【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10月12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ザポリージャ原発 “ロシア軍の攻撃で外部電源喪失”

ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは12日、ウクライナにあるザポリージャ原子力発電所に電力を供給する変電所がロシア軍によるミサイル攻撃で被害を受け、外部からの電力供給が失われたと発表しました。

このため、ザポリージャ原発では非常用のディーゼル発電機を稼働させて、冷却機能を維持させているということで、エネルゴアトムでは、新たに発電機用の燃料を供給する準備を進めています。

しかし、現地時間の12日午前10時現在、燃料を積んで原発に向かう車両がロシア側によって足止めされているということです。

エネルゴアトムは「原発に関係するエネルギー関連施設への攻撃は原発に直接攻撃するテロと同じだ」として、ロシアを強く非難しています。

また、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長も12日「けさ、原発に駐在するわれわれのスタッフから、ここ5日間で2回目の外部電源の喪失が起きたと報告を受けた。非常用のディーゼル発電機が稼働し、保安設備などへの電源を供給している」とツイッターに投稿しました。

ロシア国防省 軍事作戦の総司令官にスロビキン氏を任命

ロシア国防省は8日、ウクライナで続ける軍事作戦の総司令官に、航空宇宙軍のトップのセルゲイ・スロビキン氏(56)を任命したと発表しました。

スロビキン氏は1983年、旧ソビエト軍に入隊し、1999年に始まった第2次チェチェン紛争などにも参加しました。

ロシア国営のタス通信によりますと、2017年3月以降は、シリア内戦に介入したロシア軍の指揮を執り、作戦を成功させたとして、勲章を授与されたということです。

その一方、厳格で冷徹な指揮官として知られ、チェチェン紛争の時には「味方の兵士が1人殺害されるごとに、敵を3人殺害する」と公言していたと伝えられています。

ウクライナでの軍事作戦では、南部に侵攻した部隊の指揮を執り、プーチン政権の評価を得たとみられています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日の分析で、ロシアが劣勢となる中、軍当局は国防省のイメージの回復をねらってスロビキン氏を総司令官に任命し、10日の大規模なミサイル攻撃を行ったのではないかと指摘しています。

林外相 ウクライナ駐日大使らと面会 支援継続の考え伝える

林外務大臣は12日、外務省でUNHCRのファルカス駐日代表やウクライナのコルスンスキー駐日大使、それに、ウクライナからの避難民を受け入れているポーランドなど5か国の駐日大使と面会しました。

この中で林大臣は、ロシアによるウクライナに対する大規模なミサイル攻撃について「国際法違反であり、断じて正当化できない」と強く非難したうえで、避難民をはじめウクライナの人たちへの支援を継続する考えを伝えました。

これに対し、UNHCRのファルカス駐日代表は「日本からの支援と貢献に深く感謝する。そのおかげで女性や子ども、高齢者など支援のニーズに対応できており引き続き日本のリーダーシップに期待する」と述べました。

また、ウクライナのコルスンスキー大使は「ミサイルで攻撃を受け、避難民はさらに増えることが見込まれる。ポーランドやルーマニアなどから支援してもらっているが、避難民が戻れるようになることを望んでいる」と述べました。

米バイデン大統領 “プーチン大統領は状況を大きく見誤った”

アメリカのバイデン大統領はウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領について「合理的な行動をする人物だが、状況を大きく見誤った」という見方を示したうえで、ウクライナ4州の併合を一方的に宣言したことを改めて非難しました。

これは、アメリカのバイデン大統領が11日に放送されたCNNテレビのインタビューで述べたものです。

バイデン大統領は、ロシアのプーチン大統領について「彼は合理的に行動する人物だが状況を大きく見誤った」と述べて、プーチン大統領が、軍事侵攻がこれほど長期化するとは考えていなかったという見方を示しました。

そのうえで「彼は自分が、ロシア語を話すすべての住民を率いるリーダーになるべきだと考えていたが、それは非合理的な考えだ」として、ウクライナ東部や南部の4州の併合を一方的に宣言したことを改めて非難しました。

また、バイデン大統領はプーチン大統領が核兵器を使う可能性について問われると、すぐに核兵器が使われる可能性は低いという見方を示したうえで「世界最大の核保有国の1つのリーダーが核兵器を使うことを示唆するのは無責任だ」と述べ、ロシア側を強くけん制しました。

ロシア国防省「大規模な攻撃を継続」

ロシア軍は、10日に続き11日も、ウクライナの複数の都市に対して大規模なミサイル攻撃を行いました。

ロシア国防省は「ウクライナ軍の指揮所とエネルギー施設に対し、大規模な攻撃を継続した」と発表しています。

10日に行われたロシア軍の攻撃による犠牲者の数は増え続け、ウクライナの非常事態庁などによりますと、市民など20人の死亡と108人の負傷が確認されたということです。

インフラ施設などへの相次ぐミサイル攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日「けさの時点で飛来したミサイル28発中20発を迎撃した」と述べ、攻撃に対処していることを強調したうえで、被害を受けたインフラの復旧を急ぐ考えを示しました。

そして「新たなテロ行為について、ロシアは責任をとる必要がある」と述べ国際社会にロシアへの制裁や政治的圧力を強化するよう求めました。

米 対話の可能性排除しないロシアの考えは「見せかけ」

ロシア軍が10日に続いて11日もウクライナ各地のインフラ施設などにミサイル攻撃を行ったことについて、アメリカ国務省のプライス報道官は11日、記者会見で「一連の攻撃は、ロシアによる軍事侵攻の残忍さを表している。攻撃は完全に不当だ」と述べ、非難しました。

そのうえで、ロシアのラブロフ外相が欧米との対話の可能性を排除しない考えを示したことについては「見せかけだ。建設的で正当な提案だとは思えない」と述べ、直ちにウクライナへの軍事侵攻をやめるよう求めました。

プーチン大統領 新総司令官の誕生日を祝福

ロシア国防省は今月8日、ウクライナへの軍事侵攻の新たな総司令官として陸軍出身のスロビキン氏を任命したと発表しました。

このスロビキン総司令官に対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は11日、プーチン大統領が電話をしたと発表し、誕生日を祝福するメッセージを伝えたとしています。

スロビキン氏は、ウクライナ軍の反転攻勢を受けるロシア軍が支配してきた拠点を次々と失う中で任命された形で、プーチン大統領としては、戦況の立て直しを急ぎたい考えとみられます。

一方、劣勢に陥っているロシア軍に対し、ロシア国内の強硬派からショイグ国防相や軍部への批判が相次いでいて、こうした中でのスロビキン氏の任命は強硬派からの批判を少しでもかわしたい思惑もあるという見方がでています。

ロシア軍では、ウクライナへの軍事侵攻をめぐって、これまでも、総司令官だったとされるドボルニコフ氏が数か月で更迭されたとみられるなど、責任を追及されて軍幹部の交代が相次いでいます。

ドネツク州知事”リマンの集団墓地から55人の遺体“

ウクライナが今月奪還した東部ドネツク州のリマンでは、集団墓地から遺体を掘り起こす作業が進められていて、11日、現地を訪れたキリレンコ州知事は、これまでに55人の遺体が見つかったと明らかにしました。

知事は、遺体は市民や兵士たちだとしたうえで「現時点では爆発物や砲弾、銃弾により死亡したとみられるが、市民に拷問が行われた疑いも拭えない」と述べ、ロシア軍による拷問の可能性も視野に入れながら詳しい調査の結果が出るのを待つ考えを示しました。

一方、ウクライナの検察当局は11日、ドネツク州の別の街でも集団墓地から30人余りの遺体が見つかり、捜査を進めていると明らかにしました。

ザポリージャ原発の副所長がロシア側に連れ去られたと発表

ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは11日、南東部にあるザポリージャ原子力発電所の人事担当の副所長がロシア側に連れ去られたとSNSで発表しました。

発表では、副所長は今月10日に連れ去られ、拷問を受けているおそれがあると指摘し、連れ去った目的は副所長からウクライナ側の職員の個人情報を引き出し、職員たちをロシア側の指示に従わせるためだとしています。

そのうえで、IAEA=国際原子力機関や国際社会に対して副所長の早期の解放や原発の安全確保に向けてロシアに働きかけるよう訴えています。

ザポリージャ原発をめぐっては安全管理の責任者である所長も先月30日、ロシア側に連れ去られ、今月3日に解放されたことをエネルゴアトムが明らかにしていました。

NATO事務総長 ロシアの大規模なミサイル攻撃を非難

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は11日、ベルギーの本部で記者会見し、ロシアがウクライナ各地に大規模なミサイル攻撃を行ったことについて「ロシアはますます、市民や重要なインフラ施設に対してひどい、無差別の攻撃を行うようになっている」と述べて非難しました。

そのうえで「プーチン大統領にはほかに選択肢がないことを表すものだ。ロシア軍は後退し、勢いを失っていて、ミサイルなどで攻撃せざるをえなくなっている」と述べました。

NATOは12日から2日間、国防相会議を開く予定で、ウクライナへの支援強化などについて協議するとしています。

また、先月、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスの海底パイプライン、ノルドストリームで起きたガス漏れについて、NATOは破壊工作によるとの見方を強めていて、ストルテンベルグ事務総長は、バルト海と北海で30隻以上の艦船や航空機などで警戒を強化していることも明らかにしました。

ウクライナ ”より高性能な防空システムの導入 急ぐべき“

ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、軍や治安機関などの幹部を集めた会議を首都キーウで開き、今回のウクライナ各地へのロシア軍によるミサイル攻撃に対する迎撃の成果を確認したうえで、より高性能な防空システムの導入を急ぐべきだという認識で一致しました。

11日に開かれた会議には、ゼレンスキー大統領とレズニコフ国防相などの閣僚のほか、軍や治安機関の幹部らが出席しました。

この中で出席者たちは、今月10日のウクライナ各地へのロシア軍によるミサイル攻撃に対する迎撃の成果を確認したうえで、攻撃による被害を少しでも減らすため、より高性能な防空システムの導入を急ぐべきだという認識で一致しました。

また会議ではモナスティルスキー内相が、ロシア軍の攻撃で破壊されたインフラ施設などの復旧作業の進捗(しんちょく)状況を説明したうえで、今後の攻撃に備えて重要なインフラ施設の防御を強化していく考えを示しました。

さらに、ロシアが一方的に併合した領土の奪還に向けた作戦の内容や、冬場の戦いへの準備を進めていくことなども確認しました。

OHCHR報道官「ロシアの攻撃 国際人道法に違反の可能性」

ロシア軍が10日、ウクライナで首都キーウなど各地への大規模なミサイル攻撃を行ったことについて、OHCHR=国連人権高等弁務官事務所のシャムダサーニ報道官は11日、スイスのジュネーブで記者会見し「今回の攻撃の一部が重要な民間のインフラ施設を標的としたと思われることを大変懸念している。ウクライナの8つの地域で何十棟もの住宅などや、少なくとも12のエネルギー施設を含む多くの民間施設が被害を受けていて、国際人道法に違反している可能性がある」と述べました。

そして、民間人や民間人の生存に不可欠なものを標的とした攻撃は国際人道法で禁じられているとしたうえで「ロシアに対しさらなる攻撃をやめ、民間人や民間のインフラ施設への被害を防ぐために実現可能なすべての方策をとるように求める」と訴えました。

また、ウクライナの人権監視団が攻撃による犠牲者の情報を確認しているほか、人権侵害や国際人道法の違反状況をウクライナ全土で調査し記録するとしています。

10日攻撃「20人死亡 108人けが」ウクライナの非常事態庁

ウクライナの非常事態庁などによりますと、10日のロシア軍の攻撃で、現地時間の11日午後までに市民ら20人の死亡が確認されたほか、108人がけがをしたということです。

また、ウクライナ全土でインフラ施設や高層ビルなど合わせて205か所の施設が被害を受けたとしています。

非常事態庁によりますと、10日はウクライナ全土のおよそ1300の集落で一時停電が起き、このうち180か所ほどでは11日の午後の時点でも停電が続いているということです。

病院などの重要な施設には電力は供給されている一方、各地で復旧作業が続いているということです。