ドイツ ミュンヘンで世界最大のビール祭り 3年ぶり開催へ

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2年連続で開催が中止となっていた世界最大のビールの祭り、ドイツのオクトーバーフェストが17日、南部のミュンヘンで3年ぶりに始まります。

世界最大のビールの祭りとして知られるオクトーバーフェストは、ビールの生産が盛んなドイツのなかでも有名なメーカーが多く集まるバイエルン州ミュンヘンを会場に年に1度開かれています。

1810年、当時のバイエルン王国の王子の結婚式に合わせて開かれたのが始まりとされ、例年、世界中からおよそ600万人が訪れています。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2年連続で中止となりましたが、17日、3年ぶりに開催されることになりました。

東京ドームおよそ9個分にあたる42ヘクタールの敷地に設置されたビアホールには、伝統衣装を着た地元の人や海外から訪れた観光客など、大勢の人たちが日本時間の17日午後7時の開幕を前に続々と集まっています。

ドイツでは感染対策の多くは緩和され、会場でも入場者数の制限などは行われておらず、主催者は、来月3日までの期間中、例年どおりのにぎわいが戻ってくることを期待しています。

オーストラリアから訪れたという女性は、「オクトーバーフェストは新型コロナのために中止になっていたので、ようやく開催されてうれしい。ドイツのビールが待ちきれない」と話していました。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響も

ドイツには1500以上のビールの醸造所がありますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響が多くのビール会社にも及んでいます。

ドイツ東部にある老舗のビール会社もその1つです。

ウクライナやロシアは、ドイツでも一般的に使われているビール瓶の産地となっているため、この会社でも軍事侵攻後、瓶を安定的に仕入れることが難しくなりました。

このため、ビールの生産を一時的に停止せざるをえなくなり、売り上げに影響が出ました。

さらに、この会社の社長が最も懸念しているのがエネルギー価格の高騰です。

醸造の過程で行われる材料を煮込む作業に天然ガスが必要で、ビール瓶を洗う大型の機械を使う際にも多くの電力を消費しています。

ドイツでは、ロシアから天然ガスの供給が大幅に削減されたことなどでエネルギー価格が急激に上昇しています。

多くの会社は年間契約で電気やガスの供給を受けていますが、この会社が提示された来年の料金はことしのおよそ8倍で、およそ100万ユーロ(日本円にして1億4000万円余り)支払いが増えるといいます。

社長は会社の存続に関わる問題だと指摘し、一時的に生産を停止することや外国への移転も考えたものの、従業員の雇用を維持するためには決断できず頭を悩ませています。

社長のフリッチェ氏は「政府は、エネルギー危機の打開策を見つけるべきだ。この状況ではどんな会社も生き残ることができないので、政府がガスと電気代に上限を設け企業の負担を減らすことが必要だ」と訴えています。

エネルギー価格高騰 景気後退に懸念

エネルギー価格の高騰は、ヨーロッパ最大のドイツ経済全体にも及ぶことが懸念されています。

ビール業界も含むドイツ国内の中小企業などでつくる団体には、電気やガスの価格が8倍から9倍近く上がり、負担しきれないといった相談が幅広い業種から寄せられているということです。

この団体のエコノミストのテルトン氏は、「悲鳴のような助けを求める声がどんどん増えている。新型コロナよりもひどい状況だ。経済全体に衝撃波のように広がっていて、沈静化させることが極めて大切だ」と話し、多くの企業が経営破綻しないよう政府の支援が重要だと指摘します。

さらに、エネルギー価格の高騰はインフレに拍車をかけ、個人消費も冷え込ませることから、ドイツの有力な経済研究所 ifoは今月12日、記者会見し、来年のGDP=国内総生産の伸び率が0.3%のマイナスに陥るとの見通しを発表しました。

また、インフレ率は来年1月から3月の間に11%程度に達すると見込んでいます。

インフレ率がふた桁になれば、およそ70年ぶりのことになります。

ショルツ首相は今月4日、650億ユーロ、日本円にして9兆円余りの巨額の家計への支援策を発表しましたが「効果は限定的だ」とか、「企業向けの対策が多く盛り込まれていない」という指摘も出ていて、ドイツ政府も対応に苦慮しています。