プーチン大統領 国防相に軍の強化命じる 巻き返し図るねらいか

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン政権は、予備役の動員について30万人の招集を終えたと発表しました。
一方、プーチン大統領は国防相に軍の強化を命じ、さらなる長期化を見据えて戦力の強化を図るねらいがあるものとみられます。

プーチン大統領は28日、ショイグ国防相から予備役の動員について目標としていた30万人の招集が完了し、「追加の動員は計画されていない」とする報告を受けました。

予備役の動員をめぐっては、プーチン政権が兵員不足を補うため、先月踏み切りましたが、対象ではない人も招集されるなど混乱が生じ、各地で抗議活動が相次いだほか、招集を恐れて国外に逃れる人たちが後を絶たず社会に動揺が広がりました。

こうした中でプーチン大統領は「動員の初期段階では問題や困難があった」と問題を認めたうえで、ショイグ国防相に改善を指示しました。

また、実際に戦闘に参加しているのは4万人余りで、残りは訓練中であることを国防相に確認する形で強調していて、ロシアの有力紙コメルサントは「国民を安心させるためだ」という見方を伝えています。
プーチン大統領は「装備を整え訓練を行い、直接、戦闘に参加しなければならない場合に自信を持たせることが最も重要だ」とも述べていて、動員された兵士が訓練や装備が不十分なまま戦闘にかり出されているといった指摘も伝えられる中で、国民の懸念に配慮する姿勢を示したものとみられます。

一方、プーチン大統領は、海軍の増強などに力を注いできたとしたうえで、「陸軍を含むすべての軍の構成についてよく考え調整する必要がある」と述べ、軍の強化を命じました。

そのうえで必要な決定を短期間で行うよう指示していて、軍事侵攻のさらなる長期化を見据えて戦力を強化し、ウクライナ軍の反転攻勢に対して戦況の巻き返しを図るねらいがあるものとみられます。

動員の完了 ショイグ国防相が報告

今回、ロシアのプーチン大統領は、モスクワ郊外の公邸で、動員の完了をショイグ国防相に報告させ、国営メディアでその様子を公開しました。

これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は大統領みずから完了を発表することもできたと指摘したうえで「改めて国防相の権威づけを図り、ウクライナに戦闘部隊を送っている強硬派が影響力を増す中でバランスを取ろうとしているようだ」と分析しています。

ウクライナ侵攻をめぐっては強硬派の意見が強まり、プーチン大統領への圧力になっているという見方も出ていて、このうち、チェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏は27日、SNSで、東部の防衛態勢に不満を表し、10月1日に続いてロシア軍の現地の司令官を痛烈に批判しました。

カディロフ氏は南部ヘルソン州で、チェチェンの戦闘員23人が死亡し58人がけがをしたと明らかにし、ウクライナ軍の反撃で大きな打撃を受けたものとみられます。

また、アメリカの有力紙ワシントン・ポストは25日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の代表で、政権に近いとされるプリゴジン氏が軍の上層部を批判し、プーチン大統領に苦言を呈したと報じています。

米のシンクタンク「決定的な影響与えることはない」

ロシアのプーチン政権による予備役の動員をめぐって、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日「ロシアの戦力に決定的な影響を与えることはない」とする見方を示しました。

この中で「ロシアが4万人余りの訓練不足の戦闘要員を投入したことでロシアの防衛ラインは一時的に強化されたかもしれないが、彼らはまだ大規模で準備を整えたウクライナ軍の反撃に直面していない」と指摘しています。

その上で、今回動員された30万人のうち、あわせて15万人が11月中に戦闘任務につくという見通しを示した上で「部隊に追加配備しても、戦況を変える可能性は依然として低い」と分析しています。

一方、10月中に動員を完了させたことについては、例年より1か月遅れて来月1日に始まる18歳から27歳までの秋の徴兵に合わせたものだという見方を示し、「ロシア軍には新たに徴集する12万人の訓練を同時に行う能力がないようだ」と指摘しています。