プーチン政権「住民投票」の結果発表へ 併合手続き進めるか
ロシアの国営メディアは、親ロシア派の勢力がロシアへの一方的な編入を狙ってウクライナの東部や南部で行った「住民投票」だとする活動の「開票」が一部で終了したと伝えています。
編入に「賛成」する票が大きく上回っていると主張していて、プーチン政権は、一方的な併合に向けて手続きを始めるものとみられます。
ロシアのプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力は、今月23日からウクライナの東部や南部の支配地域でロシアへの一方的な編入を狙った「住民投票」だとする活動を強行し、ロシアの国営メディアは27日、「投票」は終了し、「開票」も一部で終わったと伝えています。
国営メディアは、これまでに集計したとする情報を伝えていて、東部のドネツク州とルハンシク州、南東部ザポリージャ州、南部ヘルソン州で、いずれもロシアへの編入に「賛成」する票の割合が80%から90%に上り、「反対」を大きく上回っていると主張しています。
このうち、ルハンシク州の親ロシア派の指導者パセチニク氏は27日、ロシア国営のタス通信に対し「きょうかあすモスクワに行き、ロシアへの編入を検討するようプーチン大統領と話す準備をしている」と述べるなど、それぞれの州の親ロシア派の勢力は、今回の結果を受けてプーチン政権に対して編入を要請するものとみられます。
プーチン大統領は27日、「住民投票は、地域の住民を救出するため行われている」と主張していて、イギリス国防省は、プーチン大統領が今月30日、一方的な併合を宣言する可能性があると指摘しています。
また、ロシアのマトビエンコ上院議長は来月4日、議会上院で併合に関する法案を審議する考えを示すなど、プーチン政権は、一方的な併合に向けて手続きを始めるものとみられます。
こうした動きに対して、ウクライナ政府や国際社会からは、「偽の住民投票による併合は決して認められない」などとロシアを非難する声が強まっています。
プーチン大統領「投票は住民のため」
ロシアのメディアは、ロシアでは、この結果を根拠として、議会での決議を経て、この地域の併合の手続きが行われる可能性があると伝えているほか、イギリス国防省も27日、「プーチン大統領が今月30日、ロシア議会で演説する予定だ」としたうえで一方的な併合を宣言する可能性があると指摘しています。
ウクライナ政府などから非難の声
「住民投票」の経緯
ロシア軍が侵攻当初から支配地域を拡大した南部へルソン州や南東部ザポリージャ州について、ことし4月、ウクライナ国防省の報道官は「ロシアが併合しようといわゆる『住民投票』を準備している」として、警戒を強めていることを表明していました。
5月9日は、旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」で、ロシアのプーチン政権が「住民投票」を経て支配の既成事実化を進め、国内向けに侵攻での勝利を強調しようとしているのではないかという見方が出ていました。
しかし、住民の抵抗やウクライナ軍の抗戦を前に「住民投票」は実施されず、その後も準備の動きと延期の情報が繰り返し伝えられました。
先月には、東部や南部の親ロシア派の幹部が、ロシアで統一地方選挙が行われた今月11日に合わせて実施の意向を示していましたが、ウクライナ軍が南部で反転攻勢を強める中、投票は行われませんでした。
しかし、今月に入って、ウクライナ軍が東部ハルキウ州でロシア側から領土を奪還し、反転攻勢の動きが鮮明になると、親ロシア派勢力は20日、今月23日から27日にかけて「住民投票」とされる活動の実施を決めたと一方的に表明しました。
何度も延期されてきた「住民投票」の実施を急きょ決定した形で、ロシアの独立系ネットメディア「メドゥーザ」は、プーチン政権が支配地域の一方的な併合を急ぎ、ロシアの領土だと誇示することで、ウクライナ軍のさらなる前進を抑え込もうとしたという見方を示しています。
ロシア 予備役の部分動員発表後 出国の動き広がる
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」が25日に撮影した衛星画像では、ロシアから隣国のジョージアに向かう幹線道路が100台以上の乗用車で渋滞していました。
ロシアから出国しようと大勢の市民が押し寄せ、出国手続きの順番を待って並んでいるということで、拡大した画像では車を出て休憩するような市民の姿も見られます。
また、IT大手グーグルの地図アプリ=グーグルマップによりますと、ロシアとジョージアの国境付近では27日もおよそ10キロの長い渋滞が発生していました。
イギリスの公共放送BBCは、ロシアからジョージアに入国するために「20時間以上待つ人もいる」と伝えています。
さらに、23日に撮影された別の衛星画像では、ロシアと隣国モンゴルの国境地帯でも長い渋滞が発生し、ロシア市民が出国する動きとみられます。