新型コロナ 高齢者施設の感染者の多くが入院できず施設で療養

新型コロナウイルスの第7波の高齢者施設への影響について、都内の協議会がアンケート調査を行ったところ、入所型の施設では、感染しても医療機関に入院できなかった利用者が多かったことがわかりました。協議会は、施設内で療養する利用者が多く、感染拡大を防ぐことが難しい実態が浮かび上がったとしています。

この調査は9月、東京都高齢者福祉施設協議会が都内の高齢者施設を対象にインターネット上で行い、特別養護老人ホームなど入所型の施設では、対象全体の47%にあたる273の施設が回答しました。

それによりますと、いずれも累計で、ことし7月1日からの2か月間で新型コロナに感染した施設の利用者は、159施設で1795人だった一方、職員の感染者も155施設で1489人にのぼり職員の間でも感染が広がったことがわかりました。

また、感染した利用者のうち、医療機関に入院できたのは299人だったのに対し、保健所で調整が行われたものの、入院できなかった利用者はその2倍近い570人にのぼりました。

さらに感染対応で困ったことについて複数回答で尋ねた項目では、最も多い135施設が「職員の確保」を、次いで103施設が「入院ができない」をあげています。

このほかクラスターについては、回答したうち3割にあたる95施設が発生したと答え、クラスターが発生しやすい理由として、利用者が自分で感染対策を行うのが難しいことなどをあげています。
今回の結果について、東京都高齢者福祉施設協議会の鶴岡哲也副会長は、「第7波では入院できずに施設内で療養せざるをえない入所者が多く、感染拡大を防ぐことが難しい実態が明らかになった。こうした事態を想定し、研修などを通じて職員が一定のレベル以上の感染対策を確実に行えるようにして、いかに早く収束できる体制を作っていけるかが重要になる」と話しています。

“対策しても感染拡大防ぎ切るのは困難”

新型コロナウイルスの第7波で、東京 多摩市にある特別養護老人ホームでは、対策をしても施設内での感染拡大を防ぎ切るのが難しい事態に直面しました。
この施設では、ことし8月1日、3人の入所者が新型コロナに感染していることが確認されました。

このため、このフロア内を防火扉で仕切って感染者や濃厚接触者と、それ以外の人の居住スペースを分ける「ゾーニング」と呼ばれる感染対策を行いました。

しかし、8月16日までにこのフロアでは入所者の感染が24人まで増え、クラスターとなりました。
一方、感染した入所者を医療機関に入院させるため保健所と調整しましたが、医療機関がひっ迫していたため、入院できたのは3人だけだったということです。

また同じ時期にこのフロアでは介護を行う職員7人が感染し、出勤できなくなる職員も相次いだということです。

その後、感染者は増えず、9月2日に入所者の最後のひとりが経過観察の期間を終えましたが、施設では、第7波を通じて感染対策をしても施設内での拡大を防ぎ切るのが難しいことを実感したということです。

特別養護老人ホーム「白楽荘」の鶴岡哲也施設長は、「初動の対応が非常に大切で、施設内での療養を覚悟していかに感染を広げずに早く収束させるかが重要だ」と話しています。