オミクロン株対応ワクチン 特徴や副反応は?わかってきたこと

9月20日、新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンの接種が始まりました。

「従来型」「オミクロン株対応」、どちらのワクチンを接種すればよいのでしょうか?
今後、さらに「BA.5対応」のワクチンも?
インフルワクチンとの同時接種は?子どもの接種は?
分かってきたことをまとめました。

オミクロン株対応ワクチンとは

新たに接種が始まったワクチンは、オミクロン株の「BA.1」に対応したワクチンと、これまで接種してきた元のワクチンの2種類が含まれています。

「2価ワクチン」と呼ばれるタイプです。
新型コロナウイルスは変異を繰り返し、ワクチンでできる抗体が狙い撃ちするウイルスの表面の突起「スパイクたんぱく質」の形が変わります。

オミクロン株では、これまでのワクチンで感染や発症を防ぐ効果は下がっているため、オミクロン株の遺伝情報を使って対応するワクチンが作られました。

国内で使用が認められたオミクロン株対応のワクチンは2種類。

これまでも接種が行われてきたのと同様、ファイザーとモデルナのメッセンジャーRNAワクチンです。

今回のワクチン、ワクチンによって体の中で作られる、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」がどれだけ増えたかで効果が見込まれるかどうか比べられます。

ファイザーのワクチンの添付文書によりますと、56歳以上を対象にした臨床試験で、4回目の接種として使った場合、「BA.1」に対する中和抗体の値は、従来型のワクチンを使った場合と比べて1.56倍に上昇したということです。
主な副反応は▽接種した場所の痛みが58.1%、▽疲労(けん怠感)が49.2%、▽頭痛が33.6%、▽38度以上の発熱は5.0%で、翌日に現れることが多く、1日から2日続くことが多いということです。

また、モデルナが9月16日に医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、アメリカで行った臨床試験の結果、4回目の接種として使った場合、「BA.1」に対する中和抗体の値が、従来型のワクチンを使った場合と比べて1.75倍に上昇したとしています。

主な副反応は、▽接種した場所の痛みが77.3%、▽けん怠感が54.9%、▽頭痛が43.9%、▽38度以上の発熱が4.4%などと、これまでのワクチンと変わらず、大部分は軽度から中程度だったとしています。

「BA.5」にも効果か

今回のオミクロン株対応のワクチンは、いま感染の主流となっている「BA.5」にも効果が期待できるとされています。
ファイザーのことし6月の発表では、「BA.5」に対する中和抗体の値は「BA.1」に対する3分の1の水準だったものの、効果的にウイルスの働きを抑えていたとしています。

また、モデルナの臨床試験では、「BA.5」に対する中和抗体の値は、従来型のワクチンの1.69倍に上昇したとしています。

どのタイミングで接種?

今回のワクチンは、3回目以降の接種に使う「ブースターワクチン」です。
接種の対象は、2回目までの接種を終えている12歳以上のすべての人です。
首相官邸のウェブサイトによりますと、2回目までの接種をした人は、子どもも含めた人口全体の80%を超えています。

2回の接種を終えた人は3回目として、3回の接種を終えた日とは4回目として、4回の接種を終えた人は5回目として、接種することができます。

前回の接種からの間隔は5か月間です。

まずは高齢者や医療従事者などから開始され、自治体は接種の進捗(しんちょく)状況を見ながら、対象者を拡大していくことになります。

次はどのワクチンを接種?

すでに従来型のワクチンを接種する予定で、3回目や4回目の接種の予約を取っていた人もいると思います。

従来型のワクチンで、早めに追加接種を受けるか、それとも、オミクロン株対応のワクチンを待ったほうがいいのか。
小児科の医師でワクチンに詳しい新潟大学の齋藤昭彦教授は「オミクロン株対応のワクチンを接種できる機会があれば、そちらを接種したほうがより大きな効果が期待できると思う。ただ、基本的には、前回の接種から5か月間たったところで、早めに接種するというのが原則だ。いつ、次の感染の波が来るか分からないので、『流行が来るのは冬だ』と決めつけずに接種して準備をしておくことが必要だ」と話しています。
一方、臨床ウイルス学が専門でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「いま従来株のワクチンを接種するという選択肢もあるが、オミクロン株対応の成分が入ったワクチンのほうが効果は高い。感染のリスクを考えると、ワクチンで予防できるタイミングがあれば接種するのが基本だが、今の感染状況を見ると、新規感染者数は減ってきていて感染対策に気をつけて過ごすことができるのであれば、オミクロン株対応のワクチンまで待つのも選択肢だ」と述べました。

早めの追加接種必要?

従来型のワクチンはオミクロン株に対する効果が数か月のうちに下がり、早めの追加接種が必要だという報告もあります。

南アフリカの研究グループは、およそ3万人を対象に、ファイザーの従来型のワクチンを接種した場合の入院を防ぐ効果を分析しました。

(9月14日「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表)。

その結果、入院に至るのを防ぐ効果は3回の接種後3~4か月の時点で、「BA.1」が広がっていた時期では50%、「BA.5」の時期は46.8%でした。
グループは、入院を防ぐ効果はオミクロン株に対しては急速に下がるとしています。

そして、最後の接種から4か月ほどの早い時期に追加接種することや、変異ウイルスに対応したワクチンを導入するといった対応が必要だと示されたとしています。

中山特任教授は「私たちの研究でも、これまでのワクチンを接種した人の血液を検査すると3か月くらいたつと抗体など免疫の機能が落ちてきて、5か月、6か月まで待つと、再感染のリスクが高くなる。海外では、3か月から6か月など、接種間隔に幅を持たせて臨床試験が行われている。もう少し短い間隔で接種できるようにすることも考えてもらいたい」と話しています。

厚生労働省の専門家による部会でも、接種の間隔を5か月から短縮すべきだとする意見が出され、厚生労働省は今後、検討していくことになりました。

BA.5対応のワクチン待つべきか

一方、9月13日、ファイザーはオミクロン株のうち、感染の主流となっている「BA.5」に対応する成分が含まれるワクチンについて厚生労働省に承認を求める申請をしました。
近く、モデルナも同様のワクチンの申請を行う予定です。このワクチン、アメリカでは緊急使用が認められています。

「BA.5」対応のワクチンを待つべきなのでしょうか。

「BA.5」対応のワクチンは、いま主流の「BA.5」に対する効果は高い可能性がありますが、日本国内ではまだいつ承認されるかは分かりません。

イギリスやカナダでも日本と同様、「BA.1」対応のワクチンの接種を決めています。

専門家は、「BA.5」対応のワクチンを待つより、国内で新たに接種が始まったオミクロン株「BA.1」対応のワクチン、もしくは従来型ワクチンを接種すべきとしています。

厚生労働省は、「BA.1」対応のワクチンは▽オミクロン株に対して従来のワクチンを上回る効果があることに加えて、▽ウイルスが変異する可能性がある中で、今後の変異株に対しても有効である可能性が高いことが期待されるとしています。

そのうえで、その時点で接種ができるオミクロン株対応のワクチン、つまり「BA.1」対応のワクチンを接種してほしいとしています。

最初からオミクロン株ワクチンを打てないのか?

オミクロン株対応のワクチンは、2回目までの接種を終えた人を対象に、追加接種として使われることになっています。

1回目の接種がまだの人が、最初からオミクロン株対応のワクチンを接種することはできないのでしょうか。
北里大学の中山特任教授は「オミクロン株対応のワクチンは、きちんと免疫の記憶ができていることが条件で、追加接種のワクチンとして承認されている。このワクチンを最初から接種するという臨床試験は行われておらず、効果や安全性のデータもないので、難しいのではないか」と話しています。

一方、今後は検討すべきという意見もあります。

新潟大学の齋藤教授は「オミクロン株対応のワクチンには、従来型のワクチンの成分も含まれているので、これを最初から接種するというのも戦略の1つだ。これから接種を始める子どもなどで、今後、検討されるべきだ」と話しています。

ただ、齋藤教授は「ワクチンの効果や安全性についてはデータが分かってきている。まだワクチンを接種していない人が、しっかりとした基礎免疫をつけておくことは非常に重要だ。1回目、2回目の接種は9月30日までとされているが、延長して接種の機会を作ってほしい」と話しています。

子どもはどうすればいい?

オミクロン株対応のワクチン、子どもは接種できるのでしょうか。

オミクロン株対応のワクチンは12歳以上は接種することができるので、中学生や高校生はおとなと同じように考えればいいとしています。

ただ、5歳から11歳の子どもは今回のワクチンは対象外、専門家は子ども用のオミクロン株のワクチンができるのを待つのではなく、従来型のワクチンの接種を検討してほしいとしています。
新潟大学の齋藤教授は「子ども用のオミクロン株対応のワクチンが出てくるまでには、まだそれなりの時間がかかる。従来株に対するワクチンをしっかり接種して、重症化予防に努めることが重要だ」と話しています。

子どもで2回目の接種を終えたのは20%余りとなっています。

その一方で、感染力の強いオミクロン株が主流になってから、重症化する子ども、亡くなる子どもが増えてきています。

国立感染症研究所が、オミクロン株が広がったことし1月から8月までに発症して亡くなった子どもなど、20歳未満の41人のうち、詳しい状況を調査できた29人について分析したところ、半数ほどは基礎疾患がない人でした。

北里大学の中山特任教授は「最初のころは、子どもは感染しても無症状だったり軽症だったりして、ワクチンはいらないのではないかという意見もあったが、オミクロン株で感染する人が増えると、脳症になったり亡くなったりする子どもも出てくるようになっている。健康な子どもでも重症化する例が出てきている。ワクチンを接種することは重症化を予防することにつながる」と話しています。

インフルエンザワクチンとの同時接種は?

ことしは、季節が日本とは逆で、通常、インフルエンザが流行する時期が日本と半年ずれる南半球のオーストラリアでインフルエンザが流行しました。

北半球で今後、インフルエンザと新型コロナが同時に流行する可能性が指摘されています。

新型コロナのワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種しても大丈夫なのか。
海外の研究グループからは、安全性や効果に問題は見られなかったと報告が出されています。

アメリカのCDC=疾病対策センターなどは、ファイザーやモデルナの新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種した9万2000人余りと、新型コロナのワクチンの追加接種だけを受けた88万9000人余りを比べた結果をことし7月、報告しました。

同時に接種した場合、▽接種した部位の痛みなど、局所的な症状が出た割合はファイザーのワクチンでは新型コロナ単独接種の場合の1.10倍、モデルナのワクチンは1.05倍、▽けん怠感や発熱など、全身の症状が出た割合は、ファイザーのワクチンは1.08倍、モデルナのワクチンは1.11倍でした。
統計的に解析した結果として、全身の症状が出る割合は同時接種の場合がやや高いものの、安全性に大きな問題はなかったとしています。

また、イタリアの研究グループがことし3月、イギリスやアメリカで行われた3つの臨床試験をまとめた論文によりますと、同時接種の場合もそれぞれを接種した場合でも、副反応の出る頻度や新型コロナに対する抗体の値に大きな違いはなかったということです。

厚生労働省は、ことしのインフルエンザワクチンの供給量は、成人の量に換算して最大でおよそ7042万人分と、過去最大となる見通しを示し、同時接種も問題ないとしています。

新潟大学の齋藤教授は「新型コロナの次の流行時期がいつになるのか分からない一方、インフルエンザは11月から12月に流行が始まり、1月から2月にピークを迎えるという毎年のパターンがある。2つの感染症をしっかり予防しておくことが大事だ」と話しています。

減少局面のいま、落ち着いて考える

日本でも新型コロナの感染者数は全国で1日20万人を超えていた8月のピーク時から比べると大きく減りました。
徐々に、パンデミックではなく、コロナを通常の病気として扱うようになるタイミングが近づいていることは間違いありません。

しかし、多くの専門家は次の「第8波」がやってくるとみています。

WHOも「パンデミックの終わり」に近づけるためにはワクチンの接種などの対策を続けることが重要だとしています。

ワクチンを接種するかどうかは個人の判断です。

対策にあたってきた多くの専門家は、感染者数が減少局面のいま、接種について落ち着いて考えることが大事だと話しています。