ウクライナへの侵攻7か月 ロシアの支配地域で予備役の動員か

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから24日で7か月となりました。
ロシアが支配する地域ではプーチン政権が一方的な併合をねらって、「住民投票」だとする組織的な活動が実施されているほか、ロシア国内で始まった予備役の部分的な動員まで行われているとされ、ウクライナのゼレンスキー大統領はいかなる手段を使ってでも動員から逃れるよう国民に呼びかけました。

ウクライナ軍が東部や南部で反転攻勢を続ける中、ドネツク州やルハンシク州、ザポリージャ州、それにヘルソン州などのロシアの支配地域では、プーチン政権の後ろ盾を得た親ロシア派の勢力による「住民投票」だとする組織的な活動が行われています。

ロシアによる一方的な併合をねらった動きとみられていて、G7=主要7か国の首脳は23日、「仮に併合と称することが起きたとしても決して認めない」とする声明を発表しました。

この動きと並行してロシアのプーチン大統領は21日、予備役を部分的に動員すると表明し、ロシアでは首都モスクワをはじめ、各地で市民が相次いで招集されています。

ロシア国防省は動員の規模を30万人だとしていますが、独立系のメディアは100万人の動員を可能とする条項が大統領令の中に非公開で含まれているとも伝えていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は23日、「年配者や学生、軍務経験のない市民など、戦闘経験を持つ男性を優先するという基準に満たない者まで動員している」と指摘しています。

ウクライナ軍は24日、「占領者はザポリージャ州やヘルソン州で、ロシアのパスポートを受け取った男性に動員の要請を始めた」とSNSに投稿し、ウクライナ国内にあるロシアの支配地域でも動員が行われていると指摘しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日に公開したビデオ演説で、「いかなる手段を使ってでも招集令状を逃れ、ウクライナの解放地域に行ってほしい」と述べ、動員から逃れるよう国民に呼びかけました。

ウクライナへの軍事侵攻が始まって24日で7か月となりますが、プーチン政権は欧米側の非難をよそに、一層、強硬な手段に出ていて、戦闘のさらなる長期化は避けられない見通しです。

“少数民族の動員活発化”人権団体が懸念

ロシアのプーチン大統領が予備役を部分的に動員すると表明したあと、ロシア国内では少数民族が多く暮らす地方でも動員の動きが活発化しているとして人権団体が懸念を示しました。

ロシア極東のブリヤート共和国の人権団体の代表は、1日で4000人から5000人が動員されたとしたうえで、「ブリヤートではプーチン大統領が言う部分的な動員ではなく全面的な動員が行われている」と述べ、貧しい少数民族に負担がのしかかっていると指摘しました。

またブリヤート共和国の人たちの中には動員から逃れるために、ビザがいらない隣国のモンゴルに出国する動きが出ているとしています。

「部分的な動員」「住民投票の実施」ロシアのねらいは

軍事侵攻の開始から7か月がたつ中、ロシアのプーチン政権が予備役の部分的な動員を始めたことについて、ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は「ロシア国民はウクライナでの戦争の現実を感じざるを得なくなった」として、今後、ロシア国内の世論に変化が生じるか注視する必要があると指摘しました。

畔蒜主任研究員は「『ウクライナでの戦争の現実』と『モスクワで続く日常生活』というパラレルワールドを維持することが、これまでロシア国民が戦争を支持する前提条件になっていた」としたうえで、「部分的な動員が始まったことで、ロシアの国民が戦争の現実を身近なものに感じざるを得なくなった」と述べて、今後、ロシア国内でプーチン大統領や戦争に対する支持が低下していく可能性があると指摘しました。

また23日からロシア側が始めた「住民投票」だとする活動については、「もともとは支配領域を拡大したうえで『住民投票』を行うはずが、ハルキウでの敗北を受けて急きょ、実施することになった。このまま何の手も打たずに戦争を続けると、すでに確保している占領地域をも徐々に失っていくという危機感がロシア側には相当ある」と述べました。

そのうえで、「プーチン政権は『部分的な動員』を行い、『住民投票の実施』を指示し、かつ、『核の使用を示唆』する形でウクライナの前進を止めるねらいがある」と指摘し、ロシア側はこの3点を組み合わせることで戦況を好転させたい思惑があるという見方を示しました。

このうちプーチン大統領が21日の演説で『核戦力の使用』を辞さない構えを示したことについて畔蒜氏は、「5月にアメリカとロシアが軍レベルで対話をして以降、プーチン大統領は核使用を示唆してこなかったが、今回、改めてそれを示唆した。この局面で米ロが再びコミュニケーションをとるのかどうか注目される」と述べました。

今後の展開については、ロシアがヨーロッパへのエネルギー供給を制限する動きも見せる中、「これから冬を迎えるドイツやフランスなどヨーロッパの国々が、どこまで団結してウクライナへの支援を続けられるのかも大きな注目点だ」と指摘しました。