ロシア ウクライナ東部・南部で「住民投票」開始 正当性主張

ロシアのプーチン政権は、ウクライナ東部や南部の一方的な併合をねらい、23日「住民投票」だとする活動を開始しました。ロシア側は投票の正当性を主張し、投票結果を根拠として、一方的に併合を進める考えを示していますが、ウクライナ側は強く反発しています。

ロシアのプーチン政権はウクライナで支配する地域の一方的な併合をねらっていて、23日、親ロシア派勢力が、東部ドンバス地域のドネツク州とルハンシク州、南東部ザポリージャ州、それに南部ヘルソン州などで「住民投票」だとする組織的な活動を開始しました。

投票行為は27日まで続けられる予定で、ロシアのマトビエンコ上院議長は23日「住民投票は、正当性について誰もが疑問の余地がない方法で行われると確信している」と主張しました。

これに先立ち、ロシアの前の大統領で、安全保障会議のメドベージェフ副議長は21日、「住民投票が行われ、ドンバスなどの領土はロシアに受け入れられるだろう」とSNSに投稿し、投票結果を根拠としてロシアが一方的にこの地域の併合を進める可能性を示唆しました。

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は22日「占領地での偽の住民投票という茶番は、2014年にクリミアで起きたことと同じだ」と述べ、強く反発しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は22日、ウクライナ当局などの情報として「ルハンシク州では、ロシア側が武装グループを結成し、住民投票に参加させるために戸別訪問を行っている」などと警告しています。

一方、プーチン大統領は21日、職業軍人だけでなく、いわゆる予備役を部分的に動員すると表明し、ロシアのショイグ国防相は動員の規模は30万人だと説明しました。

また、ロシア軍の高官は、部分的な動員令が発表された翌日の22日、およそ1万人が各地の徴兵事務所を自主的に訪れ、軍に入ることを志願したと述べました。

これに対し、ロシアの独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は22日、プーチン政権の関係者の話として、動員令には、非公開となっている条項があり、そこには100万人の予備役の動員が可能とする内容が含まれていると伝えています。

これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「これはうそだ」と否定しました。

プーチン大統領が動員令を発表した後、ロシア国内では、侵攻への抗議活動が各地で起きて、ロシアの人権団体は、22日までの2日間で、1300人余りが当局に拘束されたとしています。

市民の中には周辺国に出国する人も出始めているもようで、ロシアでは動員をめぐる波紋が広がっています。

東部 支配地域ではロシア側当局者が投票用紙持って住宅など回る

ロシアのプーチン政権がウクライナで支配する地域の一方的な併合を狙い、「住民投票」だとする活動を始めたことについて、東部のロシア側の支配地域に住む女性が23日、匿名を条件にNHKの電話インタビューに応じ現状を明らかにしました。

東部ルハンシク州に住む45歳の女性によりますと、ルハンシク州では、ロシア側の当局者が投票用紙を持って住宅や職場を回り、その場で投票を行うよう促しているということです。

そして、住宅や職場で投票できなかった人は、投票期間の最終日の今月27日、投票所に足を運び、投票するよう指示しているということです。

女性は「投票用紙には『ロシアの一部となることを支持するか』という質問が書かれています。そして、イエスかノーにチェックするのです」と話していました。

また「投票所には行きたくないが、もし彼らが私の家や職場に来たら、投票します」と話した上で、賛成か反対かについては明言を避けました。

女性は「すべてはもう決められているとみな、分かっています。私は投票所には行かないと思いますが、ほかの人たちは投票したがっているようにみえます」と話していました。