【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10月1日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10月1日(日本時間)の動きをお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ側 東部ドネツク州要衝リマン奪還に向けて攻勢強める

ウクライナ東部ドネツク州の要衝、リマンについて、隣接するルハンシク州のハイダイ知事は1日、「ウクライナ軍がロシア側の兵士5000人以上を包囲した」としてウクライナ側は、リマン奪還に向けて攻勢を強めていると明らかにしました。

また、リマンにいるロシア側の兵士らは、投降を願い出たものの上官から認められないでいるとしています。

一方、ドネツク州の親ロシア派勢力の幹部、イゴール・ギルキン氏は9月30日、SNSへの投稿で「リマンからの安全な撤退を支援する十分な部隊が、脱出経路に送られていない」と書き込み、応援の部隊が不足しているため脱出が困難になっていると訴えました。

さらに「これはおそらく、司令部の愚かさやプロ意識の欠如を意味している」と書き込み、ロシア軍の司令部を批判しました。

一方、ギルキン氏は、ロシアでは、動員を逃れようと出国する人が相次いでいることについて、9月28日の投稿で「私たちの軍や後方部隊の士気を下げているものの1つは、多額の金を払って逃げ出す『上級国民』と、逃げようがない『底辺』との違いだ」と書き込み、動員をめぐる不平等な方針は混乱を招くだけで、戦況の好転につながっていないとプーチン政権の対応を批判しました。

ザポリージャ原発「安全管理責任者がロシア側に拘束」SNSで声明

ウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所を管理する原子力発電公社エネルゴアトムは1日、原発の安全管理の責任者であるムラショフ氏がロシア側に突然連れ去られ、安否が分からなくなっていると明らかにしました。

エネルゴアトムのペトロ・コティン総裁は1日、SNSで声明を発表し、「9月30日午後4時ごろ、ザポリージャ原発のムラショフ氏が発電所から街なかに向かう途中、ロシア側に拘束された。ムラショフ氏は車を止められ、目隠しをされた状態で連れ去られた」としてムラショフ氏がロシア側に突然連れ去られ、安否が分からなくなっていると明らかにしました。

そのうえでコティン総裁は「ムラショフ氏はザポリージャ原発の安全管理を担う責任者であり、彼を拘束することはヨーロッパ最大規模の原発を危険にさらす行為だ」と非難しロシア側に対し、ムラショフ氏を直ちに解放するよう求めました。

また、IAEA=国際原子力機関もロシア当局に説明を求めるなど確認を進めているとしていて、ムラショフ氏の拘束は、ザポリージャ原発をめぐる新たな懸念材料となっています。

プーチン大統領 習近平国家主席に祝電

ロシアのプーチン大統領は1日、中国の建国記念日にあたる「国慶節」にあわせ、習近平国家主席に祝電を送りました。

ロシア大統領府によりますと、このなかでプーチン大統領は「ロシアと中国の関係は、包括的なパートナーシップと戦略的協力の精神のもとで劇的に発展している。不穏な国際情勢にもかかわらず、両国は、より民主的で公正な世界秩序を構築し、現代の脅威に対抗するため、さまざまな分野で協力してきた。両国民の利益のために、対話と緊密な協力を継続する用意がある」として、中国との関係を強化したい考えを強調しています。

そのうえで、今月開かれる中国の共産党大会について「成功を祈念する」としています。

プーチン大統領は9月には中央アジアのウズベキスタンで習主席と対面で会談していて、ウクライナ情勢でロシア軍が劣勢に陥り、欧米との対立が深まる中、ロシアは、中国と幅広い分野で関係を強化しようと、接近をはかっています。

トルコ外務省 ロシアによる一方的併合に反対姿勢明確に

ロシアがウクライナの4つの州について一方的な併合に踏み切ったことを受けてロシアとウクライナの仲介役を務めてきたトルコの外務省は30日、声明を発表し「国際法の原則への重大な違反であり容認できない」としています。

また声明では「トルコは2014年に違法に行われたクリミア併合も認めておらず、あらゆる機会にウクライナの領土の一体性、主権に対する支持を表明してきた」としています。

トルコはこれまでロシアとウクライナの仲介役として欧米の制裁には加わらず、軍事侵攻後もプーチン大統領と対面での会談をたびたび行うなど独自の外交を展開してきましたが、今回のプーチン政権の対応については反対する姿勢を明確にしました。

ドネツク州リマン ウクライナ軍 3日以内に包囲または奪還成功か

ウクライナ東部ドネツク州の重要な拠点の1つ、リマンについて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は30日、ウクライナ軍が3日以内に包囲するか、または、奪還に成功する可能性が高いという見方を示しました。

リマンはロシア軍がウクライナ東部へ進軍したり、部隊に補給を行ったりする際の足がかりにしてきたと指摘されていて「戦争研究所」は親ロシア派勢力の幹部の発言などをもとに、リマン周辺の2つの集落からロシア軍がすでに撤退したという分析を示しています。

またロイター通信は専門家の話として、ウクライナ軍が要衝のリマンを奪還すればウクライナ東部の全域を掌握するというプーチン大統領の試みの失敗につながるという見方を伝えています。

ゼレンスキー大統領は30日に公開したビデオメッセージの中で「ウクライナ軍は東部で重大な成果をあげた。リマンで何が起きているか誰もが耳にしている」と述べ、領土の奪還を続ける構えを強調しました。

ゼレンスキー大統領 “ロシア軍 市民の車列攻撃 30人死亡”

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日に公開したビデオメッセージで、南東部ザポリージャ州で、市民の乗った車の列がロシア軍による攻撃を受け、これまでに30人が死亡し、およそ100人がけがをしたと明らかにしました。

現地からの映像では食料品などが入った買い物袋が地面に落ちていたほか、複数の車の窓ガラスが割れている様子が確認できます。

ウクライナ当局によりますと、訪れていた人たちはロシア軍の占領地域にいる親戚を訪ねたり、物資を届けたりする準備をしていたということです。

現地を視察したモナスティルスキー内相は「この日はおよそ50台の車があった。このあたりを見回すと、軍事的なものは1つもなく、今までもなかった。お年寄りや子連れの女性など市民だけが毎日ここに来てロシア軍が一時的に占領する地域へ行こうとしていた」と述べました。

ゼレンスキー大統領 日本の明確な支持に謝意

ウクライナ大統領府によりますと、ゼレンスキー大統領は30日、岸田総理大臣との電話会談で、ウクライナの主権と領土の保全に対する日本の明確な支持に謝意を示したということです。

また、これまでに日本側が提供した防弾チョッキや防護服など、殺傷能力のない装備品についても謝意を示したうえで、「完全な勝利まで、重要かつ幅広い支援が継続され、拡大することを望んでいる」とさらなる支援を訴えました。

ジョージア大統領「正当性がなく、将来性もない」

ロシアによる一方的な併合について、14年前、ロシアの軍事侵攻を受けたジョージアのズラビシビリ大統領は「偽の住民投票を正式に承認し、強制的な併合の裏付けにしようとしても、正当性がなく、将来性もない」と30日、ツイッターに投稿し、ロシアを非難しました。

そのうえで、「こうした重大な国際法違反をわれわれは認めない。ウクライナの領土の一体性を改めて全面的に支持する」と投稿しました。

ジョージアは14年前、ロシアの軍事侵攻を受け、一部の地域には今もロシア軍が駐留しています。

ゼレンスキー大統領 併合を非難する動画を公開

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、公開した動画で、ロシアによる一方的な併合について、「モスクワではまた茶番劇を演じていた。何かを祝い、何かしゃべっていた」と非難しました。
また「偽の住民投票は、主権国家に対する侵攻の一部だ。この茶番劇を計画し、実行した者は、全員、責任を問われる」と述べました。
そのうえで「われわれは全土を解放しなければならない。そうすることが、国際法や人の価値観は、ロシアのような横柄なテロ国家に破壊されないことを示す、最大の証拠になる」と述べ、領土の奪還を続ける考えを改めて示しました。

併合を支持する東部ルハンシク州の市民

親ロシア派の勢力が支配するウクライナ東部ルハンシク州では、巨大なスクリーンが用意され、プーチン大統領の演説の様子などが映し出されました。
スクリーンの前には、併合を支持する人々がロシアの旗を手に集まり、プーチン大統領が一方的に併合を宣言すると、拍手したり、歓声をあげたりしていました。

また街中には「永遠にロシアと共に」と書かれた横断幕も設置されていました。

地元の女性は「やっとロシアの一部になりました。勝利はわれわれのものとなり、すべてうまくいくでしょう」と話していました。

また地元の男性は「きょうの出来事は世界的に見ても意味があります。われわれが犠牲の末に獲得したものです」と話していました。

プーチン大統領 秋の徴兵に関する大統領令に署名

ロシア大統領府は、プーチン大統領が毎年2回、春と秋に行われる徴兵のうち、秋の徴兵に関する大統領令に署名したと30日、発表しました。

秋の徴兵は、11月1日から12月31日にかけて行われ、18歳から27歳までの12万人を徴集するということです。

ロシアでは、ことしの春の徴兵でも13万4500人を徴集すると発表しています。

一方、ロシアのメディアによりますと、ロシア国防省の高官は「徴集兵たちとその両親を安心させたい。この徴兵はウクライナでの特別軍事作戦とは全く関係がない。法律で規定された期間内に、計画どおりに行われる」と述べ、徴集された兵士は、ロシア国内で兵役に就くと強調したということです。

プーチン政権が発表した予備役の部分的な動員を巡っては対象でない人まで招集されていると伝えられ、国内で混乱が広がっていることから、国防省としても市民の懸念の高まりに神経をとがらせているものとみられます。

プーチン大統領「赤の広場」でも演説

ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナの東部や南部の4つの州の併合を定めた「条約」だとする文書に署名したあと、クレムリン近くの赤の広場で行われた、併合に関連するイベントに参加しました。
プーチン大統領は、4つの州の親ロシア派の幹部と登壇し、集まった支持者の前で「4つの州の人々は住民投票に参加し、歴史的な故郷であるロシアと一緒になることを選択した。おかえりなさい」と述べました。

そのうえで「この勝利は誰のおかげか、われわれは知っている。英雄的な兵士や将校、東部ドンバスの民兵、志願兵のおかげだ。彼らの英雄的な行為や犠牲に感謝したい」と述べました。

プーチン政権が予備役の動員を発表したあと、ロシア国内では懸念や混乱が広がり、プーチン大統領としては、今回の一方的な併合を軍事作戦の成果として訴えるとともに、動員に対する国民の理解をつなぎとめたいねらいもあるとみられます。

G7外相ら ロシア非難 追加の制裁科す声明

ロシアによる一方的な併合を受けて、G7=主要7か国の外相らは、日本時間の10月1日に声明を発表し、「可能なかぎり最も強いことばで一致して非難する」として、ロシアに対し追加の制裁を科すことを表明しました。

声明では、「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争と ウクライナの主権と領土の一体性に対する継続的な侵害に対し、可能なかぎり最も強いことばで一致して非難する」としています。
そのうえで、「『併合』と称されるものも、銃を突きつける中で行われた偽りの『住民投票』も決して認めない。すべての国に対し、武力により領土を取得しようとする試みを 明確に非難するよう求める」としています。

そして、「ロシアに政治的・経済的な支援を提供する個人や団体に対し、さらなる経済的コストを課す」として、ロシアに対し追加の制裁を科すことを表明しました。

仏大統領府「ともにロシアの侵略に立ち向かう」

フランス大統領府は30日、声明を発表し「ロシアによる非合法な併合を強く非難する。これは国際法とウクライナの主権に対する重大な侵害だ。フランスはウクライナが自国の領土全体で完全に主権を回復できるよう、ともにロシアの侵略に立ち向かう」としています。

米 バイデン大統領「この併合には全く正当性がない」

ロシアによる一方的な併合について、アメリカのバイデン大統領は30日、声明を発表し、「ロシアは国際法に違反し、国連憲章を踏みにじった。この併合には全く正当性がない。アメリカは国際的に認められたウクライナの国境を常に尊重していく」と非難し、併合を認めない考えを示しました。
そのうえで「ロシアを非難し、責任を取らせるよう国際社会を結集させていく。アメリカはウクライナが自衛のために必要なものを提供し続ける」として今後も軍事支援を続けていくと強調しました。

イタリア 右派党首「新たな帝国主義的価値観示すものだ」

イタリアで9月に行われた議会選挙の結果、上下両院で第1党となった右派政党「イタリアの同胞」のメローニ党首は30日、ロシアによる一方的な併合に関するコメントを出しました。
この中で「暴力的な軍事占領下で実施された偽の国民投票を経て行われた併合は、法的にも政治的にも価値がない。ヨーロッパ大陸全体の安全保障を脅かす、新たな帝国主義的かつソビエト的価値観を、改めて示すものだ」として、ロシアのプーチン大統領を名指しで批判しました。

ゼレンスキー大統領 NATOへ加盟申請方針を表明

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、安全保障政策を協議する国家安全保障・国防会議を開催したあと、声明を発表し、NATO=北大西洋条約機構への加盟を申請する方針を表明しました。
声明では「ウクライナは、NATOの加盟国との信頼関係があり、互いに助け合っている」などとしたうえで、ことし5月に加盟を申請した北欧のフィンランドやスウェーデンと同じように、手続きを開始したいとしています。
一方で、声明では「加盟のためには、すべての加盟国の支持が必要だということを理解している」としています。

EU「この違法な併合を決して認めない」

EU=ヨーロッパ連合は30日、声明を発表し、ロシアによる一方的な併合を非難しました。
声明では「ルールに基づく国際秩序を損ない、独立や主権、領土の一体性といったウクライナの基本的な権利をはなはだしく侵害することで、ロシアは世界の安全を危険にさらしている。われわれはこの違法な併合を決して認めない。すべての国と国際機関にも受け入れないよう求める」としています。
そして、「ウクライナには、国際的に承認された国境内で占領された地域を解放する権利がある」としたうえで、今後もロシアへの制裁を強化し、ウクライナへの経済的、軍事的な支援を続けていくと強調しました。

林外相「国際法に違反する行為 強く非難」

ロシアのプーチン大統領の署名を受けて、林外務大臣は30日に談話を発表し、「ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し国際法に違反する行為であり、決して認められてはならず、強く非難する。武力によって領土を取得しようとする試みにほかならず、無効であり、国際社会における法の支配の原則に正面から反する」としています。
そのうえで「力による一方的な現状変更の試みを決して看過できず、引き続きロシアに対し、即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて強く求め、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら強力な対ロ制裁と、ウクライナ支援の2つの柱にしっかり取り組んでいく」としています。

プーチン大統領 ウクライナ4州「併合条約」に署名

ロシアのプーチン大統領は、日本時間の30日の夜、モスクワのクレムリンで行われた式典で、ウクライナの東部や南部の4つの州について、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。

ロシアのプーチン大統領は、日本時間の30日の夜9時すぎから式典で演説し、▽ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、▽南東部ザポリージャ州、▽南部ヘルソン州の合わせて4つの州で強行された「住民投票」だとする活動について「住民は、自分たちの選択を行った。この地域に住む人々は永遠にロシア国民だ」などと述べ、ロシアがウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言しました。

そして演説のあと、4つの州にいる親ロシア派勢力の幹部とともに、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。