にかかった電気料金は104万円余りで、去年の60万円余りと比べて1.7倍に値上がりしました。

工場を安定的に稼働させることが最優先で、太陽光パネルの設置や改修工事にかかる1000万円程度の費用を捻出することが難しくなり、導入をいったん中止せざるを得ない状況となっています。

経営の安定が見通せる状況になれば、脱炭素に向けて再び取り組みたい考えですが、今はその余力がないと言います。
この会社の小谷功会長は「電気料金が継続的に上昇して、ボディブローが効くように経営の体力が消耗している。軍事侵攻など予測できない事態が起きると、長期的な視点での思い切った投資にはマイナス要因になる」と話していました。

専門家「脱炭素に逆風 世界全体で連携を」

企業の気候変動対応などに詳しい日本総合研究所金融リサーチセンターの大嶋秀雄主任研究員はウクライナ危機が世界の脱炭素に与える影響について、「ヨーロッパのように、ロシアからの天然ガスが入ってこない、エネルギーの供給不安という直接的な影響と、景気後退や企業の業績悪化に伴って脱炭素に向けた投資の優先度が低下するという間接的な影響が生じている。そうした影響を踏まえると、ウクライナ危機は脱炭素に対してさまざまな面で逆風となっている」と指摘しています。

日本はヨーロッパに比べてロシアへのエネルギー依存度が高くないため直接的な影響は見えにくい一方で「企業の業績が悪化すると脱炭素を進めるために必要な設備投資や技術開発を進める余力や優先度が低下し、取り組みが遅れるおそれがある。国内ではこの先も脱炭素のトレンドは変わらないと思うが、足元の経済状況が悪化すると、その歩みのスピードは進みづらくなる。2030年目標までは残り8年しかないがこの1、2年の取り組みの遅れが深刻な影響として出てくるのではないか」と懸念しています。

そのうえで、「脱炭素や気候変動の問題は地球規模の問題として世界全体で連携しなければならない。国際社会の分断を乗り越えて、議論がしっかりと行われるか注目したい」と話していました。