プーチン大統領 予備役動員表明と核戦力で威嚇 欧米側は批判

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナに派遣する兵士について、予備役を部分的に動員すると発表するとともに、核戦力の使用も辞さない構えを示して欧米側を威嚇しました。
プーチン政権は23日からは、ウクライナで支配する地域の一方的な併合をねらい、「住民投票」だとする活動を始める予定で、欧米側は批判を強めています。

ロシアのプーチン大統領は、21日、国民向けのテレビ演説を行い、ウクライナへの侵攻を続ける考えを改めて強調したうえで、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、21日からは有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員すると発表しました。

招集するのは、軍務経験がある予備役に限定されるとしていて、ショイグ国防相は、動員の規模は30万人だと説明し、訓練を受けた後、戦地に派遣するとしています。

また、プーチン大統領は、ウクライナへの軍事支援を行う欧米側を激しく批判し、「ロシアの領土の一体性への脅威が生じた場合、国家と国民を守るために、あらゆる手段を行使する。これは、脅しではない。核兵器でわれわれを脅迫するものは、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ」と述べ、核戦力の使用も辞さない構えを示し、欧米側を威嚇しました。

またプーチン政権は、ウクライナ東部や南部で支配する地域の一方的な併合をねらい、親ロシア派勢力は、23日から27日にかけて「住民投票」だとする組織的な活動を始める予定です。

ウクライナ軍の反転攻勢を受けるなか、プーチン政権は急きょ、領土の一方的な併合に向けて動き出すとともに、核戦力をちらつかせたけん制も強めるなど強硬な姿勢を示していて、戦局を打開したい思惑とみられます。

これに対し、アメリカのバイデン大統領が21日、「ロシア政府は、偽りの住民投票を組織し、ウクライナの領土を併合しようとしている。重大な国連憲章違反だ」と述べるなど欧米側は、批判を強めています。

仏マクロン大統領「若者をさらに戦争に引きずり込む選択」

国連総会に出席しているフランスのマクロン大統領は、21日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が、予備役を部分的に動員すると発表したことについて記者団に対して「動員を行い、若者をさらに戦争に引きずり込む選択をしたことをとりわけ遺憾に思っている」と述べました。

そのうえで「まずロシアに、そして全員に呼びかけるのは停戦と和平であり、この無意味な戦争を止めるため、プーチン大統領に最大限の圧力をかけることだ」と訴えました。

専門家「東部ハルキウ州 奪還が影響」

ロシアのプーチン大統領が予備役を部分的に動員すると発表したことについて、プーチン政権に近いとされる政治評論家のアレクセイ・ムーヒン氏は21日、NHKの取材に対して決定の背景には、ウクライナ軍がロシアとの国境に近い、東部ハルキウ州を奪還したことが影響しているという見方を示しました。

ムーヒン氏は、侵攻の長期化に伴って国境の防衛ラインが長くなったとしたうえで「今では1400キロにわたってロシア軍が配置され、これがハルキウで見られたような不愉快な結果を招いている」と述べ、ウクライナ軍との攻防の中で国境周辺での兵力を増強する必要に迫られていると分析しました。

ただ、「国境の防衛に当たる部隊も前線に送られることになり、予備役はその代わりを務めるのだろう」と述べ、新たに動員される兵士は、まずは国境の防衛任務に就く可能性があると指摘しました。

一方、ムーヒン氏は、今回の決定を受けて一部の若者は抗議活動を強めると予想しながら、国民の多くは決定を支持していると主張し、「否定的で、不健全な動きが広がることはない」という見方を示しました。

ロシア国内 「航空券」関連検索が急増

IT大手「グーグル」のインターネット検索サービスの動向を分析するサイトによりますと、21日、ロシアのプーチン大統領が予備役の部分的な動員を発表して以降、ロシア国内では「航空券」に関連する検索がそれまでの2倍以上の水準となるなど急激に増えています。

「航空券」について検索する利用者が合わせて検索しているキーワードとしては、「ロシアを出てどこに行くべきか」とか「ロシア国民がビザなしで行ける国」などが以前より増えているということです。

また、「出国」を意味することばの検索も急激に増加し、「部分的な動員のなかでの出国」などの組み合わせで検索されていて、動員の発表を受けて国外への渡航が可能かどうか調べる人が増えています。