【国葬】今回の国葬 過去の首相経験者の葬儀内容 ほぼ踏襲

安倍元総理大臣の国葬が27日、行われます。
今回の「国葬」は、過去の総理大臣経験者の葬儀内容が、ほぼ踏襲されています。

国葬の流れ

▽「国葬」は、27日午後2時に始まり、安倍元総理大臣の遺骨が会場に到着したあと、葬儀副委員長の松野官房長官が開式の辞を述べることになっています。

▽国歌の演奏や黙とうが行われたあと、安倍氏の生前の活動を政府がまとめた映像が上映されます。

▽続いて、岸田総理大臣、細田衆議院議長、尾辻参議院議長、戸倉最高裁判所長官の三権の長に加え、友人代表として、第2次安倍政権で官房長官を務めた菅前総理大臣が追悼の辞を述べることになっています。

▽その後、天皇皇后両陛下と上皇ご夫妻の使いによる拝礼が行われ、参列者による献花が行われます。

国葬とは

国葬とは、一般的に国が主催し、すべて国費で賄われる葬儀のことを指します。
日本では、明治維新から終戦までの間、皇室以外でも、
▽伊藤博文や、
▽山県有朋といった総理大臣経験者のほか、
▽日露戦争で連合艦隊司令長官を務めた東郷平八郎や、
▽太平洋戦争中に戦死した連合艦隊司令長官の山本五十六などが、
国葬の対象になりました。

戦後、今の憲法が施行されてからは、国葬の具体的な対象者や手続きなどを定めた法律は制定されておらず、皇室以外で「国葬」の対象となったのは、吉田茂元総理大臣だけで、生前の功績を考慮して、閣議決定に基づいてとりおこなわれました。

総理大臣経験者が「国葬」の対象となるのは、これが2例目です。

海外で国葬は

国家元首が国葬の対象となることが多く、例えば、
▽アメリカでは大統領経験者が、
▽イギリスでは先日行われたエリザベス女王のように、王室が対象になってきました。

ただ、
▽イギリスでは万有引力の法則を発見した科学者のニュートンや、
▽第2次世界大戦を勝利に導いたチャーチル元首相などの葬儀も国葬として行われました。

また、
▽ジャマイカでは「レゲエの神様」として知られるボブ・マーリーが、
▽ブラジルではF1の伝説的なドライバーで、レース中に事故死したアイルトン・セナが、国葬の対象になっています。

国葬の法的根拠は

戦前の大日本帝国憲法のもとでは、1926年に公布された国葬令という勅令があり、皇室以外でも、国家に対する「偉勲=大きな功績」があれば、天皇の「特旨=特別なおぼし召し」によって、国葬が行われることが定められていました。

ただ、この国葬令は、今の憲法が施行されたのに伴って効力を失い、その後、国葬の具体的な対象者や手続きなどを定めた法律は制定されていません。

1967年に実施された吉田茂元総理大臣の「国葬」は、政府が「葬儀は、国において行い、故吉田茂国葬儀と称する」などと閣議決定し、これに基づいて行われました。

今回の国葬も、これを踏襲していて、政府は「葬儀は国において行い、故安倍晋三国葬儀と称する」などと閣議決定しました。

政府は、そもそも「国葬」は、国民の権利を制限したり、義務を課したりするものではないため、行政権の裁量で実施できるものだと説明しています。
そして、内閣府設置法では、内閣府の所掌事務として「国の儀式に関する事務」が明記されていて、「国葬」も「国の儀式」に含まれると解釈されることから、行政権の裁量で「国葬」を実施できることは、法律上も明確だとしています。

これに対し、野党などからは「内閣府設置法では、『国葬』に関する具体的な定めがなく、法的根拠が明確ではない」といった指摘も出ています。

政府は、先に行われた国会の閉会中審査などで「国葬」の直接的な根拠となる法律を新たに整備する必要はなく、「国葬」の対象者についても「その時の内閣が、さまざまな事情を総合的に勘案し、そのつど判断する」などとして、具体的な実施基準を設ける必要もないという見解を示しています。

今回の国葬の費用は

「国葬」にかかる費用をめぐって政府は8月に「これまでの葬儀の例と同様、一般予備費の使用を想定している」と説明したうえで、今年度予算の予備費から、およそ2億5000万円を支出することを閣議決定しました。

内訳としては
▽会場の設営費などとして、およそ2億1000万円
▽会場やバスの借り上げ料などとして、およそ3000万円が盛り込まれています。

一方、周辺の警備や外国要人の接遇にかかる費用は含まれておらず、野党側は「国葬」をめぐる国会の閉会中審査の前に大枠を示すよう求めました。

このため、政府は9月6日、すでに支出を決めている、およそ2億5000万円のほか、警備費や外国要人の接遇費など14億円余りがかかることから、全体の費用の概算が16億6000万円程度になるという見通しを示しました。

14億円余りの追加費用については、
▽警備費として8億円程度
▽外国要人の接遇費として6億円程度
▽自衛隊の儀じょう隊が使用する車両の借り上げなどに1000万円程度を見込んでいます。

【警備費】
▽各地から警察官を派遣するための旅費や、超過勤務手当に対する国からの補助として、合わせて5億円程度を見込んでいます。
「国葬」当日に限らず、その前後も含めた期間の費用が含まれる一方、警察官の基本給にあたる部分は含まれないということです。

▽警察官が待機するための建物の借り上げ費や警察官を現場に輸送するバスなどの借り上げ費として、合わせて3億円程度かかるとしています。

【外国要人の接遇費】
▽滞在中の車両の手配のほか、空港での受け入れ体制や連絡調整体制の構築、それに、会談に必要な同時通訳の手配などに、合わせて5億円程度を見込んでいます。

▽接遇にあたる在外公館の職員を一時帰国させるための旅費として、1億円程度かかるとしています。


立憲民主党は「費用の概算には盛り込まれていない、都道府県が負担する警察官の基本給なども事前に公表すべきだ」などと主張していて、「国葬」が実施されたあとも、臨時国会での審議などを通じて政府側をただしていく方針です。

弔意の表明 異例の閣議了解の見送り

今回の「国葬」の実施にあたり、政府は弔旗の掲揚や黙とうによる弔意の表明を各府省に求める閣議了解を見送りました。
また、地方自治体や教育委員会などに弔意表明の協力も求めていません。

政府関係者によりますと、内閣と自民党による「合同葬」など、戦後、政府が関わった総理大臣経験者の葬儀の大半で、官庁に弔意の表明を求める閣議了解が行われていて、今回の見送りは異例の対応と言えます。
政府としては、安倍氏に対する政治的な評価や弔意の表明を、国民に強制するものではないということを明確にするねらいがあります。

一方で、「国葬」当日には、葬儀委員長の岸田総理大臣の決定に基づき、各府省で弔旗の掲揚や黙とうが行われる予定です。

九段坂公園に一般向けの献花台 今回が初

「国葬」の当日、27日は午前10時から午後4時まで、会場の日本武道館近くの「九段坂公園」に一般向けの献花台が設けられます。

一方、武道館などがあって堀に囲まれている「北の丸公園」の一帯は、新型コロナの感染対策や警備を徹底するため、招待された参列者など関係者を除いて立ち入りが禁止されます。

戦後、政府が関与して行われた11回の総理大臣経験者の葬儀のうち、おととし行われた中曽根康弘元総理大臣の内閣と自民党の「合同葬」では、感染対策を理由に一般向けの献花は行われませんでした。

その他の10回の葬儀では、いずれも会場内で一般参列者による献花が行われていて、会場の外に献花台が設けられるのは今回が初めてです。

昭和42年に行われた吉田茂元総理大臣の「国葬」では、「国葬」が終わったあと一般参列者の献花が行われました。

参列者は、およそ4万5000人に上り、午後3時すぎから7時すぎまで続いたと記録されています。

首相経験者の葬儀形式

戦後、内閣が関与して行われた総理大臣経験者の葬儀は、今回の安倍氏の「国葬」を除くと11回あります。

【吉田茂氏の葬儀】
1967年に行われた吉田茂氏の葬儀は、戦後復興をリードしてきたという功績などが考慮され、「国葬」として執り行われ、費用は全額国費が充てられました。
ただ、「国葬」の実施後、野党議員から「『国葬』の法的根拠や基準があいまいだ」といった批判が相次ぎました。
【佐藤栄作氏の葬儀】
こうした影響もあり1975年の佐藤栄作氏の葬儀では、ノーベル平和賞の受賞や沖縄返還といった功績などを理由に「国葬」を推す声があったものの、内閣と自民党、それに国民有志が費用を負担し、共同で実施する「国民葬」のかたちで行われました。
【大平正芳氏の葬儀】
さらに1980年、総理大臣在任中に亡くなった大平正芳氏の葬儀では、「国民葬」から「国民有志」を抜いた「内閣・自民党合同葬」として実施されました。
費用は、内閣と自民党が負担しました。

【岸信介氏/中曽根康弘氏の葬儀】
その後は、この「合同葬」が定着していき、1987年に行われた、安倍元総理大臣の祖父の岸信介氏や、おととし行われた中曽根康弘氏の葬儀も、このかたちで執り行われました。

【三木武夫氏の葬儀】
ただ、1988年に行われた三木武夫氏の葬儀については、三木氏の衆議院議員としての在任期間が50年余りにわたったことなどから、衆議院と内閣による「衆議院・内閣合同葬」として実施され、全額国費が充てられました。