【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10月11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きをまとめました。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

プーチン大統領 UAEのムハンマド大統領と会談

ロシアのプーチン大統領は11日、ロシア第2の都市、サンクトペテルブルクでUAE=アラブ首長国連邦のムハンマド大統領と会談し「あなたの懸念と、現在ウクライナで起きている危機を解決したいというあなたの考えを承知している。ザポリージャ原子力発電所についての懸念もわかっているのでこのあと詳しく話す」と述べ、現地の原発をめぐる状況を含めてウクライナ情勢についてムハンマド大統領と意見を交わす考えを示しました。

プーチン大統領は、先月、中国の習近平国家主席やインドのモディ首相と首脳会談を行った際にも相手側の懸念を理解していると述べて協議を始めていて、今回もムハンマド大統領に対してウクライナ情勢をめぐるロシアの立場を説明するとみられます。

ウクライナ空軍 “ロシア軍が高性能ミサイルなど80発以上使用”

ウクライナで10日相次いだ大規模な攻撃について、ウクライナの国営通信は、空軍の報道官の話として、ロシア軍が高性能な巡航ミサイルなど80発以上を使用したと伝えています。

それによりますと、カスピ海を飛行していた戦略爆撃機から高性能な2種類の巡航ミサイルが発射されたほか、黒海からは海上発射型の巡航ミサイル「カリブル」などが使用されたということです。

こうしたミサイルについてウクライナ空軍の報道官は、1発あたりの費用が600万ドルから1300万ドル、日本円にしておよそ8億7000万円から18億9000万円ほどに上ると指摘しています。

また、発射された80発以上のミサイルのうち、およそ半数にあたる43発は、撃墜に成功したと主張しています。

ウクライナ国防相 ロシアの攻撃非難 各国に支援継続呼びかけ

ウクライナ各地へのロシアによるミサイル攻撃を受けて、ウクライナのレズニコフ国防相は11日、地元メディアに寄稿し、国内のインフラ施設への相次ぐ攻撃が生活環境の悪化につながり、近隣のヨーロッパ各国への避難者の増加につながりかねないとしてロシアを非難しました。

この中で、レズニコフ国防相は「今回の攻撃は、むしろロシア側の緊張と混乱ぶりを雄弁に証明しているようなものだ。結局のところ、ロシアにとって壊滅的な結果を招くことになるだろう」と指摘しています。

そのうえで、発電所などのインフラ施設への攻撃が相次いだことを踏まえ「人々の生活を支えるインフラ施設への攻撃は、新たな避難者の増加につながりかねない。避難先のヨーロッパから戻っていた何十万もの人たちが、再び避難を余儀なくされる」として、ロシアを非難しました。

また、ウクライナ側の迎撃態勢について「今回は、ロシアが攻撃で使ったミサイルやドローンのほぼ半数を迎撃できた。さらなる防空システムなどの供与を受ければ空からの脅威を大幅に減らせる」として、各国に支援の継続を呼びかけています。

10日の攻撃「19人死亡 105人けが」ウクライナ非常事態庁

ウクライナの非常事態庁などによりますと、10日の攻撃で、これまでに市民ら19人が死亡し、105人がけがをしたということです。

防空警報 11日もウクライナ各地で発令

ウクライナでは11日も防空警報が各地で発令されました。

11日は、午前8時前、日本時間の午後2時前に首都キーウなどに防空警報が発令され、その後、西部の都市リビウなど全土に拡大されましたが、キーウを含めてほとんどの地域で日本時間の午後7時半までに解除されました。

防空警報は、10日も午前中に出されたあと、いったん解除されましたが、その後、午後3時すぎから再びおよそ2時間にわたり発令されていました。

岸田首相 G7 緊急首脳会合 出席へ

岸田総理大臣は日本時間の11日夜、オンライン形式で開かれるG7=主要7か国の首脳による緊急会合に出席することになりました。

ロシアによるウクライナの首都キーウなどへのミサイル攻撃を受け、G7が結束して対応していくことを確認する見通しです。

これは松野官房長官が閣議のあとの記者会見で発表しました。

それによりますと、岸田総理大臣は日本時間の11日夜、G7=主要7か国の首脳とオンラインで会談し、ロシアによるウクライナの首都キーウなどへのミサイル攻撃を受けた今後の対応をめぐって意見を交わすということです。

会談では、G7としてロシアによる攻撃を強く非難するとともに、ウクライナへの支援で結束した対応を確認する見通しです。

ウクライナ外務省「ミサイル攻撃の瞬間」映像公開

ウクライナ外務省の幹部は10日、東部ドニプロの住宅地がロシアのミサイル攻撃を受けた瞬間とする車のドライブレコーダーが捉えた映像をSNSで公開しました。

映像では、車が複数台道路を走行していたところ、突然、前方で大きな爆発が2回起き、激しい炎が上がる様子が映っています。

爆発の衝撃で電線が大きく揺れ、周囲にはガラスとみられる破片などが飛び散り、爆発のあった方向に向かっていた車や人々があわてて引き返す様子も捉えられています。

映像を公開したウクライナ外務省の幹部によりますとドニプロでは10日、ロシアのミサイル攻撃により4人が死亡、20人がけがをしたということです。

国連 緊急特別会合 多くの国がロシアによる攻撃を非難

ウクライナ情勢をめぐる国連総会の緊急特別会合では10日、およそ20か国が演説し、多くの国がロシアによる大規模なミサイル攻撃を非難しました。

このうちイギリスのウッドワード国連大使は、「けさ、ロシアはウクライナの民間地域と民間施設に対して、この戦争で最大規模の砲撃を行った」と指摘し、民間人が犠牲となったロシアの攻撃を批判しました。

また、ロシアとウクライナの仲介役を務めてきたトルコのシニリオール国連大使も「全世界が戦争の終結を呼びかけるなか、わたしたちは再び衝撃的なニュースで目を覚ました。市民が死傷したロシアの攻撃は深く憂慮すべきであり、容認できない」と非難しました。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は、ウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で起きた爆発はウクライナ側による破壊工作だとしたうえで「ウクライナ側と、戦争をするよう仕向けた欧米側に、われわれの報復措置の原因がある」と主張しました。

東京市場で1ドル=145円台後半に 情勢緊迫化でドル買いも

先週末に発表されたアメリカの雇用統計で失業率が改善したことで、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会による大幅な利上げが続くとの見方が広がっています。

このため、連休明けの11日の東京外国為替市場は、日米の金利差が今後、拡大するという意識から、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は145円台後半まで値下がりしています。

市場関係者は「日米の金利差を意識したドルを買う動きに加え、ウクライナで大規模なミサイル攻撃があったことを受けウクライナ情勢が緊迫していることから有事に強いとされるドルを買う動きもみられる。一方、政府・日銀による市場介入が再び行われることへの警戒感も強く、投資家が当局の反応に注目している」と話しています。

一方的な「4州併合」 国連の緊急特別会合開催

ロシアがウクライナの4つの州を一方的に併合するとしたことについて、ロシアを非難し即時撤回などを求める決議案を話し合う国連総会の緊急特別会合が開かれ、はじめにウクライナのキスリツァ国連大使が「ロシアが恐れる唯一のことは、国連憲章を守りすべての国の権利を守るため、われわれが強く団結することだ」と述べ、採決で賛成するよう求めると議場から拍手が起きました。

これに対しロシアのネベンジャ国連大使は「住民の選択はロシアとの未来を支持するもので、われわれはそれを尊重する」と述べ、正当化しました。

このあと演説した欧米をはじめ各国からは、一方的な併合はウクライナの主権と領土の侵害であり認めてはならないという意見や、ロシア軍によるウクライナ各地への大規模なミサイル攻撃を非難する意見が相次ぎました。会合は12日に再開され、各国の演説のあと決議案の採決が行われる予定です。

ゼレンスキー大統領が動画公開「12人死亡 80人以上けが」

動画の中でゼレンスキー大統領はウクライナに発射された84発のミサイルのうち43発を撃ち落としたほか、ロシアのドローンについては24機のうち13機を撃ち落としたとしたうえで、その後もイラン製のドローンを撃墜したというメッセージを受け取り続けていると明らかにしました。

そして、エネルギー関連施設以外にも公園や美術館、大学の施設などが被害を受けたとしたうえで「ロシア軍は朝のラッシュアワーにわざとこのような攻撃をした。これは典型的なテロリストのやり方だ。より多くの恐怖をあおり、多くの人に動揺を与えたかったのだ」と述べ、ロシアを強く非難しました。

そして「われわれは脅しには屈しない。むしろますます団結を強めている」と述べ、被害を受けた施設の復旧を急ぐとともに、反転攻勢を続ける考えを強調しました。

ミサイル攻撃で各国首脳などから反応

アメリカのバイデン大統領は「市民を殺傷し軍事施設以外を標的とする攻撃は、プーチン大統領によるウクライナの人々に対する違法な戦争の徹底的な残虐性を示すものであり強く非難する」との声明を発表しました。

この中でバイデン大統領は「家族や愛する人々を無差別に殺害された人々に哀悼の意を表するとともに負傷したかたがたの回復を心からお祈りする」としています。

そして「ロシアによる攻撃はウクライナの人々とともに立ち上がるという我々の連帯をさらに強めるだけだ。同盟国やパートナーとともに、プーチン大統領とロシアによる残虐行為と戦争犯罪の責任を追及し、ウクライナ軍が国と自由を守るために必要な支援を提供し続ける」としたうえでロシアに対し直ちに侵略をやめてウクライナから撤退するよう求めました。

また、イギリスの首相官邸によりますとトラス首相は10日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談しロシアによるウクライナ各地への攻撃を強く非難するとともに、軍事面などで引き続きウクライナを献身的に支えると強調しました。

会談後、トラス首相はツイッターに「市街地への驚くほどひどい攻撃は、プーチンが自暴自棄になっている明確な兆候だ。イギリスは、自由のために戦うウクライナを支え、重要な軍事物資を提供し続ける」と書き込み、全面的な支援を約束しました。

またゼレンスキー大統領も「ウクライナへの国際政治と防衛面での支援がイギリスのリーダーシップによって強固なものになると期待している。とりわけ領空の防衛とロシアのさらなる孤立化に向けてだ」と書き込みました。

さらに国連のグテーレス事務総長は10日、報道官を通じて声明を発表し「多くの市民が死傷したと伝えられている大規模なミサイル攻撃に強い衝撃を受けている」としたうえで「容認できない戦争の激化であり、いつもと同じく、市民が最も高い代償を払っている」と非難しました。

プーチン大統領 混乱続く予備役の部分的動員で言及

ロシアのプーチン大統領は10日、先月行われた統一地方選挙で新たに選ばれた知事などとオンライン形式で会議を開き「動員を進める際には、法律を順守することを常に確認するとともに、動員された人々の家族に必要な支援を提供して欲しい」と述べ予備役の部分的な動員については法律に従って行うよう指示しました。

ロシアでは、高齢者など対象ではない人まで動員される実態が伝えられるなど反発が広がっていて、プーチン大統領としては動員をめぐる混乱をおさえたいねらいとみられます。