ウクライナ軍事侵攻 元ロシア軍兵士が内情告発 ”劣悪な環境”

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、ロシア軍の兵士として戦闘に加わったパベル・フィラティエフ氏(34)は先月、手記を公開し、兵士たちは劣悪な環境に置かれ、部隊の士気も相当低かったなどと戦地の内情について告発しています。

軍事侵攻が始まった時、フィラティエフ氏が所属する部隊はクリミアで演習に参加していたということで、フィラティエフ氏は2月24日について「朝4時ごろ目を開けるとごう音が聞こえた。何が起きているのか全く分からなかった」と、事前に何も知らされないまま戦闘に投入されていったとつづっています。

この日、南部ヘルソン州に向かってドニプロ川にかかる橋を押さえるよう命じられたことで、ようやくウクライナへの侵攻に加わっていることを理解したということです。

その後、ウクライナ軍による激しい抵抗を受ける中で、砲撃の危険があるにもかかわらず、地雷を積んだトラックを陣地のそばに止めていることなど数々の問題に気付き、上官に伝えましたが、聞き入れられなかったとしています。

“1か月間 野宿でシャワーやまともな食事なし”

また別の兵士らが建物に押し入って食料やコンピューターなどを略奪するのを見たということで「1か月間、野宿でシャワーやまともな食事が与えられなかったうえ、休む間もなく戦争にかり出された」と、兵士たちが置かれた劣悪な環境について明らかにしています。

3月半ばからは進軍が行き詰まり「みずからの手足を撃ち、300万ルーブルをもらってこの地獄から抜け出そうとする兵士も出てきた」などと士気が下がりきった実態も記していて「ロシア軍は自分たちの兵士をいじめるような軍だ」と、軍の兵士に対する扱いがひどかったと批判しています。

“ロシアを変えたい” 140ページの手記 SNSで公開

フィラティエフ氏は目の炎症により4月に戦線を離れ、その後は「ロシアを変えたい」と1か月以上かけて140ページに及ぶ手記を書き、SNS上で公開しました。

手記は戦地におけるロシア軍の内情を赤裸々につづっているとして国内外で注目を集め、ロシア当局から訴追されるおそれを感じたフィラティエフ氏はフランスに逃れました。

滞在先のパリでNHKのインタビューに応じたフィラティエフ氏は「ロシアの人たちのほとんどがウクライナで起きていることを知らない。国の指導層もどんな問題が起きているか知らない」と述べ、少しでも多くの人に実情を伝えることで戦争を終わらせたいという、手記を公開した自身の思いについて語りました。

手記は近く出版されるということです。