プーチン大統領 ウクライナ4州を一方的に併合 対立一層深まる

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの東部や南部の4つの州を併合すると定めた「条約」だとする文書に署名し、一方的な併合に踏み切りました。
これに対して、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請する方針を表明したほか、欧米側も相次いでロシアへの追加制裁を発表し、双方の対立は一層深まっています。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は9月30日、日本時間の夜、モスクワのクレムリンで行われた式典で演説しました。

この中でプーチン大統領は、▽ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、▽南東部ザポリージャ州、▽南部ヘルソン州の合わせて4つの州で強行された「住民投票」だとする活動について、「住民は、自分たちの選択を行った。この地域に住む人々は永遠にロシア国民だ」などと述べ、ロシアがウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言しました。

そして演説のあと、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に、4つの州の親ロシア派勢力の幹部とともに署名しました。

一方、プーチン大統領は演説で、併合の正当性を改めて主張したうえで、「われわれはウクライナに、即時停戦し、交渉のテーブルに戻ることを求める。われわれの準備はできている。しかし、4つの州の人々による選択について議論の余地はない。ウクライナは、この地域の住民の選択を尊重すべきで、これが唯一の平和への道となり得る」と述べ、ウクライナ政府に対して交渉に応じるよう迫りました。

また、「われわれはあらゆる力と手段を講じてロシアの領土を守る」と述べ、核戦力を念頭に、ウクライナや欧米をけん制したものとみられます。

この後、プーチン大統領は、クレムリン近くの赤の広場で行われた併合に関連するイベントに、親ロシア派勢力の幹部と登壇し、集まった支持者の前で「住民は、歴史的な故郷であるロシアと一緒になることを選択した。おかえりなさい」と述べました。
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATOへの加盟を申請する方針を発表し、対抗姿勢を鮮明にしました。

またアメリカのバイデン大統領が、「この併合にはまったく正当性がない」と非難するなど、欧米側も併合を認めない姿勢を強調し、追加制裁を発表していて、双方の対立はいっそう深まっています。

キーウ市民から反発の声

ロシアのプーチン大統領がウクライナの東部や南部で一方的な併合に踏み切ったことについて、ウクライナの首都キーウでは市民から反発の声が上がっています。

このうち66歳の男性は、「ロシアのやり方は分かりきっていて、併合宣言はただ無視するだけだ。何も心配していないし、われわれは戦い続ける」と話していました。

また31歳の女性は、「4つの州は私たちの領土であり、プーチン大統領に渡したくはありません。その地域に住む人たちは命の危険を感じ、ロシア兵の言うがままになっていると考えると、とてもこわい」と話していました。

さらに30歳の男性は、「ロシアが行った併合の手続きはすべてが偽物で、法的な価値もなく、気にとめるべきではありません。残念なことに、併合された地域では住民が事実上の捕虜となってしまいましたが、われわれが領土を奪還すれば、また元に戻ります」と話していました。

併合支持するルハンシク州の市民の声

親ロシア派の勢力が支配するウクライナ東部ルハンシク州では、巨大なスクリーンが用意され、プーチン大統領の演説の様子などが映し出されました。

スクリーンの前には、併合を支持する人々がロシアの旗を手に集まり、プーチン大統領が一方的に併合を宣言すると、拍手したり、歓声をあげたりしていました。

また街中には「永遠にロシアと共に」と書かれた横断幕も設置されていました。

地元の女性は、「やっとロシアの一部になりました。勝利はわれわれのものとなり、すべてうまくいくでしょう」と話していました。

また地元の男性は、「きょうの出来事は世界的に見ても意味があります。われわれが犠牲のすえに獲得したものです」と話していました。

米 バイデン大統領「アメリカも世界も併合を認めない」

ロシアによる一方的な併合について、アメリカのバイデン大統領は9月30日、演説で「アメリカや同盟国は、プーチンの無謀な言葉や脅しにおじけづくことはない。アメリカは併合を認めないし、世界のどの国も同じだ」と非難しました。

そのうえで「プーチンの行動は、彼が難しい状況に置かれていることを示している。隣国の領土を奪って、そのまま済まされるようなことがあってはならない」と述べ、ウクライナへの支援を継続する考えを強調しました。

またブリンケン国務長官は、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請する方針を表明したことについて「NATOの門戸は開かれている」と述べ、NATOへの加盟申請はウクライナに対しても開かれているとの立場を示しました。

ブリンケン長官は、ロシアが核戦力の使用も辞さない構えを示していることについては「非常に無責任だ」として、核保有国の責任を放棄していると非難しました。
そのうえで「われわれは、ロシアが核兵器を使用しようとしているか、注意深く監視しているが、そうした行動は確認されていない」と述べ、警戒を続ける考えを示しました。

米 ロシア中央銀行総裁らに制裁

アメリカのバイデン政権は、ロシアによる一方的な併合を受けて9月30日、追加の制裁を発表しました。

このうち財務省は、
▽ロシア中央銀行のナビウリナ総裁や、
▽議会議員278人、
それにミシュスチン首相やショイグ国防相の家族などを資産凍結の対象に加えたとしています。

また商務省は、ロシアやウクライナ南部クリミアの57の団体について、ウクライナへの軍事侵攻に関与したとして、アメリカ製品の輸出規制の対象に加えたとしています。

ブリンケン国務長官は30日、会見でロシアによる一方的な併合を非難したうえで、「ロシアを政治的、経済的に支援するいかなる個人や団体、国に対しても、責任をとらせる」として、ロシアやベラルーシを支援する外国企業も制裁の対象になると警告しました。